お久しぶりです!編集Nです。今回の研究に取り上げるのは……この作品!!
MAGCOMI読者には釈迦に説法かもしれませんが……「この作品を読んだことない」というような方もいらっしゃるかもしれないので、まずはNの独断と偏見による簡単なあらすじを説明します。
※一部作品のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。
『ファンタジー老人ホームばるはら荘』とは!?
かつて魔王を倒した冒険者たち――彼らは加齢とともに迷惑老人へと成り果てていた。そんな老人たちを収容、もとい入居させた老人ホームに新人の介護士マリーが加わる。だがマリーの正体は、かつて冒険者たちに倒された魔王の孫で!? ヘタなクエストより困難なファンタジー老人介護の最前線!
本作の舞台は、魔物や魔王が
そんな中、英雄たちは平和を手に入れるべく力を合わせ、遂には魔王を討伐することに成功します。
ここまでだとハッピーエンドで万々歳なのですが、それから50年後――
英雄たちは、老害化衰えてしまいました。
こうして、時の王様はそんな彼らをなんとかするべく、老人ホームを設立し、そこでなに不自由ない生活を送らせることで解決策としたのでした。
そんな中、本作の主人公にして魔王の孫であるマリーは、祖父の仇を討つべくその老人ホーム――通称、「ばるはら荘」に潜入します。
こうして気高き(?)野望を頂いたマリーは意気揚々と彼らを討つべく行動するのですが――
そこに入居していた方々は元英雄だけあって、マリーの実力はまっったくと言っていいほど通用しませんでした。
ある時は
またある時は
またまたある時は
とにもかくにも、自由気ままな英雄たちに振り回されて復讐どころではない日々を送ることになります。
それでもめげずにここで
読み進めていく中、この老人ホームで行われる下記場面を見た瞬間、私は衝撃を受けました。
老人ホームってレクリエーションとかやるんだ(゜д゜)
私が無知なだけかもしれませんが、今まで私は老人ホームといえば基本的に毎日読書をしたり編み物をしたりして静かに過ごす老人たちをイメージしていました……が。
この光景を見た瞬間、私の「気になったことは徹底的に調べないと気が済まない」という性分が鎌首をもたげました。
即ち、
そもそも何のために老人ホームでレクリエーションをするのか?
老人ホームで行われるレクリエーションにはどのような種類があるのか?
作中の英雄たちに相応しいレクリエーションはあるのだろうか?
etc.……
一度気になってしまえば、最早それは呪縛のように私の心を蝕んでいく。(妄想)
ということで、前置きが長くなりましたが―――
第6回マグコミ漫画研究部!~MAGCOMI作品のどうでもいいことを真面目に考察してみた~の議題は、こちらになります!!
『ファンタジー老人ホームばるはら荘』で行われている老人ホーム内のレクリエーションについて研究してみた
まずは、そもそも老人ホームで行われるレクリエーションの目的について調べてみたところ……
大まかに分けて、下記3つの為に行われているようです。
1.身体機能の衰えを防ぐ為
2.脳機能を活性化させる為
3.生活の質の向上の為
まず、1.については言うまでもなく、健康維持の為のようです。
年齢を重ねるごとに体を動かす機会は減少し、その結果運動不足によって筋力が低下し、自分で自分の身体を支えられなくなっていく。
そのような状態で怪我や骨折をした場合それを回復させる為のリハビリすらできなくなり、致命傷になりかねないことから、定期的に身体を動かすことが推奨されその為にレクリエーションを行うようです。
次に、2.については端的に言うと認知症防止の為という理由のようです。
特にあるパターンなのが、子育てや仕事に追われていた多忙な人が、急にすることがなくなり手持ち無沙汰になってしまうこと。
そうなると、一気に衰えがきて認知症になってしまうことが多いらしく――
その為にも定期的に脳トレなどを行い、「考える」という脳の活動を行うことでそれらの予防に繋がるという理屈のようです。
最後に3.については1.と2.をそのまま昇華させたような形になります。
レクリエーションにより心と身体に適度な刺激を与えることで日常に潤いをもたらし、人間らしく生きる喜びや楽しみを味わってもらう為のようです。
こうしてみると、たしかにレクリエーションを行うことは非常に合理的ですね……!
老人ホームで過ごす老人たちの退屈や運動不足解消の為に。 脳や身体の活性化の為に。 そして憲法でも定められている健康で文化的な生活を送る為に、
「レクリエーション」という催しで少しでも彼らを楽しませようとした介護士の考えの結晶のような形で、老人ホームに根付いているようです。
しかし、そうなるとやはり気になるのは「老人ホームで行われるレクリエーションにはどのようなものがあるのか?」ということ。
中でも本作に登場する、過去に偉業を成した英雄たちが行っても満足するレクリエーションなど果たして存在するのだろうか?
そう思い、資料などを交えて調べたところ――面白そうなレクリエーションを数多く見つけました。
ここではその一部を公開していこうと思います! まずは……
①風船テニス
その名の通り、風船をボールに見立て、打ち合うスポーツ(?)レクリエーションの一つです。
老人が運動をする際、一番ネックになるのが反射神経や動体視力が衰えていることと、高血圧や心肺機能の衰えなどにより、多大なカロリーを消費する激しいスポーツができないということ。
それを予防する為に行うのが、このレクリエーション。
老人でもやりやすいようにゆっくりと降下・浮遊する風船を使い、じんわり汗をかくくらいのペースでスポーツというよりお遊び感覚で楽しんでもらうことを目的としているようです。
通常、テニスといえばラケットは専用のものを使いますが、風船テニスの場合は手でそのままやったり、中にはうちわを使うこともあるのだとか。
更に、テニスコートのような専用の場所と人数では行わず、長机を囲んで3~6名で行い、皆がゆっくり楽しめることに主眼を置いたレクリエーションのようです。
ユニークかつ、とても面白い試みですね!
しかし……「ばるはら荘」でやるには少々不向きかもしれません。
知っての通り、「ばるはら荘」に入居しているのは一騎当千の猛者たちばかり。その実力は下記の通りただのフォークを投げただけでも、虫を殺して壁に刺さるほどの勢いを出すことができるほどです。
ついつい勢いで風船を割ってしまうことや、勝ちにこだわり過ぎて熱くなり、施設を破壊してしまう恐れもある……。
そう考えると、中々これを行うのは難しいかもしれません……(笑)
②演芸会
老人ホームで行われるレクリエーションの一環として、比較的有名になりつつあるのが演劇や演芸会。
お手軽に退屈を紛らわすこともでき、感想を言い合うことでコミュニケーションの活性化にもつながりいいこと尽くめのレクリエーションです。
ちなみに、劇を行うのはプロの劇団員がメインですが、中にはボランティアで演劇部に所属する中高生が慰問という形で行うこともあるのだとか。
これがまるで自分の孫が行っているようにも思えるようで、入居者からは非常に好評だったとか。
さらに演者もお客様に自分の演劇を見て頂けてスキルアップになるWIN-WINの関係が構築できることもあり、レクリエーションとして一般的になっていったようです。
ただし、本レクリエーションをやる上で一番ネックになっているのが、場所についてです。
普通の老人ホームに専用の演劇場などあるはずもないし、大抵はホールやリビングなどを改装したりして行うしかないようですが……
「ばるはら荘」でやる場合はどうだろう?
と思案していたところ、私は本編のとあるコマから衝撃の事実を見つけてしまいました。
ばるはら荘1巻の室内運動場にて――
室内運動場の後ろに、ステージがある!?(゜д゜)
しかも演劇用ということがわかるように、椅子まで設置されています。
後ほど、第10話「みんなどこ行った!?」にて終戦記念式典がばるはら荘で行われ、その時の大戦英雄譚を演劇にする為に設置されているということが判明するのですが――
これにより、こと「ばるはら荘」において本レクリエーションの場所問題は解決したと言えるでしょう。
こうして後は渡りに船とばかりに「ばるはら荘」にうってつけの演劇を考えようとしたのですが……
ここでふと、演劇というのはあらゆる古典をモデルにしていることに気付きました。
もちろん中にはオリジナルの演劇もありますが、現代で行われる演劇のほとんどは講談や過去の歴史劇・悲劇喜劇をアレンジしたもので行われています。
このファンタジー世界においてもその流れを踏襲するなら――当然のごとく、過去の英雄譚が物語になることは間違いないでしょう。
これは……いわば第二次世界大戦経験者に戦争の悲惨さを語るようなものです。
どれだけ素晴らしい演劇をしても、その「元」となる劇が自分たちの過去の体験、魔王を打倒した英雄譚とあっては、心よりその演劇を楽しむことは難しい……。
さらに言えば、オチまでその身でわかりきっている物語でもある為、演劇を見ても退屈を紛らわすということもできないでしょう。
そう考えると、演劇というレクリエーションも「ばるはら荘」の住人たちにとってはあまり相応しいとは言えない……(;´・ω・)
こうして、そのように結論付けた私はアレでもないコレでもないと頭を悩ませていたところ―――
ついに「ばるはら荘」の住人にうってつけのレクリエーションを見つけてしまいました。
その名も……
③カード対戦型ボードゲーム「魔王」
そもそもボードゲームやカードゲームは、脳トレの一環として数多の老人ホームのレクリエーションに採用されているようです。
一般的には将棋・囲碁・花札・トランプゲームなどがポピュラーですが、中には脳を効率よく使うためにユニークなボードゲームを採用することもあるんだとか。
ここで紹介する「魔王」もその一つで、こちらは会話型心理ゲームとロールプレイングゲームの特徴を融合し、複数のメンバーとのゲーム体験を共有して楽しむ新感覚のボードゲームです。
勇者に倒されそうになった魔王が時間を稼ぐ為に秘術を使い、全てのモノの姿を変化させ、自らもその中に身を隠した――という設定で、各自に勇者陣営と魔王陣営に分かれた「役割」が割り振られます。
それぞれの役割に応じて勝利条件が異なり、他者の役割を推理しながら、自分の役割が行えることも考えて魔王を倒すべく行動する……という点では会話型パーティーゲーム「人狼」に近いところもあるかもしれません。
筆者であるNも大のボドゲ好きである為、実際に遊んでみたところシンプルながら奥が深く、時間を忘れて楽しむことができました。
そして、言うまでもないことですが――この「魔王を倒す勇者たち」というコンセプトのゲームは、正に「ばるはら荘」の住人たちにうってつけです。
ゲームの役職として存在する勇者・武闘家・僧侶といった役職は現役で彼らが担っていた職業ですし、「魔王を倒す」というのもある意味、自身の経験を追体験できる稀有な行いです。
そして毎回割り振られる役職は違う為、勇者が魔王に、武闘家が魔法使いに――といったように変化し、そのたびに勝利条件も変わるため何回やっても飽きは来ず、脳トレを活かしながら楽しむ最高のレクリエーションになることは間違いないでしょう。
ちなみに、本ボードゲーム「魔王」は下記公式サイトにて詳細なルールや世界観などを解説しております!
気になった方は下記よりアクセスしてみてください!
ということで……結論。
ファンタジー老人ホーム「ばるはら荘」にピッタリのレクリエーションは、カード対戦型ボードゲーム「魔王」である!!!
この研究結果を作品の公式設定として認めさせたいと考えたNは、著者である岡村アユム先生と、担当編集者であるまさんにインタビューを試みました。
かくかくしかじかとそういう訳で、上記結論をマグコミ研究部公式見解として出しました!いかがでしょうか!
なるほど! 中々面白い結論ですね~! 「魔王」というボードゲームがあるのは知りませんでした……とても面白そうです。
そうですね。本編14話「ばるはら荘の短い休日」でもボードゲームを出しましたし。高齢者向けレクをメインテーマに取り扱った回はまだありませんから、そういう遊びをやってもらうストーリーを設けてもいいかもしれませんね。
おぉ、思いのほか高評価……ありがとうございます! ちなみに、上記ボードゲームが登場していることからも、「ばるはら荘」の世界でもボードゲームは一般的なのでしょうか?
おそらくチェスや将棋のような戦略的なボードゲームは一般に広く普及していると思います。が、TRPG※のようなボードゲームは一定の狭い層で遊ばれていて知名度は低く(ロニヤは手広いタイプのオタクなので知ってる)、ばるはら荘の入居者が「魔王」をレクリエーションに取り入れられたら「なんていう遊びだこりゃ?」みたいな感じからのスタートになるんじゃないでしょうか。
でも、そのあと施設内で大流行したら面白いですね。負けて癇癪を起した入居者同士のケンカが始まって職員が慌てて止める…というお話が作れそう。
その場合、戦うのはアウグスト(貴族)とヨハンナ(元冒険者ギルドマスター)。武力のない二人が水面下で策を練り、人を操る汚い争いに発展してほしいなと。 職員はおとなしく「魔王」でレクリエーションしてほしいと後ろでげんなりしてそうです。マリーは争いが起こっていることに気づかず、しかし巻き込まれます。かわいそうですね。
※……テーブルトークロールプレイングゲームの略称。紙と鉛筆などアナログな物を使って遊ぶ対話型のゲームのこと。
これは完全に偏見なんですけど、マリーって接待プレイ下手そうですよね。
たしかに! なんだか接待プレイをしようとしたら、意図せぬビギナーズラックで相手に圧勝してしまうマリーの姿が目に浮かぶようです(笑)。 あ、そういえば……ちなみに岡村先生とまさんは、ボードゲームって普段やられたりしますか?
本当に最近、一か月ほど前に友人に勧められて人生で初のTRPGをプレイしました。オンラインで。丁寧に教えてもらったのでとても楽しかったです。(ちなみに自キャラは死亡しました)人狼も誘われて何回かやりましたが基本的には処されます。チェスや将棋は何回かやってルールがうっすらわかる程度です…。全体的に初心者です。
私もボードゲームは好きです。1プレイ15~30分くらいの軽めのゲームを何度もわいわいプレイしたい派です。最近はおもしろいアイディアのインディーズゲームもたくさん出ていますしね。社会人になってからはセッション頻度が落ちてしまいましたが、TRPGも好きですよ。推しTRPGは「永い後日談のネクロニカ」です。
へぇ、お二人ともけっこうやられているんですね! 「永い後日談のネクロニカ」……タイトルは聞いたことがあります! 是非今度やってみたいですね~! ちなみに俺もボードゲームは大好きで、中でも「カタン」なんかはハマって徹夜で友人とやり続けたこともあります(笑)
それは凄い…(笑)。まぁ、「カタン」は重ゲーですし、ガッツリやろうと思ったらそれくらの時間は必要かもしれませんが……
そうなんですよ! 長いと、1プレイ3時間近くかかることもありますからね~……って、あ! そういえばすっかり忘れてた! ちなみに私が出したこの結論について、改めていかがでしょうか!!
結論というと…「ファンタジー老人ホームばるはら荘」にピッタリのレクリエーションは、カード対戦型ボードゲーム「魔王」であるということでしたっけ。うーん…どうしましょう、先生。
まぁ、それほどまで熱く語られるのであれば、「魔王」をばるはら荘で行うのに相応しいボードゲームとして公認しても……?
おっ! いいですね!! 是非お願いします!! というかここは是非、この「魔王」を実際にプレイしてみて判断して頂いてもいいんですよ? そもそもボドゲって、脳トレだから疲れなんて感じないようなもんなんですよ(`・ω・´)
ほう…( ✧Д✧) キラーン よし、決めました。そこまで言うならいっそ作りましょう。
……え?
(あっ)
「ファンタジー老人ホームばるはら荘」の舞台やキャラクターをモチーフにしたアナログゲームを作りましょう。
……………。
テーマが老人介護なので「ゲームで学ぶ介護知識」みたいなのイメージしてしまいがちですが、テーマそのものがプレイへの抵抗感に繋がってしまうのは避けたいですね。やっぱりゲームは楽しくないと。なのでオーソドックスな勝利点を溜める方式か、もしくはすごろく形式がいいかな。「アクシデントで体力が0になる前に」「介護イベントをクリアして点数を溜める」感じのデザインを基調にすれば初見プレイヤーでもスムーズにルールを把握できるのではないかと。あとやっぱり可愛いコマは作りたいですね。いいですね、イメージが湧いてきました。あとはやっぱり予算か……。
……………(なんだかめんどくさいスイッチを押してしまったようだ…(;^ω^)
さて、Nさんの情熱から「魔王」が素晴らしいボードゲームということはわかりましたし、高齢者向けレクの重要性や楽しさについても知っていただけたと思います。今回はこのへんで。
あっ、はい、そうですね! 岡村アユム先生、どうもありがとうございました!!
ゲムマで売るぞ~~~~~~~~!!!!!
……………………………………………………。
……………………………。
…………。
と、いうことで……
上記研究結果が本作の公式設定となりました。←!?
以後、ばるはら荘でレクリエーションが行われるたびにボードゲーム「魔王」をしているところを想像してもらえますと幸いです!
そして、もしまだ『ファンタジー老人ホームばるはら荘』を読んだことのないそこのアナタ!!
これを機に、是非読んでみてはいかがでしょうか。MAGCOMIにて第一話を無料で公開しているので、少しでも興味を抱かれましたら、是非お読みください!
以後もこのような形で、私Nが独断と偏見で選んだMAGCOMI連載作品の気になった点を考察しては、作者や担当編集者に突撃インタビューをしていこうと思います! 次回もお楽しみに!
©岡村アユム 2020/マッグガーデン ©Ayumu Okamura 2020/MAG Garden
協力:株式会社王道エンターテイメント
※本ブログへ記載した画像は、株式会社マッグガーデンが刊行した『ファンタジー老人ホームばるはら荘』①~②巻より抜粋し、引用させて頂きました。