月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2020年8月期

2020年8月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第56回募集、入選1作品・奨励賞1作品・努力賞3作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(8月31日締切分)

完成原稿部門:入選賞金30万円
受賞作掲載 + 読切1作分の掲載確約

『三十年後にまた会う日まで』

『三十年後にまた会う日まで』

高村秀路

あらすじ

小学生の勝は「変人のヘンドーさん」と噂される遠藤の家を訪れた。勝の望みはヘンドーが持つタイムマシンを借りて、ママの再婚を阻止すること…。少年と不思議なおじさんの奇妙なノスタルジックパラドクス。

作品講評

緻密で味わい深い作画と構成力、著者の全体的な技量の高さに評価が集まり入選となった。表情や視線、背景などセリフ以外からキャラの感情や、本作がまとうノスタルジックさがありありと伝わるのが良い。惜しむらくは、「タイムマシンの真偽」「少年と遠藤の関係」が曖昧なままな事。本作では少年の救いになればどちらでも良かったと思うものの、読者に答えを委ねるには少々伏線の粗が残る。今後、商業掲載に向けさらなる研鑽を期待。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『あなたの影武者です』

『あなたの影武者です』

金城は夏(28)

あらすじ

小説家の東郷哲夫は新刊発売記念のサイン会で殺害すると予告を受ける。なんとしてもサイン会を決行するため、影武者を雇った彼の前に現れたのは、自身に全く似ていない男だった…。

作品講評

構成やギャグのテンポがちょうどよく読みやすい作品となっていた。特に冒頭でインパクトのある要素を連続で出し、一気に作品の世界へと引き込んでいく展開が高評価。しかし、コメディとしては内容が安定しすぎているため、より尖った部分をつくる意識を持ってみてほしい。自分の作品の強みは何なのかを理解し、さらなる武器を見つけられると作品を昇華していけるだろう。次回作に期待。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『グリッタートゥーユー』

『グリッタートゥーユー』

藤倉 秀

あらすじ

ある日平凡な男子高生の遼太は、同じクラスのきらきら君こと惺史郎の裏の顔を知ってしまい、理不尽な理由で脅されることに。しかしお互いの内面を知るうちに二人の距離は徐々に縮まっていき――。

作品講評

キャラの心情描写が丁寧に描かれており好感が持てた作品。一方で物語の内容はまとまっていたが、作中での出来事はどれも単発的なため、物語中盤から後半にかけて都合よく見えてしまう展開が目立った。また必要以上に場面転換が発生して物語全体が冗長だったため、序盤から伏線を仕込むなど工夫して簡潔に表現しよう。作画に関しては時折魅力的な表情が描かれているものの、まだまだ要精進といった印象なので引き続き研鑽を積んでほしい。

『Nitty-Gritty』

『Nitty-Gritty』

somnia.(24)

あらすじ

警視庁刑事部に存在する第五の組織、捜査○課。その実態は「超能力」に関する事件を取り扱うこと。そんな捜査○課の捜査員である安田顕司と栂鍔沙が今回立ち向かう事件とは…?

作品講評

意欲的なテーマをしっかり最後まで描き上げている点に評価が集まった。しかし物語が長く内容が間延びしてしまっている印象があるため、オチを演出しつつ必要な情報の取捨選択にチャレンジしてみて欲しい。作画に関してはキャラクターの描き分けが足りていない部分があり、困惑するシーンがあった。また、背景の情報が全体的に少ないため、描き込みを増やすことにより場面ごとの没入感を読者に与えていくことができるだろう。今後に期待。

『ヴァニタスの宴』

『ヴァニタスの宴』

三機

あらすじ

死体を殺戮人形にして弄ぶネクロマンサーたちを倒すため、墓守・エンは今日も今日とて死人人形の闘技場へと足を運ぶ――。

作品講評

短いページ数の中で、ファンタジーに挑戦した意欲作。物語の要素を絞り一つの出来事を伝えることに終始しているため、物語の流れが分かりやすかった。一方でページが短く、キャラの魅力や設定の十分な掘り下げが足りていない印象。次回作ではキャラの魅力が伝わるページ数で作品を作り上げてみてほしい。作品の演出において、単ページではそつない画面ではあるものの、全体では遠景の入ったコマが少なく状況が分かりづらいので、意識的に引きのコマを入れてみてはどうだろうか。

最終選考作品

『呑川の告白』(完成原稿部門)

白静波(25)

『ウチでサッカーしませんか?』(チャレンジ部門)

寺田だら(27)

総評

入選1作品、奨励賞1作品、努力賞3作品選出。
著者それぞれの持ち味が生きた作品が集まった今回。

入選に輝いた『三十年後にまた会う日まで』は画面から情感を伝える力が巧みであった。キャラの感情を言葉にしすぎてしまうと、かえって読み手を白けてさせてしまう場合もある。その点において、本作は絶妙なバランスで表現していたと言えよう。一方、タイムパラドックスというSF要素は、読者が一定の理解を得た時に快感を得られるものであり、答えを投げっぱなしにしてしまうのはもったいない。副賞の読切作品ではぜひ「読者がちゃんと答え合わせができる」ということを意識して作品を組み立ててほしい。
『あなたの影武者です』は精度の高いネタをふんだんに散りばめている点が評価され、奨励賞を受賞。前作同様、安定感をもって読める一方で、一点突破なネタがあるとは言い難い。安定した掛け合いが描けるからこそ、掛け合いなしでも成立する強いキャラ性を意識してみるのも手だ。

努力賞を受賞した三作品はそれぞれ読ませる力を持っていたが、構成や作画、キャラの掘り下げなど、まだまだ水準を向上していける点が見受けられた。
強みを伸ばすことと弱点を減らすこと、その両輪を意識して研鑽を積んでほしい。

今後も、読者に届けたいという想いを感じさせる作品をお待ちしております。

9月末〆切の発表は
2020年10月30日!