月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2020年7月期

2020年7月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第55回募集、入選1作品・奨励賞4作品・努力賞1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(7月31日締切分)

完成原稿部門:入選賞金30万円
受賞作掲載 + 読切1作分の掲載確約

『カンジノジカン』

『カンジノジカン』

池田73号(27)

あらすじ

漢字が読めない青柳上等兵は戦地で講師、鹿島二等卒と文通で交流を続ける。そんな中、鹿島のいる小隊が大規模な損害を受け――。

作品講評

読切作品として全体的に高い水準にまとまっていた。重厚で読み応えのあるスト―リーと、巧みなセリフ回し、繊細な心理描写に特に高評価が集まった。ただし今作では構成も相まって功を奏していたが、場面転換の多さは読者の混乱を招きかねないため、やや注意が必要といえるだろう。さらに、今作では完成度が高かったが、一方でテーマの選び方や難解さが人を選ぶともいえる。企画の段階でキャッチーさを意識した作品にも挑戦し、間口を広げてみては。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『わたしの吸血鬼』

『わたしの吸血鬼』

蓮美かい(35)

あらすじ

教会で神父をしていた吸血鬼の葛籠は、ある日吸血鬼ハンターの樒に襲われる。銃弾を受け落下した地下墓地で、彼は孤児のあみと出会うのだった…。

作品講評

作品内容とマッチした魅力的な絵柄から高評価を得た作品。特に幼女の絵柄が可愛らしく読者を惹きつける要素となっている。その一方で、各キャラクターや作品自体の物語設定が不明瞭な印象を受けた。その作品内での共通認識や登場人物の立場・関係性をハッキリさせることで、より引き込まれる作品へと昇華されていくだろう。また、画面構成においては戦闘シーンでの画面の動きが控えめで迫力に欠けていたため、より動きのあるアクションシーンを意識し場面の臨場感を出してもらいたい。次回作に期待。

『打駄イズム』

『打駄イズム』

川西ナカ

あらすじ

〝駄目な自分を打ち倒す〟という思いでバンドを続けてきたさよ子。だが三十路前になっても評価されず、鬱屈が限界に達したさよ子は、親友の唯に当たり散らしてしまい……。

作品講評

理想と現実の境目に降り積もる劣等感を描こうとする姿勢が評価された。ただし、暗い感情を描くことで読者に与えたストレスを、キャラクターやストーリーで解消しきれたかという点は今一歩。作家自身が描きたいテーマと、読み物としてのエンタメ性の釣り合いを目指して欲しい。また作画面も要向上。画面の情報量や感情の機微をあらわすための画力はもちろん、今作のような百合ジャンルにおいては特に繊細で丁寧な作画が求められる。

『骨六さん』

『骨六さん』

村田新作(21)

あらすじ

お人良しの少年・來が出会った怪しい青年・骨六。骨六は自らの不幸体質を解決するために、なんでも願いが叶う不思議な種を探していると言うが…。

作品講評

作画が全体的に丁寧なのと、対象読者が見えやすく話にマッチした絵柄が良い。構成としては骨六のテンションの緩急が作品にリズムを生んでおり読み進めやすくしている。ただ骨六の狂言回しが過ぎることで主人公の存在を食ってしまっている点はどうにかしたい。そもそもの内容が分かりづらいので、設定なども一旦整理してほしい。キャラクターの魅力を引き出したり、その設定でないと成立しない展開を持ってくるなどしてストーリーや舞台に意義を作ってもらいたい。

『きみに聞こえるなら』

『きみに聞こえるなら』

七糖レンジ

あらすじ

音大生の館花依は、あがり症の所為で進級試験に合格できないでいる。そんな時、引っ越先で若くして亡くなった作曲家の三原至に出会う。家に住み着いている傍若無人な彼を成仏させたいと思う依だが…。

作品講評

キャラの掛け合いや読後感の爽やかさなど前作より読者を意識した点が良く、作画も丁寧で好印象。キャラの性格と特性を活かした小ネタもテンポ良く描けている。ただ、物語を綺麗にまとめようと意識しすぎたのか、前作にはあった著者の個性が弱くなったと感じた。作画に関しては人を惹きつける表情・構図が作れているが、構図によってはバランスの崩れがあるので、研鑽して欲しい。今後に期待。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『としおとりお』

『としおとりお』

藤平衛

あらすじ

配信動画を見るのが好きな中学生・譲は、“りお”という母性溢れるバーチャル配信者に夢中になっていた。しかしある日、その“りお”の正体が堅物な父がアバターを使用して演じる姿だと知ってしまい…。

作品講評

作中で描かれる父“としお”と配信者“りお”の外見、内面にある分かりやすいギャップが良かった。内容はしっかりまとまっている一方で先が読めてしまう部分があったのと、題材そのものへのより深い理解とその性質をしっかり捉えた発想がもっと欲しいと感じた。類似作との差別化も少ないので見識不足を感じてしまう。作画は丁寧だがまだぎこちなさがあるので、このことをどうしていくかはしっかり考える必要がある。

最終選考作品

『神狩り』(完成原稿部門)

能勢ナツキ

『モフ!』(完成原稿部門)

コウリ(25)

『ニセモノの僕らは、朝焼けを掴む。』(完成原稿部門)

広橋 ケンタ

『夜酔いの宵』(完成原稿部門)

大海みず

総評

入選1作品、奨励賞4作品、努力賞1作品選出。
個性を貫いた作品が輝いていた今回。

高い完成度に編集部を唸らせた『カンジノジカン』は入選を受賞。複層的な作品のテーマを「言葉」という軸で貫き、読み応えのある物語と仕上がっているのは実に見事だった。多くの漫画家は作品に込めた想いを届けるために、ページを捲る手を止めない工夫はもちろんのこと、「読みたくなる」入口作りに苦心している。著者の次なる作品は、どんな入口で読者を出迎えるのか。副賞である読切作品では読者を誘うアプローチをぜひ追求して欲しい。
奨励賞を受賞した『わたしの吸血鬼』、『打駄イズム』、『骨六さん』、『きみに聞こえるなら』の4作品は、それぞれの著者の個性が垣間見れたがどうしても物語に振り回されてしまった印象が強い。自分の中にあるキャラクター像をできるだけハッキリと掘り出し、そのキャラに「物語を作ってもらう」ぐらいの気持ちでネームに挑んでみて欲しい。

努力賞や最終選考作品も荒削りさは目立つが、個性が光る作品が見受けられた。さらなる技量の研鑽に期待したい。

今後も読者の心を貫く作品をお待ちしております。

8月末〆切の発表は
2020年9月30日!