2017年4月期
第16回募集、奨励賞2作品、努力賞8作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(4月30日締切分)
賞金3万円
『チューカFuuスープ』
谷川太一(27)
あらすじ
拳法の達人、通称“天人”を目指す少年・タオは日夜鍛錬を積んでいたのだが、ある日破門を告げられてしまい――。
作品講評
前回応募時(2017年1月期)もしっかりとした画面の作りだったが、今回は更にクオリティが向上している。画力の成長もさることながら、今回は背景や服装など「画力が顕著に表れる題材」を描いたことが大きい。ストーリーも安心して読める構成になっている。一方で、「どういうストーリーを描くか」という点は今一歩足りておらず、画力ではなく「絵柄」においても、作品と読者のニーズ間にある溝をどう埋めていくかが今後大変重要になってくる。
『花のゆくえ』
わか坊太郎(20)
あらすじ
吸血鬼の伝承が伝わる地、そこで起こった不可解な事件。その問題に頭を悩ませる神父のもとに、一人の吸血鬼があらわれ……。
作品講評
画面を構築する力と、作品にマッチした絵柄が高いところでまとまっている。絵に関しては丁寧かつ上手なところが目を引くが、一方でそれ故に雑なところが露見しやすくなってしまっている。物語に関しても、キャラクターに対する「好き」は伝わってきたが、そのキャラクターたちの魅力をどういうシーンをもって表現するのか、作品を通して伝えたいこと・表現したいことは何だったのか、今後はそこを突き詰めていってほしい。
賞金1万円
『魔王様、お供します』
アユタミシン(29)
あらすじ
世界征服を目論む魔王軍。幹部を招集して、今日も何やら怪しげな会合を開いており……。魔王軍の日常生活を、側近であるダークナイトの視点から描いたギャグファンタジー。
作品講評
作家の持つ独自の雰囲気とセンスが好印象の作品。少年誌のようなノリで非常にテンポよく読め、キャラクターにも好感が持てる。反面、同ジャンルの作品が多いこともあり、目新しさに欠ける部分もある、今後の課題としてオリジナル性を追求すれば、もっと目を引く良い作品に仕上がっていくはず。
『土竜と亡霊』
縁倉里美
あらすじ
旅人・呵虎金は、ある店主から数百年ほど前の首飾りを手に入れる。買った人間が亡霊に取り憑かれたという、曰く付きの品だったが…。
作品講評
雰囲気のある画面、特にペンの力強さが非常に魅力的。その一方、背景など含めて全体的に絵の粗さが目立っているので、細部まで繊細にペンを入れていけるとグンと完成度が高くなると思う。内容は、導入部は入りやすかったものの、キャラクター・世界観・状況設定などの情報出しが上手く行かず、読み手が作品を把握できないまま話が進んでしまうのが勿体無い。描けば描くだけ伸びる時期だと思うので、質・量ともに意識しつつ着実に筆力を伸ばしていってほしい。期待している。
『フレームレンズの水平線』
更紗場ていら
あらすじ
仕事に悩む新人写真記者・石田がカメラ女子と出会い…。
作品講評
非常に素直なネーム回し。加えて題材選定と扉絵の印象が良く、今回の受賞に繋がった。しかしながら、そつなく漫画になっていても読み手の心を掴むには今一歩、という印象を拭えない。「何かに悩む主人公が女の子と出会い、特殊な体験を経て悩みを受容・解決し、元の場所に帰っていく」、いわゆるボーイミーツガールのストーリーラインは、読み手を主人公に共感させることが必要不可欠。今後は、画面作りの底上げと共に、荒削りでも読み手を引き込むネーム作りを期待する。
『メフィストフェレスはかく語る』
森賀晴人
あらすじ
女子高生・姫神透は自身の通う学校に住み着く悪魔・メフィストフェレスから、退屈しのぎに学校で起きている物語を聞く。それは女子寮に夜な夜な現れるという濡れた幽霊の話だった。
作品講評
雰囲気のある作風とクセのあるアングルが作家性を高めていて良いと思います。反面、似たような構図が多くなってしまっていて、読者が飽きてしまう恐れも。画面も常に重さが漂っているので、全体的にバランスとメリハリが取れるように研鑽を積んでいきましょう。
『浪漫と薔薇』
芳宮(22)
あらすじ
どこにでもいそうなカップルのはな子とまーくん。ある日はな子は隠していたBL(ボーイズラブ)な本をまーくんに見つけられてしまい…。
作品講評
テンポ感のあるセリフ回しと、短いページに内容をまとめてそれを読者に伝えられているのは好印象です。ただいかんせん、他作品のメソッドに頼っている部分も大きい。今後は既視感を感じさせないオリジナリティを期待。
『残響の刻』
道草なずな
あらすじ
会社員の井内久美は電車通勤の途中に、女子高生の自殺を目撃する。助けを呼ぶが誰も自殺に気づいていない、それどころか死体はそこにはなくて――…
作品講評
ホラー漫画の独特な雰囲気作りができており、丁寧な仕上がりや、読者を怖がらせようというシーンが多く描かれており好印象。一方で、内容に課題が残る。ストーリーはシンプルで分りやすいものであり、この手の物語は読者に先の展開を読ませない工夫がより求められる。現状だとある程度読み進めるとオチがわかってしまう。次回はより巧妙に読者を騙し、驚きを与える作品を作り出して欲しい。今後の活躍に期待。
『めじろ』
原誠(19)
あらすじ
手違いで廃部寸前の和楽器部に入部することになった橋本さくらは、同じく和楽器部に入部した洲賀めじろと出会い……。
作品講評
和楽器という題材をしっかりと調べたことや、丁寧に引かれた線から作品に対する真摯な姿勢が感じられ、編集部一同が好印象を受けた。一方でデッサンやパースの狂いが目立ち、キャラクターもストーリー運びのために動かされているように感じられ、読者を惹きこむまでには至っていない。全体的な水準を上げることを目標に、次回作も精力的に取り組んでほしい。
『マイリトルヒーロー』
七生きいの(20)
あらすじ
高校生の陽一郎は昔からなんでもそつなくこなせてしまい、内申のために入った演劇部の発表もテキトウに済ませようとしていた。しかし、発表を見ていた子供たちの中に一人、陽一郎を睨む子がいた…。
作品講評
やわらかい作風とマッチしたネームで、読者へ伝えたい事がストレートに入ってきます。しかし、全体的にはあっさり、淡々としすぎている印象です。物語自体も内面的なものを扱っているので、作品全体を引き締めるような表現が欲しいところ。まずはメリハリを意識した画面作りを心がけてみましょう。
『太陽の獅子と鏡の月(グネシュ・クラルとアイナ・アイ)』(完成原稿部門)
迅深イヅル(25)
『ある日、命を狙われました。』(完成原稿部門)
赤マフラー大和(23)
『カガチ』(完成原稿部門)
坂本成(19)
『ねことキセキ』(完成原稿部門)
星屑のひと(30)
奨励賞2作、努力賞8作と、荒削りだがポテンシャルの高さを感じる作品の多い、有意義な漫画賞だった。
奨励賞の『チューカFuuスープ』は完成度の高さが、『花のゆくえ』はドラマを作ろうとする意識が光っていた。担当編集とやり取りを重ねて、より読者ファーストを意識した作品作りに取り組んでほしい。
努力賞の8作品は上位の受賞作と遜色なく、何か一つ上積みがあれば簡単にひっくり返る差だった。結果を分析して今後のプランをどれだけ具体化できるか、どれだけ根気強く取り組めるかに賭かっていると思う。工夫して頑張ってほしい。
今後も可能性に溢れた、幅広いジャンルの作品の投稿を楽しみにしている。