月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2017年5月期

2017年5月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第17回募集、佳作2作品、奨励賞2作品、努力賞4作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(5月31日締切分)

完成原稿部門:佳作賞金10万円
受賞作掲載

『ただいま人類救済中!!』

『ただいま人類救済中!!』

物語者(29)

あらすじ

漫画を描く事しか能がない少女の根岸美智子は、クラスメイトにいじめを受けていた。そんな中、今は使われていない天文部の部室を見つけ秘密の隠れ家として通うようになるのだが、そこに…。

作品講評

高い画力に緻密な画面作り、工夫が凝らされたカメラワークで、読み手を引き込む力強さが今回の受賞に繋がった。一方で、時々みせる絵の拙さや、仕上げ方が荒い点を改善していきたい所。細部まで描きこむ事は良い事だが、やや表現が古いので線画の密度は変えず新しい表現作りを心掛けて作品を作っていって欲しい。これからの活躍に期待している。

受賞作品を読む

『化物と眠る魔女』

『化物と眠る魔女』

上戸亮

あらすじ

呪いによって過去の記憶を失い眠り続けていた、血のように赤い髪の少女アクル。異形の従者ユアンとともに記憶を取り戻そうと旅立つ彼女に、黒き悪霊の群れが迫る……!

作品講評

キャラクタービジュアルや画面の作り方が光り、読み手の視線を集める強い引力があった。登場人物をつなぐドラマも演出と噛みあい、感情の振れ幅の大きさが演出とも相まって、切なさの中にも余韻を残していた。一方、情報の伝え方にはまだ課題が残る。オリジナルの世界観・設定や状況を分かりやすく伝える意識を。絵柄も高いレベルでまとまっているが、ここからの上積みが作家の個性となるので、さらに先を目指してほしい。

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完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『花ノ棘』

『花ノ棘』

酒見(19)

あらすじ

不良少女・透子は、学校で唯一まともに話しかけてくる生徒会長の美姫に居心地の良さを感じていた。やがて、その心は恋愛感情だと気付かされるのだが、美姫の闇が垣間見えて……。

作品講評

作画面での拙さや、ジャンルにおける既視感は残るものの、それを上回る演出やセンスに驚かされた。要所々々の息を呑むような表情、女性の怖さをしっかりと描ききった点など特筆すべき点も多い。今後は、自身の武器(強み)を自覚した上で、どれほど真剣に作品づくりに取り組めるかが勝負。若干19歳、年齢的な点も含め大いに期待できる。

『東風の日』

『東風の日』

いからしあゆみ(23)

あらすじ

女子中学生の瀬戸は、掃除当番で残っていたある日、同じクラスの男子・高野に紙ヒコーキで刺された。

作品講評

画面を面白くしようという試みが評価された作品。内容に関して言えば、揺れ動く中高生の心持ちの語りが小気味よく、読後は爽やかさが残る。ただ、絵に関しては安定感が欲しいところ。「色々な作風が混じった様な絵柄」というのが現在の評価なので、自身の求めるビジョンをより明確に、そしてそれを描けるよう努力と精進を。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『勇者とおかん。』

『勇者とおかん。』

古河ハリ

あらすじ

魔王討伐に向けて、ヒーラーを雇いに酒場へやってきた勇者一行。しかしそこにいたのは、なんと勇者の“おかん”だった!?

作品講評

勇者のおかんを出して、ひたすら意表をついて笑わせてくるネタは良かった。ただ、このネタを活かすには作画力、構成力、演出力それぞれもう一歩欲しいところ。全体的にセリフで笑わせようという作りになっているので、作画・演出の方にネタを強調する力が弱くなっており、そのあたりも意識してほしい。背景なども丁寧に描いているが、この作品の場合は更に緻密な作画でネタとのギャップを狙ってもらいたかった。総じて「面白いもの」を「面白く見せる」ことを意識してほしい。

『孤独の引力』

『孤独の引力』

桑原たもつ(22)

あらすじ

人付き合いの苦手な涼のもとに転がり込んできたミステリアスなハルカ。不器用な距離感の同棲生活を過ごすうちに、涼はハルカに感化され始めるが、ある日突然ハルカは姿を消し……。

作品講評

粗削りではある一方、描かれた人物や空気感に魅力を感じた。雰囲気の出し方や、仕草と表情などがキャラクター性を浮き上がらせ、必要以上の説明を省ける強みになっている。女性同士の不思議な絆を描く繊細な感情描写も見どころであるので、視覚的な効果や間の作り方など、演出の意識をさらに磨いていって欲しい。センスを発揮させるための地力を付ければ、読み手がさらに引き込まれるはず。

『反面キョウダイ』

『反面キョウダイ』

青 出海(24)

あらすじ

桜と楓は、髪色や肌の色、女性への対応など、何もかもが正反対の双子の兄弟。仲違いする二人は、桜の友人・旭に関わるうちに……。

作品講評

見やすい画面でストレスなく読める反面、内容は個々の要素が多く整理しきれていない印象。しっかりとキャラクターを掘り下げることも大切だが、何を主軸としてみせるべきか精査した上で物語を構成すると、読者は迷わずに作品世界を楽しむことができるはず。作画面を含め、伸び代を感じるので今後も粘り強く作品に向き合ってほしい。

『翡翠の友人』

『翡翠の友人』

はやむらころも(21)

あらすじ

特殊な力で宝石を生み出す者と、それを細工する者が通う学園――。宝石細工を学ぶ少女・八重は、宝石生成を行う友人の環が不調であることに気づき……。

作品講評

設定とキャラクター、世界観の組み合わせが相性良く、雰囲気をしっかり作れていた。ただ作画面が不安定で、物語に入り込もうとする度に邪魔をしてしまっている。この作品の肝である宝石の描写も、「色」は感じられたが「光彩」が感じられなかったので、光をどう絵に落とし込むかも、宝石以外を描くにしても今後の課題になってくる。また、キャラクターの感情の描写に得手不得手が見られたので、自分が得意とするところを自覚し、そこを突き詰めて行ってもらいたい。

最終選考作品

『Phantomime』(完成原稿部門)

芦谷クニイチ(22)

『サイレントコミック』(完成原稿部門)

橋浦健太(30)

『レンタルマン』(完成原稿部門)

カントリリ(29)

『おじいちゃんのレシピノート』(完成原稿部門)

吉岡さぐる(22)

『再び会った、その時は。』(完成原稿部門)

純華(26)/貴穂(25)

『TETORA』(完成原稿部門)

橋浦健太(30)

総評

佳作2作を筆頭に合計8作品が受賞する、実り豊かな漫画賞となった。

佳作『ただいま人類救済中!!』と『化物と眠る魔女』は、どちらも個性と上手さを併せ持った画面が素晴らしく、納得の受賞であった。ここで立ち止まらないよう、担当編集と共に根気強く作品作りに取り組み、表舞台に出てきてほしい。

奨励賞の『花の棘』『東風の日』は、粗削りな部分はあるが作品の雰囲気作りが良く、世界に奥行きを感じられた。努力賞の4作品は、強くはないものの自らの魅力は押し出せていたと思う。これからの取り組み方に期待したい。

今後も熱量の込もった、工夫を凝らした作品の投稿を楽しみにしている。

6月末〆切の発表は
2017年7月30日!