月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2017年10月期

2017年10月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第22回募集、期待賞1作品、努力賞7作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(10月31日締切分)

完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『365日のパレット』

『365日のパレット』

市川つつじ

あらすじ

3ヶ月前、高校受験当日に緊張によって体調を崩してしまった小瀬天馬は、一人の女子生徒に介護される。小瀬は名前も知らないその子に一言お礼が言いたくて毎日放課後に、他校に足を運ぶのだが…。

作品講評

男子高校生の恥じらう姿や、切ない表情などが魅力的に描かれており印象に残る作品であった。またネームの切り方が巧みで、気持ちよく物語を読ませていた。一方で、全体を通して物語のテーマが絞りきれていないように感じる。純粋な男子高校生の恋愛模様を描く作品なのか、キャラの魅力で読者に喜んでもらう作品なのか、これからは作家自身が何のテーマで読者に楽しく読んでもらいたいのか意識した作品作りをしていって欲しい。今後の活躍に期待する。

受賞作品を読む

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『西の森のテオドーラ』

『西の森のテオドーラ』

眠樹あめ

あらすじ

狼のラウールに拾われ、美しく成長した少女・テオドーラ。彼女の出生にはある秘密があって…。

作品講評

画面作りや言葉選びから世界観を醸し出していた点が好印象。一方で、伝えなければいけない情報が多いにも関わらず、読者に行間を読むことを強要しすぎている傾向が見られた。これは要素を詰め込みすぎていることも原因だろう。加えて、主題である獣と人との百合関係に、そのキャラクターの関係性ならではのものが描かれていないことも課題。読みやすさの面でも題材選びの面でも、読者に目を向けることが大切である。また、画力を求められる作風なので、模写など練習を重ね、基礎力を研磨して欲しい。

『マリコと金魚のうた』

『マリコと金魚のうた』

深山朱(29)

あらすじ

恋人であるマリコを失って自棄になっていた主人公は、怪しい煙草屋から「マネ金魚」という金魚を購入したが…?

作品講評

くっきりとした線や安定感のある作画で上手いと思わせる画面を作る。キャラの表情が魅力的なのも好印象。一方でストーリーやネーム部分にはもったいなさを感じることが多々あった。内容はしっかりまとまっているものの、独創的なストーリーライン、大コマで切り取っているショットなど、違和感がまだ武器にはなりきれていないので、あと一歩読者目線に立って考えてほしい。

『二人の行く果てに』

『二人の行く果てに』

池上ユウヤ

あらすじ

荒廃した世界で旅を続ける機械人形のユニとピノ。人間と機械人形が暮らす理想郷を探す旅の終着点は……?

作品講評

作画・キャラクター造形・ストーリーとも、安定して丁寧に作り込まれており好印象。ただそれは、突出して目立つ個性がないことと表裏一体だった。地力があることは伝わる原稿だったので、次は完成度にこだわって小さくまとまるよりも、こだわりやロマンを前面に出して読者をワクワクさせて欲しい。描き手だけでなく読み手をも満足させることはプロアマ関係なく重要。現時点での安定に留まらず、最前線へ駆け上がって欲しい。

『よるのこえ』

『よるのこえ』

戌原つくも(24)

あらすじ

幼い頃に妖怪に拾われた少年ヨル。妖怪の仲間として認めてもらいたいヨルを、育て親の妖怪ロロは人里に帰すべきか悩むが……。

作品講評

ドラマを紡ぐ登場人物同士の関係性やエモーショナルな演出など、幅広い層に好まれそうな可能性ある作風と強く感じた。だが「描き手が意図したイメージを、どれほどの精度で表現できているか」という点において非常に惜しい。もう一歩物足りないページやストーリーの構成の甘さへの意識改革が必要だが、現時点での最優先課題は画面の荒さの緩和。ざくざくした描線は味にもなりうるが、今はまだ「雑」と受け取られてしまう。太線と細線の使い分け、質感ごとのタッチの差など、メリハリを意識して画面に華を付けて欲しい。

『プランター』

『プランター』

柳葉イオ(25)

あらすじ

人間を異形化させる恐ろしいウイルスが蔓延する世界。寝たきりの母を守ろうと空き巣をしながら生計を立てていた少年・ティルは、偶然謎の男と出会い…。

作品講評

丁寧な描き込みと演出力の高さが受賞に繋がった。しかし構成力はまだ発展途上。設定を壮大で面白いものにしようという努力は見られるが、キャラ描写の詰めが甘いため、ストーリーの中盤辺りから視点が曖昧になり、伝わりにくい作りとなってしまっている。主題を過不足なく読者に伝えるために、ページ内でどう上手くストーリーを組み立てるかが今後の課題になる。また「絵柄のアクが強い」という声も多かったが、こちらは改良し大衆化できれば強い武器になるだろう。

『水温む』

『水温む』

ウエハラシホ

あらすじ

ある学校の植物室に足しげく通う少年。そこには、自分よりも永い時を生きる少女・蓮の葉がいて…。

作品講評

間のとり方が良く、感情の機微が丁寧で読みやすいネームであったことが評価された。一方で、作画に雑さが見られる点は大きなマイナス点であった。自分が描きやすいように描くのではなく、読者が読みやすくなるように作画にあたって欲しい。また、異世界であるならば読者に作品世界の情報を伝えていかないと、キャラクターの心理状態が共有しにくくなってしまう。自分の得意分野と合う題材選びも考えていけるとよいだろう。

『奇ッ怪博物館』

『奇ッ怪博物館』

寺田寛子(33)

あらすじ

そこは奇ッ怪なモノが集まる博物館。ある日訪れた客が持ってきたのは、切っても焼いても元通りになる、まさしく“奇ッ怪”な肉片だった…。

作品講評

前回と同様に読ませるネーム。反面、雑さを感じさせる荒い線が目立つ。ストーリー展開はホラー要素が活きるお膳立てが出来ている一方で、画面の仕上がり具合が影響して見せ場が恐怖心を煽るものになっておらずもったいない。怖い話が怖いシーンに、不気味な話が不気味なシーンに見えるよう、とにかくストーリーに説得力を持たせる画面作り・演出を心掛けて欲しい。くどくなるが、絵を丁寧に描くことが課題。

最終選考作品

『読まない男』(完成原稿部門)

かにコロ(26)

『田舎暮らし』(完成原稿部門)

ひまち。

『アニマメラ』(完成原稿部門)

三機

『奪われた日体験』(完成原稿部門)

いしゆき

『28歳OLの異世界探訪』(完成原稿部門)

維原ひめ

『演劇ガール』(完成原稿部門)

青山実夕(18)

『花の世界』(完成原稿部門)

さいとう やさこ(20)

総評

期待賞1作品、努力賞7作品選出。小粒ではあるが、先の楽しみな作品が散見された今回。

期待賞の『365日のパレット』は非常に可愛らしく、嫌味のない絵柄が目を引いた。また、画面・構成的にも無駄がなくて、すっきりと読みやすく好印象。それゆえ感情の機微がすんなり理解でき、一人ひとりのキャラクターの魅力を引き立てていた。反面『何を見せたいのか』がぼやけてしまっている。読者を意識して主題を絞った作品で勝負しよう。

努力賞の7作品は各自、自身の作家性をある程度理解した上での作品づくりが出来ている点は非常に良かった。そうすることにより、各作品とも取り組むべき課題が浮き彫りになっている。一足飛びでの成長はなかなか難しいので、問題点を分析し、ひとつひとつ消化していって欲しい。

当賞では「自分らしさ」と「読者を意識」を創意工夫で両立させた力作をお待ちしております。

11月末〆切の発表は
2017年12月30日!