【マグコミ漫画研究部】『鳥ジャンキーズ』で取り上げられているインコについて研究してみた

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お久しぶりです!編集Nです。今回の研究に取り上げるのは……この作品!!

 

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MAGCOMI読者には釈迦に説法かもしれませんが……「この作品を読んだことない」というような方もいらっしゃるかもしれないので、まずはNの独断と偏見による簡単なあらすじを説明します。

※一部作品のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

『鳥ジャンキーズ』とは!?

 

慣れない生活に疲れ果てた新社会人・成瀬。限界を迎えた彼が起こした行動は、隣家への突撃…!?

 

 

新社会人として全くの未知の街、酉見崎町とりみざきちょうに引っ越してきた成瀬なるせまひろ。

慣れない環境と日常にストレスが溜まっていた彼は、やがて限界を迎えてしまいます。

 

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おそらく、多くの新卒社会人が通る道であり、

この時の彼の心情に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

そんな状態となった人間がやることと言えば、ただ一つ。

 

現実逃避をすることです。

 

本作の主人公・まひろもご多分に漏れず、それを行おうとするのですが――……

 

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 ……何かものすごく物騒な発言が聞こえた気がします( ゚д゚)

 

 「アレ」「キメたい」とくれば、少し勘のいい人ならヤバいお薬を連想してしまうのではないでしょうか。

そんな彼は、とうとう我慢できずに「アレ」とやらを入手すべく、それを持っているとあたりを付けた隣人に話しかけることにします。

ちなみにこの隣人の容姿ですが――

 

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 ………………。

人を見かけで判断してはいけない。

そう思いつつも、どう考えてもカタギの人間じゃないようなルックスをしています。

刺青・ピアス・ツーブロック……私の独断と偏見による、

柄が悪い人間のファッションスリートップが揃ってます\(^o^)/

 

とはいえ、めげずに彼に話しかけてアレを吸いたいと懇願するまひろ。

 それに対する隣人の返答は――

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 どうみても大麻とかコカインのことだろ。

 

ともあれ、まひろと隣人は彼の家に赴くことに。

いよいよ禁断のシーンが解禁――!?……と思いきや。

 

 

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そこにいたのは、インコでした。

そして、気になる「アレ」の正体とは――

 

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インコから出る脂粉しふん※1)、略してインのことでした。

 

 …………………。

 

ヤラれた!! ミスリードだったのか(#`皿´)

 

そう、本作はドラッグキメキメのジャンキー漫画と思いきや、

インコとの日常を綴ったほんわかアニマル漫画だったのです!

 

……いや、ジャンキーはジャンキーでも、タイトルにもなっている鳥ジャンキーを描いたという点では中毒になる漫画と言っても間違っていないのかもしれません(笑)

 

※1 脂粉とは、インコやオウムの

①粉綿羽が粉になったもの

②尾脂腺の脂が粉になったもの

の二通りのものを指す言葉です。

バターのような匂いとも、干したての布団のような匂いとも言われており、独特の香ばしい匂いがクセになる人も多数存在します。

余談ですが、この脂粉から出る香りを「インコ臭」と呼称することもあり、

なんとそれらを纏めた香水も販売されているのだとか……)

 

こうして、改めて自己紹介を済ませた鳥好きこと都築つづきはしゆきとまひろは友人関係となり、交流が始まる――というところから物語が始まるのですが。

 

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 そんな中、私の「気になったことは徹底的に調べないと気が済まない」という性分が鎌首をもたげました。

それは―――

 
ズバリ!作中に登場するインコについてです。

 

都築は当たり前のように「コガネメキシコインコ」と自身のインコを呼称し、その他にも「ワカケホンセイインコ」「セネガルパロット」「セキセイインコ」「ボタンインコ」など、本作には多種多様なインコたちが登場します。

 

おまけに、インコを飼うときの注意やそれに付随する豆知識など、まさに鳥飼いにとっては必読といってていい数多のマニアックな情報が公開されることも。

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この事実を知った途端、私の脳裏に数多の疑問が浮かんできました。

 

即ち、
インコってどのように分類されているのか?

また、どのような種類がいるのか?

インコとオウムの違いとは?

インコの生態はとは?

そもそもインコってどこに生息しているのか?
etc.……


一度気になってしまえば、最早それは呪縛のように私の心を蝕んでいく。(妄想)
ということで、前置きが長くなりましたが―――

第11回マグコミ漫画研究部!~MAGCOMI作品のどうでもいいことを真面目に考察してみた~の議題は、こちらになります!!

 

『鳥ジャンキーズ』で取り上げられているインコについて研究してみた

 

 

 

 

 

まずは、そもそもインコという存在自体の定義について調べてみました。

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現在、世界には大小無数の約1万5千種ほどの鳥類がいると言われています。

そんな彼らは、学術上39つのもくに分かれて分類されており、その内の一つであるオウム目インコ科に分類される330種類ほどの亜種がインコと定義される鳥になります。

ちなみに、このオウム目にはもう一つ、オウム科と呼ばれる科もあり、オウムはこちらに属しているようです。

 

では、インコとオウムの違いとは一体なんなのか?

細かく分ければいろいろあるようですが、最たるものは主に大きさ・冠羽かんうの有無になるそうです。

 

まず、大きさについては平均するとオウムが体長30cm~60cm程度、インコが15cm~40cm程度になるそうです。

全体的にインコの方がやや小さめ、といったところでしょうか。

もちろん種類によっても変わり、オウム最大といわれるオオバタンの全長は約60cm、インコ最大といわれるスミレコンゴウインコは約100cmほどと言われているので、最大サイズとしてはインコの方が上回っているようです。

 

次に、冠羽について。

冠羽とは頭にある冠状・房状・扇状などに分かれた飾り羽のことを指し、これがあればオウム、なければインコという区別がされているそうです。

要は、下記画像のように頭部分に羽がついている鳥は大体、オウムで

 

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都築の飼っているコガネメキシコインコのかぼちゃのように、頭に羽がついておらず丸っこい頭部をしている場合、インコと呼称することが多いようです。

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とはいえ冠羽を持つインコも存在し、一様に断言することはできないようですが、それ以外だと胆嚢の有無や頭蓋骨の配置など、内部の構造で判断することもあるようですね!

 

 

さて、そんなインコですが、具体的にはどのような生態なのか?

 調べてみると、とても面白いことがわかりました。

 

まず、インコは他の鳥類と比べるととても賢い動物のようです。

インコの脳はクルミくらいの大きさですが、身体全体のサイズと脳のサイズを比較すると、万物の霊長である人間に近い比率を持っています。

身体に占める脳の割合が大きいと言うことは、それだけものを考える力を持つということ。

その証拠に、インコと比べて10倍近い大きさを持つ猿などの哺乳類同様、道具を使ったりできることからも、とても高い知力を持っていることがわかります。

 

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作中でも、かぼちゃが都築のことを「かいぬし」と呼んでいますが、これはけっして漫画的な擬人化表現にとどまらず、実際に自分ではないものを非自己として認識しているからこその言葉だったのかもしれませんね!

 

そんなインコですが、元々群れで生きる性質の生物ということもあり、とても寂しがり屋な気質を持ってます。

パートナー(つがいの相手)の他、遊んでくれる相手・傍にいてくれる相手を常に求めており、それは何も同種のみにとどまりません。

 

相手が異種である人間でも、常日頃から愛情を込めて接していれば「この人の卵を産みたい!」と思うほどの発情としての対象として認識され、パートナー認定をされることもあるそうです。

作中のかぼちゃも、都築のことをパートナー認定していましたが、ここに至るまでに相当な愛情をこめてかぼちゃの世話をしてあげたんでしょうね!(*'▽')

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ただし、これには問題もあります。

当然、インコは雄でも雌でもパートナー認定を受けた相手と子供を作りたいと強く思うものなのですが、それが強すぎると発情期を迎えてしまうことがある為です。

 

インコには、大別すると繁殖期・非繁殖期という2つの期があり、

発情期は繁殖期の中のサイクルの1つになります。

(例えば、セキセイインコの繁殖期は発情期→交尾期・産卵期→抱卵・育雛期 →非発情期→発情期……と細分化された期を一定の周期で繰り返すと言われています)

 

繁殖期が長くなると自然と発情回数が増えます。さらに、この繁殖期には問題を起こす原因が多々あると言われており、その頻度が多くなると

 

 ・興奮し、とにかくあらゆるものに攻撃的になる。

・卵殻形成のため、カルシウムが不足し骨折しやすくなる。

逆にカルシウム過多によって骨にカルシウムが付着し、骨自体が硬くなり折れやすくなったりもする 。

・発情しても繁殖欲求が満たされないと、ストレスが溜まり毛引き(自分で自分の羽を毟ること)を行うこともある。

・産卵をすることになっても、卵詰まりなどの病気に罹る恐れがある。また、オスも同様に、発情過多によって精巣腫瘍といった病気になることもある。

 

 

……などの問題が起きてしまい、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

 一般的に、自然界にいるインコは繁殖期が約3ヶ月、非繁殖期が約9か月ほどで1年を過ごすと言われていますが、ペットとして飼われているインコはそれ以上の頻度で発情し、発情過多になることが多いようです。

 

これには体重・睡眠時間など様々な要因があるのですが、発情対象が常に側に居続けるということも大きいようです。

 

パートナー認定している相手が四六時中一緒にいて愛情を注いでくれると、インコはそれに応えようとするのか、いつでも発情期を迎えてしまうものなのです。特に、背中を触るという行為は交尾行動をするようなものなので、厳禁なのだとか……。

 

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作中でもかぼちゃが発情し、まひろに攻撃的になったり、都築に噛みついたりしている描写がありましたね!

 

なのでインコをペットとして飼う場合は、パートナー認定を受けるくらい仲良くなることを目指しつつも、発情を適度に抑える為、時にはスキンシップを控えるなど高度柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応することが求められるようです('ω')

 

 中々難しそうな条件ですが、慣れるとそれもクセになるのかもしれません…(笑)

 

また、どうでもいいことですが、先ほどお伝えした通り、インコは同種以外にもパートナー認定をするくらい度量の広い(?)生物です。

それは何も人間だけに限らず、中には人間以外の無機物にすら恋をすることもあります。

作中でも、都築の友達である御子柴イコは、飼っているインコであるワカちゃんをアヒルのおもちゃに寝取られた……というような描写がありましたね(;^ω^)

 

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 更にユニークだと思ったのは、インコは鏡に映る自分にすら恋をすることがあるそうです。

鏡に映る自分を自分とは違う別の非自己だと認識し、そのままパートナー認定をすることもあるのだとか。

 

オマケに、インコの雌は1羽であっても卵を産むことができる身体の作りをしている為、鏡を見ながらパートナーの姿に発情し、やがて想像妊娠のような形で出産をすることもあります。

(ちなみに、単体で産んだ卵を「無精卵」、交尾して生んだ卵を「有精卵」と呼称するそうです)

 

なんだか少し気の毒にも感じますが、インコ自身は気付いてませんし、きちんと満足しているならそれでもいい……のかもしれませんね(;^ω^)

 

 

また、これまで私はインコというとそれなりにポピュラーな生物で、森に行けば気軽に会えるくらいの認識でいました。

ところがどっこい、調べてみるとインコの生息域はかなり限られているようです。

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基本的に、野生のインコはそのほとんどが、南米・アフリカ・オーストラリアなどの南半球にしか生息していません。

インコは体温が高く、常時40~42℃くらいをキープしていると言われます。人間であれば高熱で意識朦朧としているかのような状態です。そんな体温をキープする為には、どちらかといえば温暖な気候の方が過ごしやすく、必然的にそのようなところに定住するようになったのでしょう。

つまり、今日本にいるインコは全て、ある意味では外来種と言えそうです。

 

そんなインコですが、日本に上陸したのは、明治時代末期ごろと言われています。

そのころに初めてセキセイインコが輸入され、そのカラフルで人目を引く容姿と人間の声真似ができる知能もあって、コンパニオンアニマル(ペット)としての地位を確立し、今日に至ったそうです。

 

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 ちなみに、インコがカラフルである理由については諸説あるようですが、最も有名なものとしては「仲間を見分けるため」という理由のようです。

鳥類は総じて、視覚によって他の動物と自分たちを識別しています。

そして、インコが暮らす南半球の温暖なジャングルなどでは、鬱蒼と生い茂った密林が視界を遮り、中々仲間や敵を識別し辛い為、目立つようにカラフルな色にすることでそれを補うこととしたようです。

 

ある意味、昆虫でよくある「擬態」とは真逆の思想ですが、それでもここまで繁栄できたのは、彼らが生存競争に打ち勝ってきた証でしょう。


 ……とはいえ、現代ではそれも難しくなっているようです。

 

森林伐採による生存域の侵略や人間による狩猟・捕獲もあり、今ではインコの現生種のうち、約20~30%の種が絶滅危惧種に認定されているといいます。

 

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作中でも都築が解説していましたが、かぼちゃの種名であるコガネメキシコインコも、野生化に生きるのは地球上に数千羽しかいない状況です。

 

この状況を打破する為も――ぜひ本作を隅々まで読み、インコへの知識を深め、野生のインコへの労りの気持ちを持つ鳥ジャンキーのような鳥類ファンを増やしていければと思います(`・ω・´)

 

ということで、もしまだ『鳥ジャンキーズ』を読んだことのないそこのアナタ!!

これを機に是非読んでみてはいかがでしょうか。徐々に広がっていく『鳥ジャンキーズ』ワールドと、インコに対する愛を是非ご堪能ください!

 

 以後もこのような形で、私Nが独断と偏見で選んだMAGCOMI連載作品の気になった点を考察・研究していこうと思います! 次回もお楽しみに!

 

■参考文献

 松岡滋(2012)『インコとの暮らし方がわかる本』日東書院.

 細川博昭(2013)『マンガでわかるインコの気持ち:インコの心がだいたい人間ってホント? 遊んでほしい、かまってほしいときのサインは?』SBクリエイティブ.

 細川博昭(2015)『インコの謎:言語学習能力、フルカラーの視覚、二足歩行、種族を超えた人間との類似点が多いわけ』誠文堂新光社.

朝日新聞出版(2017)『飼い主さんに伝えたい130のこと:インコがおしえるインコの本音』磯崎哲也監修,朝日新聞出版.

株式会社スリーシーズン(2017)『 インコ語辞典:-しぐさや行動からインコのキモチがわかる!-』医学監修:横浜小鳥の病院院長 海老沢和荘,学研+.

 すずき莉萌(2016)『住まい、食べ物、接し方、病気のことがすぐわかる!:インコ』誠文堂新光社.

 

 

©空廼カイリ/マッグガーデン ©KAILI SORANO/MAG Garden

記事監修:小鳥のセンター病院 池谷真樹様

※本ブログへ記載した画像は、MAGCOMIで掲載された『鳥ジャンキーズ』1話~13話より抜粋し、引用させて頂きました。