月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2017年11月期

2017年11月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第23回募集、奨励賞2作品・努力賞1作品、チャレンジ部門入選1作品・努力賞2作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(11月30日締切分)

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『鏡面の鉢』

『鏡面の鉢』

田口ともは(26)

あらすじ

頭部に鏡がはめ込まれた奇妙な生物を研究することになったエイコ。研究のため観察を重ねていく内に…。

作品講評

目を引くデザインの生物や映像的なコマ割りなど、読ませる雰囲気作りがよく出来ていた。一方で、主題の伝え方が冗長で、印象に残る決定的なシーンやセリフを作り込めていなかったため、ページ数が多いわりにオチの納得感が薄れてしまっていた。短くまとめるためには、作品のテーマやキャラの個性などが一発でわかるシーンを作っていく必要がある。そして、それは作家の個性の表出にも繋がることでもある。自分の好み問わず面白いと感じる作品がどうして面白いのか、その分析を通して自分の個性を濾過していって欲しい。

『巨人のオルゴール』

『巨人のオルゴール』

管野遼(23)

あらすじ

遭難していたところを巨人に救われた少女クロハ。一人ぼっちだったクロハは巨人と過ごす日々に心癒されていく。だが巨人はある奇妙な行動から徐々に衰弱し始め……。

作品講評

巨人や世界観の魅せ方、描き込みの密度などは現時点でも光っていた。人物は造形、心情など各描写とも今一歩だが、伸びしろ込みで期待される部分。読み手を惹きつける筆力は立派な武器なので、さらに長所を研ぎ澄ましていってほしい。ストーリー面では、クライマックスで読み手の感情を揺さぶるつくりになっているので、それまでの起伏の付け方が課題となる。何を第一に魅せるべきかを突き詰め、それに沿った演出を心掛ければ、ストーリーの膨らみやまとまりも強化されていくはず。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『七つ星の魔法使い』

『七つ星の魔法使い』

稲乃友芽子

あらすじ

魔法使いの証である「星紋」がまだ表れていない魔法使い見習い・キャンディ。父の勧めにより「六つ星の魔法使い」に弟子入りすることになり…。

作品講評

綺麗な描線と豊かなキャラの表情、まとまりのあるストーリーが評価され受賞と相成った。ただ、絵柄通りの低年齢層向けのストーリー運び、キャラ作りになっており、今後はどのように読者層の年齢を上げていくかが鍵となる。シリアスな要素を含むには?優しい物語でも大人向けにするためにはどうすればよいか?そういった視点で意識して青年向け漫画のインプットを増やして欲しい。また、絵に関しても作品のリアリティの底上げに繋げるため、背景や小物を描く意識を上げ、画面の情報量が増して欲しい。

チャレンジ部門:入選賞金3万円

『たんぽぽ』

『たんぽぽ』

nobi(27)

あらすじ

ここ最近、不可解な行方不明者が相次いでいた。宇宙人の侵略だ。正義の男・科捜研の蒲公英はとある施設の調査を依頼されるが…。

作品講評

何より、アーティスティックな作画の力が目を引く。商業向け作品として画面作りをどうするかの試行錯誤は必要だが、その華のある絵力を伸ばしていってほしい。物語の面は、ユニークな発想とその紡ぎ方が面白い。ただ、話の筋は伝わるものの引き込み方が粗く、話が進むに連れ置いていかれる読み手が出て来る印象。読む側に寄り添った上で振り回すような、下準備のような繊細さが出てくると良いかと。紹介画像に抜粋した扉絵のインパクトは抜群だった。

チャレンジ部門:努力賞賞金1万円

『マツリカ』『栞』

さらに2作品が同時受賞!

『マツリカ』『栞』

nobi(27)

あらすじ

アイドルのマツリカ。彼女には悪党を捌く裏の顔が…(マツリカ)/霊が見える栞は今日もそのコブシで悪霊を昇天させ続け…(栞)

作品講評

チャレンジ部門・入選に続き、本2作品が努力賞に選出。『マツリカ』はポン刀女子高生という浪漫が、『栞』は物理で祓うというキャラが魅力的で良かった。ただ、アイデア見せだけで話が終わったり導入での情報出しが雑だったりと、粗い部分は要改善。見せ場はコマを大きく使えているが会話シーンなどで途端に詰め込み気味になるのも注意を。大きく羽ばたくため、強固な基礎を養う根気と自身の個性を活かす知恵を大事に、研鑽を積んでいってほしい。

最終選考作品

『魔女芽ぶく』(完成原稿部門)

空樹ニゲラ(20)

『INファイター』(完成原稿部門)

谷州ケンイチ(28)

『やさしいイリス』(完成原稿部門)

保科彗(19)

総評

奨励賞2作、努力賞1作、チャレンジ部門入選1作・努力賞2作。
上位の賞には届かないものの、各自の実力の高さがうかがえる漫画賞だった。

奨励賞の2作はともに、自身の強みを理解した上でアウトプット出来ている部分に好感を持てた。『鏡面の鉢』は自然とページをめくらせる力を持った設定と読みやすいネーム運び。『巨人のオルゴール』は物語と世界観に説得力を持たせる画力とその密度。だが、さらに上の賞を目指すためにはそれら以外の部分の強化が必要。総合力を底上げしながら、自身の武器をさらに研ぎ澄まして欲しい。

努力賞、チャレンジ部門3作は良くも悪くも作家性が目立った作品。曖昧な読者像ではなく、具体的な読者を想定した上で「より多くの読者に」「読んでもらうためには」どうしたらいいか、という事を常に考えて取り組もう。

今後も創意工夫を凝らした、多岐に渡るジャンルの投稿をお待ちしております。

12月末〆切の発表は
2018年1月30日!