月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2017年3月期

2017年3月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第15回募集、佳作1作品、期待賞1作品ほか期待作複数選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(3月31日締切分)

完成原稿部門:佳作賞金10万円
受賞作掲載

『天つ空に二人』

『天つ空に二人』

明(ミン)(33)

あらすじ

呪術者の家に生まれた心優しい少女アオ。誰にも愛され幸福な生活でありながら、少女の心は孤独だった。ただ一人心許すのは、家に捕らわれた鬼の子シロ。シロもまた呪術者に使役され、酷使される日々の中で、アオだけがよりどころであった。人と鬼――決して結ばれることのない二人の思い、その行く末は……

作品講評

全体的に「上手」な印象。背景の処理から、コマの使い方、ストーリーラインの良さからくる清涼な読後感と一抹のもの悲しさは、どこを切っても高評価。ただし、こなれていて「取っ掛かり」のようなモノが少なく、今後はそういった「その作家さんでなければ描けないこと」を伸ばす必要があるものの、賞レベルでは十分。次回作ではより一層意欲的な作品作りを期待したい。

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完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『VIVAときめき』

『VIVAときめき』

ヨシダキヨシ(22)

あらすじ

「ときめきてぇ」花も恥じらうドキドキ高校生ライフの初日。主人公・北田のその切なる望みは、やがて学校全体を巻き込んでいくことになる…。T(ときめき)が逆巻くこの学び舎で、果たして北田はどうなってしまうのか?!?!!

作品講評

全体的に一つのモチーフを使ってハイテンションギャグで進むが、きちんとした学園モノとしての構造をよく理解しており、飽きさせない作り。題材選択も良く、最初から最後までブレずに描き切れており、完成している印象。反面、今後のギャグとしての引き出しや、背景の処理ももう一工夫あるとよい。絵も見栄えが良く、一コマ一コマのキャラの躍動感も目を引き、期待賞とさせていただいた。

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完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『神噛み殺し』

+特別掲載+キャラクター賞1万円

『神噛み殺し』

新谷シンヤ(23)

あらすじ

狼に変化する少年と幼馴染の退魔師少女が、邪悪な神の傀儡を「噛み殺す」!!!

作品講評

個性の芯がはっきりとしたキャラクター像や場面の練り方に強みを感じた作品。丁寧な処理や挑戦的な構図など、作画力の高さが伝わってくる原稿である反面、描き込みやストーリーなど情報量の過剰さが良くも悪くも目立ってしまった。見せ場としての期待の高まるバトル描写が、やや単調に感じられてしまったのも惜しい。課題と向き合い、より高いレベルに到達するのを期待している。

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『duo』

+ネーム賞1万円

『duo』

OUGA(17)

あらすじ

数十万に一人の確率で発症する「帯化」と呼ばれる体内に植物を宿す奇病のある世界。発症した男女二人のバイオリンを巡る、耽美でいて切ないボーイ・ミーツ・ガールストーリー!

作品講評

雰囲気のある空気感が作品全体に漂っており、全体的にセンスのある作品。年齢を抜きにしても”作品”として仕上がっており今後が楽しみ。反面、絵の部分では構図やカットは光るものが感じられるが、細部ではまだまだ甘いものがある。そこをクリアすればデビューまでグッと近くなるかと。

『ノンシュガー』

『ノンシュガー』

川乃 一(25)

あらすじ

至って普通の、自称・華奢でカワイイ女子高生な佐藤さん。どの部活に入るか悩んでいたら突然変な生徒たちに追っかけられて……。

作品講評

味のある画面、読みやすいコマ割り、愛嬌を感じるキャラクターなど、漫画らしい漫画で非常に楽しく読めた。その一方、単に粗く見える絵があったり、ノリと勢いで乗り切れない弱いネタがあったりと、まだ弱く感じる部分も多く見受けられる。目指す頂はまだ先にあることを意識して、成長を止めず良さを伸ばしてほしい。これからに強く期待している。

『タマちゃんの神社再興』

『タマちゃんの神社再興』

中川司(29)

あらすじ

亡き父から引き継いだ神社の再興を願う神主の御堂。その元に人の願いを叶えるという神、玉依姫が現れるのだが――…

作品講評

キャラクター性が面白く、台詞のテンポ感とノリが良い。意外性のあるツッコミやボケなど光るものを感じた。一方で、アオリやフカンなど特定の構図になるとデッサンが崩れている点や、ものの質感がまだ表現しきれていない点など、画面の作りこみに課題が残る作品であった。上記の点を特に意識し作品作りに取り組んでいって欲しい。これからの活躍に期待する。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『羊の寝台』

『羊の寝台』

横島ユイ(23)

あらすじ

サラリーマン笹井が新たに契約した部屋のベッドは、並行世界の少年・高久と“睡眠時間”を共有するもので……。

作品講評

まだまだ荒削りだが、人物を描く際の線の引き方に味があり面白い。一方で背景などは基礎力の更なる向上が求められる。内容はテーマを活かしきれず、この作品をもって何を伝えたかったのかという部分が不明瞭になってしまっているので、題材との向き合い方も今後の課題にしてほしい。どういう読者に向けて、どのようにアプローチするのかも、あわせて意識してもらいたい。

『右手の行方』

『右手の行方』

あんどーなつ(23)

あらすじ

高校一年生・鬼嶋陵は、同じクラスになった右腕のない少年・井狩純のことが気になるけど……?

作品講評

作画は概ね安定しており、このジャンルを読む層にも好まれそうな絵柄が良かった。ただ所々に怪しいところがあるので、描けている所とそうではない所の差を埋めてほしい。話としては、読者の期待・注目を集める要素として「井狩の右腕」があるが、そこの掘り下げが弱く、主題・読者に伝えたいものがあやふやになってしまっている。好きなものを沢山詰め込んだのは伝わってくるが、何を最優先にするのか整理して、作品の持ち味が読者に伝わるようにしてもらいたい。

『One More Chance』

『One More Chance』

早川雅人(19)

あらすじ

あの世から蘇った武士・秀人は、家族を救うべく奔走し…!?

作品講評

非常に素直なストーリーながら、読者を鼓舞する荒々しい展開作りが魅力的。特に、キャラクターの感情の振れ幅を大きく取る技術は今後の成長を大いに予感させる。その一方で画面づくりに難があり、ベタと白い部分のバランスが悪くメリハリに欠ける印象。今後は画面作りのセンスを高めることを期待する。

『海のフラグメント』

『海のフラグメント』

白沢(20)

あらすじ

入り江の洞窟で、少年は謎めいた少女と出会う。無垢な少女、急速に成長していく少女、傷ついても血が流れずヒビ割れてしまう少女。彼女の出生、そしてその正体は……?

作品講評

登場人物同士の関係性を丁寧に描きつつ、情緒ある画面や演出を作ろうとする意識が感じられた作品。ただ現状では作画面、構成面ともムラが目につくため、さらなる成長を期待する。独自のタッチを持っていると感じられる一方で、描線や輪郭の硬さゆえ質感が均一に感じられたコマも散見された。作画面での向上はもちろんのこと、シーンの情緒や対比演出など、場面ごとの魅せ方によってタッチを選び、光る感性をさらに活かして欲しい。

『父と娘の話』

『父と娘の話』

MAYA(22)

あらすじ

大学進学を控えるあやは、一人暮らしのためにもうすぐ実家を出るというのに、父親と些細な喧嘩ばかりしてしまう。イライラした気持ちを抱える中、ふと父に肩もみをしてあげた思い出がよみがえる。

作品講評

不器用な父娘が仲直りするという素直なストーリー構成ながら、ページを進めてしまうネーム力に今後の伸び代を感じます。一方で、ストーリーのメリハリが乏しい印象もあるため、ケレン味のあるキャラクター作りに取り組み、より読者を楽しませる意識を持ちましょう。また、絵に固さを感じます。生き生きとした人間を描くためにも、画力の向上を目指してください。

チャレンジ部門:入選賞金3万円

『魔女が咲(わら)う地(ところ)』

『魔女が咲(わら)う地(ところ)』

松田やきお(25)

あらすじ

ある夏、田舎の小学校に転校してきた高橋遼平は、ふとしたきっかけで村で噂されている魔女に出逢い……。

作品講評

カメラワークやシーン配置のタイミングなど、演出がしっかりなされており目で楽しめるネームになっている。ストーリーは100ページというボリュームを要する内容ではなく、現状は描きたいものを詰め合わせたものになっており、結果として伝えたい事が伝わらない状態になってしまっている。主題を定め、そのための作品を築き上げてほしい。

チャレンジ部門:努力賞賞金1万円

『サンズアイランド』

『サンズアイランド』

いしゆき(34)

あらすじ

彷徨える魂たちが集う死後世界“サンズアイランド”。生前の自己の存在価値に悩む女子高生・希美は、カフェを営むおじさん・やすしと出会い…。

作品講評

荒削りながら、特殊な世界観を読み手に伝達するには十分なネーム回し。情報量が多過ぎずも少な過ぎずもない。ハッタリや派手さに頼らない、地力の強さが窺え今回の受賞に繋がった。その一方で、仕上げ原稿でのペンタッチ、特に人物の画の固さに不安が残る。今後は画面づくりの底上げと、自身の作風にマッチした得意ジャンルを見つけることを期待する。

最終選考作品

『ゆく夏に手をふって』(完成原稿部門)

守田うせき

総評

佳作1作を口火に合計13作品が受賞する、素晴らしい漫画賞となった。

佳作『天つ空に二人』は、雰囲気のある画面が目立つ、魅力に溢れた作品だった。期待賞『VIVAときめき』も、思い切りの良さが印象的な秀作であった。双方とも小さく纏まらないよう、その個性を伸ばし続けて将来を切り開いてほしい。

奨励賞の4作品は上位の受賞作と大きな差があるわけではなく、それぞれの持つ個性は負けずに輝いていた。努力賞の5作品もそうだが、これからどれだけ漫画に喰らいついて密度高く執筆できるかにかかっていると思う。今後に期待したい。

チャレンジ部門は入選1作、努力賞1作。どちらも確かな魅力が伝わってきた。だからこそ次は完成原稿で見てみたい。

今後も可能性に溢れた、幅広いジャンルの作品の投稿を楽しみにしている。

4月末〆切の発表は
2017年5月30日!