2025年9月期結果発表
第55回募集、期待賞3作品・奨励賞1作品・努力賞5作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(9月25日締切分)
賞金5万円
受賞作掲載

『花のひと』
Hiromu。
STORY
体に花が咲いた人間はいつしかそれが全身に広がり、花と散って人々に忘れ去られてしまう。原因・対策も不明の現象に侵された少女とその親友は、刻一刻とその時が近づくにつれ一体何を思うのか――。
選評
読者の興味を引く企画性と、その魅力を最大限引き出す高い表現力が唯一無二の世界観を作り上げていた点は高評価。 独特な世界観を高い画力で表現できていたことと裏腹に、テーマの難解さが目立つ内容にもなっている。登場人物に作中の設定があまり絡められておらず、読者がキャラクターに共感しづらく本作で伝えたい内容の分かりにくさに繋がっている。 そのため作中に登場する要素を、キャラクターの心情といった内面にもよりリンクできると読み味が増すだろう。

『リサと呪いの子』
チガサキユウ
STORY
「呪い」の解明を目指す施設・解呪院で職員として働くリサ。呪いに体を蝕まれ続ける少女・マユカを救う為ため、二人は呪いを解く鍵が眠る山奥へ冒険に出かける!
選評
迫力あるアクションや背景の細かい描き込みにより、読む人を飽きさせない絵面が作れていた。 どのページも満足感の高いものになっていた一方、ストーリーには疑問が残る箇所が散見される点は惜しい。呪いや闇の魔法使いの関係など気になる要素が散りばめられていたものの、それぞれがお話の中で回収されず宙ぶらりんになっている。そのため読者がお話の本筋に入り込めず、没入感が薄れてしまう。 魅力的な画面で読者を引きこみつつ、ストーリーとの関連性も壱意識できるといいだろう。

『スクールゾーン・ブルー』
+11
STORY
学校への登校中、よく見かける先輩に惹かれる中学1年生の林くん。最初は遠巻きに眺めているだけだったが、次第に先輩のおかしな点に気付きはじめ…?
選評
読み手の心を打つような表情描写に加え、思春期の少年少女の心情を丁寧に掘り下げており親しみやすいキャラクターとして描けていた点は素晴らしい。演出面では秀でた部分が多かったが、画面構成にはいくつか課題が見られる。細かいコマ割りの連続は読者への情報量が増えることで読みづらさを助長し、フキダシがキャラクターの配置とバランスが取れていないため誰のセリフなのか分かりづらさが目立つ。 作者の長所である魅力あるキャラクター描写がより読者に伝わるよう、見やすい画面構成も意識しよう。
賞金3万円

『主人公に相応しい人が主人公席に座った』
nono
STORY
ラブコメを愛する男子高校生・須藤は、漫画の主人公のようなクラスメイト・境さんのことが気になっていた。そんな彼はある日、席替えで彼女の隣の席になり…。
選評
普段はクールなヒロインが主人公の前では可愛い一面を見せるというギャップを魅力的に描けている点に評価が集まった本作。「主人公席」というラブコメあるあるを上手く物語に組み込めている点も高評価だった。 しかしその一方、物語全体を通して起伏が乏しく冗長に感じられる点が惜しい。作中の山場をさらに盛り上げることで、読者の感情の振れ幅も大きくなるだろう。 次作では、見せ場と他のシーンでしっかりメリハリをつけ、読者の感情をより動かせるような構成を目指してみよう。
賞金1万円

『ゾンビーヌ』
中上アタリ
STORY
エクソシストの伊織は、弟の体に入り使い魔となった犬の霊・ゆきおと共にある母娘を訪ねる。その母親は「死んだ娘の霊と意思疎通ができるようになりたい」というが…__。
選評
「弟に犬の霊が入っている」という切り口は、読者を引きこもうとする工夫が見える。ただ、読者の目線が伊織とゆきおであるものの、「本当は母娘のどちらが霊なのか」というギミックに物語の軸を置いているため感情移入する対象が分かりづらくなっている。その結果、エクソシストや伊織が持つ銃など、物語内で当たり前とされている存在やアイテムに関する説明がないので読者は世界観を把握しにくい。 次作では焦点を当てる人物を絞ったうえで、情報を出すことを意識して欲しい。

『いじっぱりな依依恋恋』
つなし鮭身
STORY
隣の席の男子・枢に恋をしている女子高生の葉月。ある日、照れ隠しから彼に強く当たったことで、枢を傷つけてしまい……。
選評
絵柄の可愛さや作画レベルの高さから評価を集めた本作。 一方で、ラブコメなのかロマンスなのか、テーマが振り切れておらず、キャラクターの魅せ方がどっちつかずになっている印象を受けた。描きたい作品の指針を定め、それを意識したストーリーにすることで、作品らしさが反映されたキャラクター像を構築できるだろう。 また、ヒロインが相手のことを好きな理由が示されていなかったので、読んでいて置いてけぼり感があった。登場人物に感情移入できるようなきっかけを用意して、作品への没入感を高めていってもらいたい。

『会いにきてね』
犬野 胸毛
STORY
幼馴染の稔に連れられて、海に向かう雄一。いつも会っているはずなのに、何か忘れているような…そんな雄一が抱く違和感の正体は?
選評
「雄一は認知症のおじいちゃんだった」という一転のさせ方によって、心の奥では忘れない稔との絆の強さを強調させてようとした構成の意図は伝わった。 しかし、種明かしをされるまで2人のグッとくる関係性の良さが見えないので、前半にも読者へのサービスとなる場面が欲しい。今作でいう「2人の写真」のようなアイテムを出すのなら、写真を撮った時の場面を描くなどすると2人の関係性のグッとくる要素が強調されるだろう。 次作では、キャラクターに関するエピソードを入れ、表現する関係性の説得力を上げよう。

『邪神となーこ』
白昼夢みなみ
STORY
世界征服を画策する、少女のなーこと邪神のジャシー。ある日なーこの「人は殺さないでほしい」というわがままに、うんざりしたジャシーは彼女を洗脳することに――。
選評
作画や画面構成、演出などのビジュアル面で特筆すべき魅力が光る。 しかし描写の不足が散見され、物語の展開や人物の相関関係を理解しづらい場面がある。 とくにキャラクターについては魅力的な所作や巧みな演出に好意的な意見がある反面、 行動原理に納得感が得られなかったり、共感を覚えない場面が見られたため作品への没入感を妨げ評価を押し下げる要因となった。 次作では物語のテーマを意識して、読者が納得できるよう情報をわかりやすく提示して細部への理解が深まる物語を目指してほしい。

『婚約者は理想の王子様~本物は完敗中~』
南儀よら
STORY
王子・ウィレムには悩みがある。それは、婚約者アレクシアが外見も中身も自分よりよっぽど「理想の王子様」であること! 王子としての威厳を取り戻すため、ウィレムは彼女に負けじと王子力を見せつけるが…?
選評
読みやすい構成で、生き生きと動くキャラクターたちを楽しむことができた点が評価に繋がった。見せるべきシーンを印象的に演出する力もしっかりと感じられる。 ただ、それぞれのキャラクターの顔の描きわけができておらず、「イケメンの姫」と「姫としての適性がある王子」という面白さが絵で伝わりづらくなっているのは惜しい。読み手により企画を楽しんでもらうためにも、描く題材に合わせて絵柄を工夫できると良いだろう。より研鑽を積んだ次作に期待する。
最終選考作品
完成原稿部門
- 『うさみちゃんは見てる』青野リク
- 『ぼくのともだち』サカモトランカ
- 『天使が人間界に来ない理由』EDEN

