月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2017年6月期

2017年6月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第18回募集、期待賞1作品、努力賞7作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(6月30日締切分)

完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『ノラの神さま』

『ノラの神さま』

梅原 彩香

あらすじ

時は江戸時代。梅乃井の梅香に引き取られたノラは、ある日猫を拾うのだが…。ノラと梅香が紡ぐ世代を越えた物語。

作品講評

総評として、キャラやストーリーなどを含めた全体の構成が上手く、時代がかった内容で長めのページ数を感じさせない内容。また「作品」としてよくまとまっており、世界観が立ち上がっていて好印象。反面、絵や内容設定などに難がある。今後は多少挑戦的な内容や、作者独自の世界観を強くした作品を読んでみたい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『セイレン』

『セイレン』

雑食よる

あらすじ

歌劇団に所属する“歌姫”のルゥは、美しい歌声と共に奇跡と呼ばれる不思議な現象を起こすことができるのだが、今回の役「恋をする少女」は上手くいかなくて…。

作品講評

キャラや背景など、一つ一つ丁寧な仕上がりに好感が持てる。ストレスなく読めるコマ割りに、ページをめくるごとに変わる演出など読者を喜ばせる工夫が凝らされていた。一方で、この作品の世界観がいまいち伝わってこない。歌姫の存在はどのようなものなのか、人との違いはあるのかなど、歌姫というアイデアを軸に物語をもっと深く掘り下げて欲しかった。また、話に沿ってキャラを動かしているのが気になる。キャラの個性を生かした物語を紡いで欲しい。更なる活躍に期待している。

『魔界JKベリアル』

『魔界JKベリアル』

toufu(29)

あらすじ

魔界に転生したJKが現代世界に帰るために魔界を東奔西走する。果たして彼女は無事に帰れるのか…!?

作品講評

画風も相まって、良い意味で懐かしさを覚える一本。ただ内容はテクニカルにすぎる印象。記号としての「JK」や「転生モノ」をネタにしており作品の題材選びは悪くないが、反面どうしてもそれらの枠や、ストーリー上のイベントなどを重視してしまっていてテンポが長く感じられた。難しい話だが「何を見せたいのか」「何がウケるのか」「キャラクターのどこが面白いのか」などをバランスを取りながら総合的に突き詰めて考える必要がある。まずは短くキレ味の鋭い作品を量産してみてはどうだろうか。

『グロウイング』

『グロウイング』

みやまけい(21)

あらすじ

大学生・野沢が新しく始めたのは奇妙なキノコ栽培のアルバイト。そこには、自分と同じように社会に適合できない人たちが居て…。

作品講評

人物・背景ともに自分のフィルターを通してデフォルメして描けており、かつ画面で楽しませる意識が見受けられ、今回の受賞に繋がった。しかしながら、構成面については要努力。今作は、主人公・野沢が自己の居場所を見出す話だと思うが、野沢の行動原理の描写が不足していてストーリー・テーマが掴みにくい。自分が考えている以上に漫画的に・大げさに・強調して描かないと読み手に伝わらないことを意識し、次回作に取り組むことを期待する。

『おれたちの龍儀』

『おれたちの龍儀』

たかなし鳩(19)

あらすじ

男子高校生・城元は不良である麻生の侠気に惚れ舎弟にしてもらうが、城元にはある秘密があり…?

作品講評

キャラクターの関係性や人物像など、若干古めかしさを感じるものの題材に対する作者の描きたい意欲が感じられて良かった。ただ、設定や世界観などの詰めが甘く、転じてドラマがチープに感じられるのでそこをどう作っていくかが今後の課題になる。画面構成に関しても、所々に面白い構図が表れるが、線やトーンのデジタル感が強烈なせいでのっぺりとした画面になってしまっている。BL作品として見た場合、サービスはもう少し欲しかった。

『ドラマチックヒーロー』

『ドラマチックヒーロー』

ゆのはら ゆの

あらすじ

事なかれ主義の高校生・秋人にできた義理の弟は、なにやら秘密を抱えた引きこもり少年で…?

作品講評

本題に入るまでが長いため、作品の本質が伝わりづらくなってしまっているのが、もったいなく感じる。キャラクター自体もテンプレ的なので、そうであればよりストーリーを見せることに重きを置いた方がいい。全体を通して「何を見せたいか」というのが分かりづらく、いざ見せ場に突入した際にメリハリが無くなっているのでカタルシスが弱くなっている。シンプルな題材とそれを見せる構成を意識して、今後取り組んで欲しい。

『キノコと一週間』

『キノコと一週間』

藤原詩鶴(20)

あらすじ

有害な菌類が蔓延し、地上に人が住めなくなって約20年。防護服を着て未知の生物を捕らえる仕事をしていた男は、キノコと人間が混じったような子どもと出会い…。

作品講評

不思議な生き物とのコミュニケーションの様子が魅力的に描かれていた。キノコの子とのやりとりが大変ほほえましく、段々と情が湧いてくる男の揺れ動きも丁寧に追えていて共感しやすい。細かなコメディのセンスも良し。ただ、絵…描線や形の取り方などにどうしても粗さが目立つ。よりデフォルメを効かせていくのか、細く整えて繊細さを出していくのか…方向性も含めて色々と試してみてほしい。味はあるのでそこは大事にしつつ、なにより「量」を描いて魅力的な絵を作り上げていこう。

『迷い仔とアニマの箱庭』

『迷い仔とアニマの箱庭』

渡貫UK(25)

あらすじ

動物好きの男子小学生・宗太は、見たことのない巨大な生き物達がいる世界に迷い込む。戸惑う彼が出会ったのは、罠にかかった「竜」だった…。

作品講評

アクションシーンを果敢に描くところは好感が持てた。ただし、そのアクションシーンを見せるために物語を構成している印象を受け、この物語で伝えたかったことが後付になっているように感じる。また、全体的に淡白な画面になってしまっており、ところどころ何が起こったのかわかりづらい構図があった。主人公と同様にワクワク、ドキドキする気持ちを抱くような画面作りを目指してほしい。筆致に熱量を感じる部分があり伸び代は期待できるので、キャラクターや物語作りにおいても粘り強く取り組んでいってほしい。

最終選考作品

『不可思議姉妹』(完成原稿部門)

植木つゆり(21)

『俺たち、崖っぷち芸人』(完成原稿部門)

こいでちゃこ(26)

総評

今回は期待賞1作、努力賞7作。伸び代の豊かさを感じさせる、先が楽しみな応募者の多い漫画賞であった。

期待賞の『ノラの神さま』は世界の見せ方、物語の紡ぎ方が上手く、完成度は群を抜いていた。題材などの選び方がやや“読んでもらえること前提”にも見えるので、読み手に響かせるための自身の才の活かし方をより意識してみてほしい。

努力賞の7作品は、それぞれ個性をしっかりと感じ取ることができた。個性の活かし方が良い方向に嵌まれば、一気に面白さが読み手に響き始めるはず。その方法を見つける為に担当編集とやり取りを繰り返して、上へと羽ばたいてほしい。

今後も熱意溢れる、幅広いジャンルの作品の投稿を楽しみにしている。

7月末〆切の発表は
2017年8月30日!