2017年9月期
第21回募集、準大賞1作品、期待賞1作品、奨励賞2作品、努力賞2作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(9月30日締切分)
賞金50万円
受賞作掲載 + 単行本1巻分の連載確約
賞金5万円
受賞作掲載
『芋恋』
愛南ぜろ
あらすじ
芋を食べるのが大好きな男の子は、干し芋業を営む家の子。そんな男の子の元に“オナラ”を嗅ぐのが大好きな変態お姉さんが現れて…!?
作品講評
扉絵では想像できない、ストーリー展開に変わった個性を感じる面白い作品であった。アイデアも独特で、“オナラ”を嗅ぐのが大好きな変態女と、いいように嗅がれてしまう男の子とのフェチ的なやり取りに笑わされた。一方で、線画や背景、小物の描写が荒々しいのが気になる。また、話の運び方や独特なアイデアで笑わせているが、内容だけを見ると浅い。今後、広がる事が出来る内容(テーマ)の充実も意識して作っていって欲しい。これからの活躍に大いに期待する。
賞金3万円
『止む蝉しぐれ、サルビアは』
坂本成(20)
あらすじ
家庭の事情から祖母の家がある田舎に夏休みの間預けられることになった少年・光博が出会った”おじさん”とは…?
作品講評
キャラに愛情が感じられ、絵柄と雰囲気を評価する声は多かった。しかし構成面で(押さえるべきところは押さえてあるが)エピソードの形式的な繋ぎ合わせにしてしまいがちになっており、散文的な印象を受ける。また読み切りという都合上、田舎へ訪れるところから、立ち去るところまでを詰め込んで描く必要はなかったのではないだろうか。思い入れや愛着が伝わってくるだけに、それらを読者と共有するためにはどうするべきか、もう一度丁寧に世界を作り上げた上で読みたい一本だった。ぜひ次の作品にも期待したい。
『科学者と幽霊』
米宮稲穂(26)
あらすじ
怪しい科学者アラガと、彼にカラダを作ってもらいたい幽霊・エマの騒がしくも穏やかな日常。
作品講評
キャラクター同士の掛け合いに味があり、これを好む人は多そうだと感じた。画面は描き込みにこだわりを感じ芯があるものになっており、表現したいものがある作者の意気込みが伝わってくる。一方で、読者を置いていきかねない作風にもなっており、コマ割りの工夫による読みやすさと、画面の密度コントロールによる見やすさはもう少し欲しいところ。また、この世界観を読者に見てもらうためにも、読者の気を引く顔を作品の前面に持ってこれるよう題材を考えてもらいたい。
賞金1万円
+ネーム賞1万円
『アリスと画家』
はやむらころも(21)
あらすじ
恵まれた容姿を持つ女子高生・アリスは、画家のかこと一週間一緒に暮らすことになる。しかし、その家は生気のない酷く不気味な有様だった…。
作品講評
荒削りながらも作家性を感じる良い作品。ストーリー構成や画面作りに関しては多くの指摘が入ってしまうものの、しっかりキャラクターを描くことが出来ている。作画に関してはデッサン崩れやページごとのクオリティのバラつき、空間への理解不足を補っていく必要がある。ストーリーは所々で視点が定まっておらず、伝わりづらいところがある。いずれもコツコツ時間をかけていけば良くなるので、こだわり抜いて取り組み続け、精進してほしい。
『ヒトリ家族』
寺田寛子(33)
あらすじ
一人ぼっちの少女・四帆は血の繋がらない者同士を集めた擬似家族の中で暮らしていたが、ある時その生活に違和感を覚え始める…。
作品講評
人間ドラマ、それに伴うキャラクターの心の動きをしっかり描けている点が受賞に繋がった。ただ、肝心要の設定部分がありきたり気味で話に目新しさがないので、何か他の作品と差別化できる要素が欲しい。また、絵とそれを構成する線で雑に感じられる部分が散見されるので、シリアスシーンでも少し締まらない印象を受ける。演出やコマ割りも古さを感じ、持ち味というよりはクセの範疇で収まってしまっているので、現在の市場にいる読者に馴染みがある表現を使い、読みやすくしてほしい。総じて、それらをどう鍛え直していくかがこれからの課題になる。
『本山修復堂』(完成原稿部門)
もりこも(27)
『僕が欲しかったもの。』(完成原稿部門)
マシュマロ 愛(22)
『関西系女子』(完成原稿部門)
イチ
『お金が欲しいッ!』(完成原稿部門)
廃棄物X(21)
当賞初選出となる準大賞作を筆頭にそのポテンシャルの高さが窺える作品の揃った今回。
特筆すべきは準大賞の『きようの陽もまぶしくて』。画力・キャラクター・演出、どこを見ても非凡な才能を感じた。何より、17歳という若さでここまで自分自身の思い描く世界を表現出来ている点は、もう脱帽である。しかしながらそれらが読者のフィールドと交わるかどうかは別の話。これからはプロの作家として両者のフィールドの最大公約数を獲れるよう邁進して欲しい。
期待賞以下の5作品も粒ぞろいで、総合力では劣るものの、各作品とも自身の強みをしっかり生かした作りになっており、準大賞作に負けず劣らず将来性が楽しみな作品ばかりだった。期待賞の『芋恋』はいっそ清々しい程ばかばかしさに振り切った作品。アクセルの踏み加減は調整が必要だが、描きたい事を描き切る蛮勇さは今後も大切に。
当賞ではジャンルを問わず、「自分らしさ」を押し出した力作をお待ちしております。