2025年5月期結果発表
第51回募集、佳作1作品・期待賞1作品・奨励賞3作品・努力賞3作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(5月25日締切分)
賞金10万円
受賞作掲載
『チャイルド』
浅間シキ
STORY
未知の寄生植物に飲み込まれつつある地球。植物学者の母・エハは最愛の息子が植物に寄生されたとき、人類存続の決断を迫られる――。
選評
母と子の濃密なスリラードラマが審査員を魅了した。母の鬼気迫る緻密な感情描写や、寄生前後の息子の変化が評価を得る。一方で寄生した植物側の目的は明示されないため結末で消化不良を招き、読み手に恐怖を理解させきれなかったことは惜しい。画面構成においては、センスある画面作りや目を引く演出が多いことが評価のポイントとなった。しかし人物の線が細く軽い印象を与えたため、壮大な人間ドラマを演出するには説得力が足りなかった。次作では、伝えたい内容に沿う表現や情報の出し方を模索してみてほしい。
賞金5万円
受賞作掲載
『うちの「宇宙猫」』
宗十郎
STORY
猫を飼うことを夢見る女子小学生のこゆり。ある日彼女は、愛らしい捨て猫と出会ったのだが……!?
選評
猫に似た愛らしい外見と元軍人という過去を持つ宇宙人の特性が、意外な言動を生み出し、ユーモアに満ちたキャラクターとして機能している。しかしながら個々のコメディ描写が断片的で、テンポの良い連続性ある掛け合いに欠けるため、物語の結末に唐突さが感じられてしまう。シーン間の連携を強化したストーリー構成ができると、掛け合いが強化されるだけでなく、唐突な結末という印象も避けられるだろう。キャラクターの特性だけでなく、状況や感情の繋がりも踏まえた展開作りを意識していこう。
賞金3万円
『Beautiful creatures』
りお
STORY
幼馴染のダフネが死んだ。美しいウエディングドレス姿での自死を選んだ、彼女の本性とは――。
選評
キャラクターが持つ内面の歪みや不安を際立たせる演出力が評価された本作。一方で、画面の演出として白と黒のコントラストによる狙いは見えたものの、全体的に画面の白さが目立つ点がもったいない。作画には緻密な丁寧さは見られるが、線が同一化しているため背景にキャラクターが埋もれている印象を受ける。まずは背景とキャラクターで線の太さを変え、画面の中でのメリハリをつける意識してみよう。基礎的な構成力をあげることで、意図する感情の流れを読者に鮮明に伝える技術を伸ばしてほしい。
『ティーンエイジ・ラストラン』
夏川凉
STORY
「来たら人生が変わる」と噂される惑星・オリエンティアを訪れたジェニーとエミリー。期待に胸を膨らませる二人だったが、そこは思い描いていた場所とは違っていて…?
選評
印象的な画面構成と思春期の複雑な心情の描写に評価が集まった本作。その一方、少女たちのバックグラウンドについての説明が少ないことで、キャラクターの行動理由が伝わりづらくなっている印象を受けた。特に、すれ違う二人が和解するまでの過程については、もう少し読者に伝える努力をしてほしい。キャラクターの背景を深掘りし、心境の変化を丁寧に描くことで、より深く物語に没入できるようになるだろう。次回作では物語に必要な情報をより吟味し、世界観や背景の作りこみを心がけよう。
『フジミ≠ゾンビ』
中園三日月
STORY
体をバラバラにできる"ゾンビ"体質の女子高生・平藤美は、特異な体質ながらも明るい性格で親しまれていた。しかし親友・みなもんだけは、痛みに耐えて藤美が無理していることを気にかけており…?
選評
体をバラバラにできるゾンビ体質の主人公という尖った企画性を、小気味いいボケとツッコミの応酬でテンポよく描かれていた点は素晴らしい。序盤中盤はスムーズに読み進められた一方、オチに繋がる終盤は課題が見られる。ゾンビの体質を活かしたコメディ感強めの前半に対し、後半の不審者が登場するシーンとの温度差が激しく、唐突に見えるため物語に没入できなかった。次は作品全体を通して、バランスの取れたストーリー構成を期待する。
賞金1万円
『阿波先生は青春したい』
三波冬和
STORY
阿波先生には秘密の趣味がある。それは、コスプレしてJKになること! ある夜、忘れものを取りにJK姿のまま学校に忍び込むと、そこには謎の男子生徒がいて――?
選評
キャラクターの心情を丁寧に追いながら、青春を取り戻したい大人たちのやり取りを可愛らしい雰囲気で描写できていた点が高評価を得た。ただ、作品の中で男女の描き分けが出来ていなかったことが読み手に少々混乱を与え、話に没入しにくくなる要因となっている。特に今作は恋愛模様も描かれており、男性キャラクターの存在感が大きかった分、惜しい印象になってしまった。絵柄の個性は残しつつ、画力面でもう一段階ステップアップを目指してほしい。
『阿修羅姫』
龍崎 誠
STORY
その昔、悪鬼を封じて村を救ったという阿修羅姫。その伝説を後世に伝えるための舞で姫を演じるヨシユキは、偶然鬼の封印を解いてしまい…。
選評
コミカルとシリアスの描き分けの上手さと、高い作画力が評価を集めた本作。一方で、ストーリー面では登場人物の多さから、核となる主人公と阿修羅姫のドラマに焦点を当てきれなかった印象を受けた。それにより強みとなる箇所が見えにくくなってしまったため、前面に出すべき要素を取捨選択して、作品ならではのアピールをしてみてほしい。また後半の展開が早く、急ぎ足で物語を畳んでいるように感じられたので、テンポのバランスを意識して、丁寧に出来事を積み重ねていけるとよいだろう。
『インベント』
岡太郎
STORY
孤児院で暮らす少年・カルネは部屋にこもり、様々な道具の発明を行っていた。そんな彼の部屋に通う少女・メメを最初は疎ましく思っていたカルネだが、彼女の明るさに少しずつ心を開いていき…?
選評
動きのあるシーンに華があり、絵でキャラクターを生き生きと表現していた作品。画力はまだブラッシュアップできる余地はあれど、魅せるべきシーンをしっかり印象深く描写できていた。 一方物語面では、舞台設定の前提条件や登場人物のバックグラウンドが分からないまま話が進んでしまうため、お話に乗り切れない印象は否めない。作品の中でキャラクターがもつ個性や背景を深掘りすることを意識し、読み手がより作品の世界に没入できるように心がけてほしい。
最終選考作品
最終選考部門
- 『青く輝くミステリージャーニー』青野リク
- 『End Line』葉月るな