2017年8月期
第20回募集、期待賞2作品、奨励賞2作品、努力賞3作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(8月31日締切分)
賞金5万円
受賞作掲載
『花を喰む村』
横島ユイ(23)
あらすじ
母を亡くし、叔父に引き取られた少年・萩原総一郎。彼が連れてこられた村では不思議な花が食されていた――。
作品講評
作画と話の方向性がマッチしており、絵柄やクセをしっかり活かすことが出来ている。このジャンルの肝であるドッキリさせるシーンをメクリに持ってくるなど、演出に対する意識も見られて良かった。ただ、まだまだ荒く雑に感じてしまう画面もあるため、読者の気分を下げないためにもしっかり丁寧に描きつつ、一方で長所を消さないようにしていきたい。同じく描き込みや構図もこのジャンルに求められるものとしてはもう一歩ほしいところ。また、次は読者に対する求心力がある要素にも目を向けてもらいたい。
『kpoBb』
上戸 亮
あらすじ
遠くない未来。人類は人間に擬態した敵性存在・クローフィと生存競争を繰り広げていた。天才科学者エディは奥の手として目覚めたクローフィ・メイベルを管理することになるが…。
作品講評
高い画力と画面構成力、50ページ超というボリュームを楽しみながら読むことが出来た。ただ、情報量の多さが読みやすさを損なっている。クローフィが何者であるのか、生物としてどこから来てどこへ向かっているのか。その設定に作中内で意味があるのか、読者が受け取る情報量として今の状態は適正なのか。この尺では、あれもこれもと欲張ると捌き切るのが大変のように感じる。置きに行く必要はなく、テーマは1点大きなものに集中して太く強いシンプルな構成を心掛けてほしい。
賞金3万円
『人の世界と吸血鬼伯爵』
彩瀬ありす(25)
あらすじ
自分と弟を襲った吸血鬼を憎むアラン。ある日「吸血鬼伯爵」の異名を持つ美少年ノエルが現れ、一触即発の共同生活を送ることに!?
作品講評
端麗な作画で描かれるキャラクターに強みを感じた作品。強い感情を出す場面で表情が魅力的に描けることは、今後の大きな武器として期待できる。一方、ストーリーの整理やテーマの掘り下げといった点での綻びも見えるが、最大の課題は仕上げ処理の淡白さ。意図的にしろそうでないにしろ、読者に物足りなさを感じさせてしまってはもったいない。絵柄と仕上げは一揃いの靴のようなもの、どちらかだけ優れていれば良いというわけではないので、ぜひ意識改革を。
『仰いで天に愧ず』
MAYA(22)
あらすじ
可愛い女の子のような男子高校生・姫野は、男らしい女子高生・武田に恋をしていて…。
作品講評
プロット自体はありきたりなものの、キャラクターの言動がしっかりと詰められており、黒い部分も描き切ったことで、オリジナリティを感じる作品になっていた。ただ、序盤に描いている内容が冗長なため、物語の芯に迫るまでが長く感じたのはもったいない。読みきりたくなる物語運びは出来ているので、次回作は読者が読み進めたくなる入口作りを考えてみよう。また昨今、マンガをスマホで読むことも念頭に置き、コマ割り・画面構成を工夫して読みやすさを追及して欲しい。
賞金1万円
『さざ波ダンス』
太福ユトル
あらすじ
怪我でバレエを休んでいる中学生・ユウナは、嫉妬深い親友の言動に悩まされていた。ある日、放課後の教室で、転校生のリズと出会い…。
作品講評
繊細で丁寧な絵、キャラクターの心理を情景的に魅せる画面構成力、芯の通ったキャラクターの言動。どれも確かな地力を感じられた。惜しむらくは、題材上、物語に大きなドラマを起こしがたいものになっていたことだろう。読者を惹きこむドラマを起こすには、どのような題材でどのようなキャラが動き回るとよいのか、視野を広げてお話のアイデアを考えてみることが大切です。
『鬼嫁さんは夢をみる』
きいろ
あらすじ
皆様ご存じ、桃太郎。彼は頼りになる仲間?を連れて“鬼ヶ島”へ向かう。しかし、そこにいたのは素敵な王子様を待つ乙女で可愛い鬼だった…。
作品講評
画面作りを丁寧に仕上げおり。独特なセンスで馴染みのあるキャラの掛け合いを面白く見せていた。また、新しい要素を入れていこうという姿勢や、一人一人のキャラを立てようとしており好印象。しかし、既存のアイデア故に物語の流れも工夫して欲しい。鬼に出会うまでの尺は短く、本筋である鬼に出会ってからの掛け合いをもっと見せて欲しかった。他にも、笑いの大部分のネタが掛け合いに依存しがちなので、違う手法を試みて欲しい。更なる活躍に期待している。
『注)うちの兄貴腐ってます。』
犬路沢子(25)
あらすじ
男子高校生・音春の兄は、朝から黄色い歓声を浴びるモテ男。その実態は生粋の腐男子で…。
作品講評
癖のない絵柄で、軽いノリでテンポ良く物語が進む点は好印象。しかし特徴のあるキャラを押し出すべき題材ながら、振り切ったキャラクター像を描けていないのが難点であった。どんなジャンルでもキャラクター作りが物を言うが、キャラものコメディなら尚のこと。キャラの外見も設定に合わせて説得力のあるものを練った方が良いだろう。今後は、題材選びの段階から飛び抜けたキャラクターを作れるかが鍵となる。発想の枠を広げるべく、極端さを意識してみよう。
『エゴと試練』(チャレンジ部門)
緒方ナオ
今回は期待賞2作、奨励賞2作、努力賞3作。可能性を感じる作品の多い、充実した漫画賞だった。
期待賞の『花を喰む村』はキャラクターの絵に艶があり、お話の構成も気が配られていて好印象。題材やアイデア、画面の作り込みなどいっそう取り組んで自分自身のスケールをアップさせてほしい。同賞『kpoBb』は絵柄・コマ割り含めて華があり、画面映えしていた。良いシーンを作る力があり、最高到達点は高い。背景含めた絵力、そしてストーリーを読み手に浸透させる力など、更に実力を叩き上げてアベレージを底上げしていってほしい。
奨励賞の2作品、『人の世界と吸血鬼伯爵』はキャラクター絵の完成度が、『仰いで天に愧ず』は心情を紡ぐ表現力がそれぞれ突出して良かった。逆にそれ以外の部分は物足りず、課題は明確。努力賞の3作品も同じだが、良い部分とそうでない部分をしっかり意識し、分析と努力を重ねて先へ先へと進んでほしい。
今後も創意工夫を凝らした、幅広いジャンルの作品の投稿を楽しみにしている。