月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2020年2月期

2020年2月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第50回募集、入選1作品・奨励賞2作品・努力賞3作品・チャレンジ部門入選1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(2月29日締切分)

完成原稿部門:入選賞金30万円
受賞作掲載 + 読切1作分の掲載確約

『賢者の教室』

『賢者の教室』

朝野茶柱(24)

あらすじ

家庭の事情で学校に行ったことのない少年・ナダは、知らないことを知るため、賢者に教えを請う。賢者から手渡された一枚の写真。ナダに課せられた課題は――…。

作品講評

素朴な題材ながらもストーリー展開が高評価を得た優秀作。また、背景の密な描き込みに対してあえて淡白にしたキャラデザと、コマの余白や枠のデザインの演出により、独自の雰囲気を持った魅力的な画面構成となっていて、読み手を大いに惹きつけた。ただ、プロップの描き方やクオリティにバラつきがある点は要改善。そして今後の課題は、この類まれなるセンスを商業という舞台でどう活かしていくか、この一点に尽きる。より多くの人が楽しめる漫画を目指して頑張ってほしい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『織星さんはバレたくない』

『織星さんはバレたくない』

藤平衛

あらすじ

完璧な美少女であり学園のアイドル、織星さんは実は元ヤンの高校デビュー女だった…!ある日学園一のイケメン天川くんにデートに誘われるのだが、その秘密を隠し通せるのか…?

作品講評

ギャップのあるキャラクターは分かりやすく面白味があるので、狙いは良かった。その一方、プロット自体は定番中の定番で、新しい要素が欲しくなる内容。ヤンキーやおっかけキャラのイメージもアップデートが必要。ヒロインの魅力を見せる漫画でもあるので、そうなると求められる画力レベルは自然に高くなる。美少女、イケメンという設定に絵で説得力を持たせてほしい。もっと女の子をかわいく、男の子をかっこよく描けるようになってもらいたい。

『お兄ちゃんがついている』

『お兄ちゃんがついている』

寺田寛子

あらすじ

無自覚に霊を呼び寄せる超霊媒体質少女・そより、重度なシスコンの兄・嵐馬。兄妹が巻き込まれた事件とは!?

作品講評

特徴的な登場人物の関係性や軽快なテンポ、ホラー描写に目を見張るものがあり、受賞に繋がった。一方、コメディ要素とシリアスなドラマ、そして要素の多さが今一歩噛みあわず、読み味を鈍らせてしまった。話の筋や設定はシンプルだが、設定も会話も詰め込まれ過ぎ、脇見しやすい構造だった。今後は、核となる魅力とそれを支える要素のバランスを取る視点を持とう。作画面では、描き込みの淡白さも気にかかった。画面が溌刺とした作風なら、特に主要人物の存在感は重要なポイント。絵柄は模索中と思うが、引き続き研鑽を積んでほしい。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『お菓子の家』

『お菓子の家』

黒枝冬馬(30)

あらすじ

自殺志願の青年は、山奥で幼い兄妹と出会う。迷子になった3人はある女性と遭遇し――。

作品講評

読みやすい画面と状況を把握しやすいコマ割りが好印象だった。ただ画面づくりはそつない一方で、整い過ぎて窮屈な印象も。目を引く演出や、開放感あるコマ割りを組み込んではいかがだろうか。お話の構成面では主人公の存在感が兄妹に比べ薄く、要所でキャラに都合のいい展開が目立った。「ヘンゼルとグレーテル」を下敷きにした構成だが、オリジナルの構成が今一歩だった。お話の軸は絶望した主人公の復活なので、彼を中心としたドラマや演出を重視してほしい。一定水準の力はあるので、武器となる表現や作品の核となる魅力を研ぎ澄ませた次回作を期待する。

『遠きに耳ありて』

『遠きに耳ありて』

代打

あらすじ

「私はつまらない人間だ」――常に劣等感を抱えて生きてきた男、榊。ある日、彼は親友の妻に横恋慕してしまい……。

作品講評

ノスタルジックな雰囲気を全編に渡って醸し出しており、それが上手くストーリーとマッチし、独自の世界観・作風に昇華されている。キャラの心の弱い部分、劣等感や嫉妬という負の感情を上手く利用し、その移り変わりを描いていく様には強く惹きつけられたので、この良さは著者自身の武器として引き続き磨いていってほしい。線が荒く、絵についてはまだ発展途上だが、漫画的な「魅せる」場面は作れていると思うので、次回作ではもう少し描きこみを増やし、一コマずつ丁寧に描くことを心がけてほしい。

『悪魔が来たりて飯を食う』

『悪魔が来たりて飯を食う』

蓮美かい(34)

あらすじ

悪魔のオーウェンとキキを喚び出してしまった少女、伏見。彼女は悪魔に幼馴染の怪我の快癒を願うが、彼女自身にも異常な不運が降りかかっており!?

作品講評

かわいらしい絵柄やキャラクター性に発展性を感じられる作風。ただ一方で、ページ作りはまだ不足を感じる点が多かった。状況を把握しづらい近視眼的なカメラワークと、スムーズな読み心地をつまずかせる情報の出しかたは、今後改善していってほしい。とはいえ個性的なキャラクターでお話を回そうという意欲は伝わってくる。多人数を管理し動かしきれているとはまだ言い難いが、要素を絞ってコンセプトやシチュエーションにこだわった作品に挑戦してみてはいかがだろうか。

チャレンジ部門:入選賞金3万円

『竜先生の極道保育。』

『竜先生の極道保育。』

都トキ ウト(24)

あらすじ

平和な保育園に現れた新しい保育士さんは、まるでヤクザ(としか思えないよう)な、いかついお兄さん!?

作品講評

企画力を感じる作品。極道キャラのギャップを見せるだけだと先行作品があるので、それ単体では物足りなさがある。良さを保ちつつ、何かしらの新規性は欲しいところ。作品を通して見せたいものがシーンによってブレがあるようにも見えるので、「何を見せるのか」を意識してスペースを割いてほしい。この題材であればネタとキャラを短いページの中で見せる形で、キャラのギャップが見える瞬間にエピソードのクライマックスがくるよう調整して、作品の肝になる部分をより伝わるようにしてほしい。

総評

入選1作品・奨励賞2作品・努力賞3作品、チャレンジ部門入選1作品選出。
次代を切り拓く、才能の萌芽を感じる作品が出揃った。

どのような題材においても作品世界にリアリティを持たせるためには、知識の裏打ちが必要だ。見事入選に輝いた『賢者の教室』は、その点において特に秀でた作品となっていた。最大の課題は、読む前から読みたくなる戦略だろう。商業においては、漫画作りが秀でているだけでは読者は付いてこない。「本を手に取りたくなる」「クリックしたくなる」そんな題材や設定、一目で惹きつけるキャラクターデザインなど、「何を」「どんな切り口で」描くかが重要である。副賞である読切作品を執筆する際には、ぜひ戦略を持って作品作りに取り組んでもらいたい。
奨励賞『織星さんはバレたくない』は、魅力あるキャラクター作りの基本をしっかり抑えた点で受賞に繋がった。一方でどこかで見たことのあるという既視感も拭えない。定番を抑えた先の、他の作品とは一線を画するアイデアを生み出す必要がある。守破離というように、次作は今の時流を注意深く分析して取り込み、そこに自分なりのアレンジを加えていけると良いだろう。
同じく奨励賞の『お兄ちゃんがついている』は、前作同様キャラの掛け合いの巧みさやホラー描写といった著者の強みが生かされており、受賞と相成った。デジタル作画にまだ慣れていない印象は拭えないが、環境を大きく変化させた勇気は評価したい。作画の研鑽を通じて、キャラクターや物語づくりにも良い影響を与えられるよう、引き続き精進して欲しい。

努力賞の3作品およびチャレンジ部門入選1作品については、どれも著者の地力を感じられる点で受賞と相成った。一方で上の賞へ上がるためには、まだまだ課題が多い。次回作を執筆の際には、それぞれの講評を噛み砕き、何に注力すればよいか意識してもらいたい。

今後も己の全てをぶつけるような、力強い作品をお待ちしております。

3月末〆切の発表は
2020年4月30日!