2018年3月期
第27回募集、入選1作品・期待賞4作品・奨励賞1作品・努力賞4作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(3月31日締切分)
賞金30万円
受賞作掲載 + 読切1作分の掲載確約
『ヘッジホッグとリトル・レッド』
上戸 亮
あらすじ
肉体の機械化が医療として一般化された社会。病院から逃げ出した少女・エミーは、ジャックと名乗る自立思考型ロボットのハリネズミと出会う…。
作品講評
非常に緻密で丁寧な画面作りは圧巻の一言。ただ、圧倒的な作画力に画面の情報整理が追い付いていない印象がある。1ページごとの画面の情報密度が高く、カメラがキャラクターに寄りがちなので、一呼吸置いて全体の状況を俯瞰できるような引きのコマを増やせば、さらに読みやすくなるだろう。また、キャラクター同士の関係性やロボットの戦い方も、まだ掘り下げられるはず。今後、さらに高いレベルの成長を遂げ、連載を目指してほしい。
賞金5万円
受賞作掲載
+キャラクター賞1万円
『名を持たぬけもの』
戌腹つくも(23)
あらすじ
家族を喪った洸一郎は、傷を負い衰弱した黒犬を拾う。孤独な少年と秘密を抱えた犬、ひとりぼっち同士の同居生活。
作品講評
ぎこちなくも紡がれゆく絆を、テーマに合致した画風で描かれており好感。二人だけの世界に流れる空気感を楽しみつつ、繊細な心情描写に浸っていける。ドラマ面ではやや雰囲気を重視しているためか、爽快な読後感からは離れてしまった印象も。洸一郎の抱える問題が明確に解消されるわけでも、主人公としての成長を示すわけでもないので、ラストシーンはある意味で唐突かつ半端な終わり方といえるかもしれない。キャラクター任せにシーンを連ねるだけでなく、感動と共感を呼び込むための意味づけを行う意識を持って取り組んでほしい。
『Seeker’s』
司馬戌湧(30)
あらすじ
遺跡の探索中に消息を絶った父を追う、新人の遺跡調査員ジプシー。唯一の帰還者である双子の兄ルディアも同行するものの、兄弟の間には深い溝が……。
作品講評
高い画力に裏打ちされた臨場感とアクションの迫力が目を惹く力作。高い画面密度の中にあって、キャラクターが溶け込まないバランスを保っている点も力量を感じさせる。ただ作画やキャラクター描写の濃さはクドさと表裏一体でもあるので、現在の流行との調律も必要か。作劇面ではドラマを作ろうという気概も感じる一方、兄弟の確執や職業設定をうまく扱えていたかという点で惜しさが残る。キャラクターを立てたうえでワクワクする演出を作っていけば、持ち前の武器も十二分に活かしていけるはず。
『フラワードットメタリック』
貞森裕也(28)
あらすじ
「3年後、宇宙人が地球を滅ぼしにやってくる――」。とある科学者による言葉が現実のものとなる。耳を傾けない愚かな民衆に呆れ世界を諦めた男と、悪夢のような悲劇に見舞われ人生を諦めた少女。そんな二人が出会い…。
作品講評
細部に甘さの残る画面、ストーリーに寄り気味な人物造形など、まだまだな部分は多い。だが、何よりも大事な、読む人の心を動かす「熱さ」があり、素晴らしかった(水上悟志先生のようなストーリーテラーの持つ熱というか)。この作品が云々という話ではなく先を見据えての助言だが、振りが上手く演出力があるからこそ、小手先にならないキャラクターの掘り下げをより意識してほしい。しっかりとした目標設定と、それを成し遂げるための計画を立てて、担当編集とともにデビューに向けて粘り強く頑張ってほしい。
『声に焦がれて』
吉岡さぐる(23)
あらすじ
四ッ芦高校放送部が毎週送る『四ッ芦ラジオ』。その放送を担当する“一匹狼”の声は生徒、先生問わず人気を博している。その放送を聞いた、人と話すのが苦手な新入生・宇佐見もまたその声に憧れていたのだが…。
作品講評
放送部を舞台に可愛らしい主人公や、無表情で怖い先輩など、そのビジュアルを生かした物語や、個性的なやりとりが印象に残った。また丁寧な背景描写やトーンの処理をしていたのも好印象。しかし大事なシーンでのキャラの表情が、読者を魅了するには力不足。また物語の面では全体的に主人公が受け身すぎており、問題を抱えていたがあまり成長ぶりが見れず勿体なかった。まだ勉強する事は多いがさらなる成長、活躍に期待している。
賞金3万円
『目覚めのリフレイン』
みやまけい(21)
あらすじ
シンガーソングライターを目指しているものの、人前で歌うことが苦手な花追ちかげは、ある日「神様」と名乗る女性に出会う。「神様」は元の世界に戻るため、願いを一つ叶える代わりに自殺の手伝いをして欲しいと言い出し…。
作品講評
「神様」の正体に迫る終盤の展開に感情が揺さぶれられるものがあった。ただ、序盤~中盤の伏線の乏しさや淡々とした話運びから、終盤の展開を期待させるものがなく、せっかくの良いシーンを盛り上げきれていないように感じる。演出や構成を意識して、序盤から読み続けたくなる見せ所を作っていこう。淡々とした印象は作画にも要因があるだろう。期待感が持てる描線なので、華を求めて作画にも研磨して欲しい。
賞金1万円
『円と人形』
さい(30)
あらすじ
美容師という夢と職を失い、ニートになった桧野円。田舎に戻った彼は、神社に置いてあった髪がボサボサの日本人形を見るに見かねて、ヘアセットを試みるが―…?
作品講評
絵はまだ粗削りではあるが、テンポ良くサクサク読めるネーム。軽いノリと重々しい日本人形とのギャップがありユニークで面白かった。ただ、人形の内面的な可愛さは表現出来ているものの、まだビジュアル的な不気味さを上回っていないせいか、もっと可愛く見えるネタを盛り込んでほしかった。読ませる構成力があり、アイデア面は良いので、今後さらなるキャラの掘り下げや、作品をより魅力的にするためのネタやコマ割りなどの工夫を期待する。そして何よりも画力向上を目指してほしい。
『DIVE』
桑原たもつ(22)
あらすじ
退屈を持て余す響と、いつも不機嫌そうな沙花。誰ともつるまなかった二人の、暇つぶしのような、しかし心地よい交流。だが沙花はある葛藤を抱えていて……。
作品講評
登場人物の繊細な表情の変化など、女子同士の奇妙な友情から生まれるニュアンスが随所で香る作品だった。ただし、キャラクターの個性や心情の描写は全体的に物足りず、雰囲気頼りだった。キャラクター同士が中心となるお話なのに、関係性が変化してもドラマが動いてもどこか上滑りしてしまっていたのは惜しい点。また、作画の向上は前作同様の課題となる。全体的に雑然とした印象が残るため、熱意を持って取り組んでいってほしい。
『社会人8年生 5月号』
如月きさ
あらすじ
強迫観念に駆られ、リア充グループに入ろうとする女子高生・いこい。彼女の元に届いたのは、不思議な月刊誌で…。
作品講評
ペンタッチの繊細さと物語を形作るための能力にポテンシャルが認められ今回の受賞に繋がった。その一方で、作画とネーム運びのそれぞれに難が残る。例えば、明暗バランスを意識しながら画面を作れば読み手が作品に入り易くなるし、型に嵌まり気味なネーム運びから逸脱すれば、構成上の粗は目立たなくなるだろう。今後は、自分の武器をしっかりと保ちつつ、全体の完成度の底上げを期待する。
『ノ輪』
青波
あらすじ
ガールミーツ…熊!? いきなりクマに襲われる主人公を助けたのは…?
作品講評
絵柄的にかわいらしく、また丁寧な印象だが、昨今のマンガ表現を積極的に取り入れるとさらによくなるだろう。ただストーリー面やキャラ面での薄さが目につくのがネックで、あまり読後の記憶に残りにくい。また話作りにおいて、起伏を意識してもう一捻りほしかったのも残念な所。方向性としては王道的なつくりよりも、絵柄を逆手に取って、毒があったり後味が悪い作品なども見てみたいところ。
『黄昏時の明星』(完成原稿部門)
静寂(23)
『守りし人』(完成原稿部門)
さん.
『チクタク』(完成原稿部門)
ウチワ
『カガリ』(完成原稿部門)
水井秀彰
『吸血鬼と友達になるには』(完成原稿部門)
ウースケ
『お兄ちゃんと一緒!?』(完成原稿部門)
うや
『とあるめし屋の事情』(チャレンジ部門)
白飯かぶき(30)
『恋花物語 -儚く咲き溢れては散るものよ-』(チャレンジ部門)
藤紫紅(17)
入選1作、期待賞以下9作選出。
当賞史上初と言えるほどレベルの高い作品が揃った今回。
入選の『ヘッジホッグとリトル・レッド』。著者の上戸氏は初投稿から着実にステップアップし、晴れて今回の結果となった。画力も演出も申し分の無い、高いレベルで仕上がっており、編集部一同息を飲んだほど。反面、画面に勢いがありすぎるが故の分かりにくさもあるので、読者目線での情報整理が出来るようになればまさに鬼に金棒だろう。
期待賞以下の作品は非常にバラエティーに富んでいた。各々が各々の作風での強みをしっかり理解し創作した上で、これだけ毛色の違う作品が選出されたのだから、そういった意味でも今回は実りの多い月だったと言える。ただ、それ以上でも以下でも無いと言うのが全体的な印象である。さらにもう一歩踏み込んだ、プラスアルファの魅力を盛り込んだ作品づくりを意識して欲しい。
今後も、自分の実力の一歩先に挑戦した作品の投稿をお待ちしております。