月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2018年5月期

2018年5月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第29回募集、入選・期待賞・奨励賞・努力賞、各1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(5月31日締切分)

完成原稿部門:入選賞金30万円
受賞作掲載 + 読切1作分の掲載確約

『悶絶躄地 Stupid Sanction Story』

『悶絶躄地 Stupid Sanction Story』

降部 夏菜巳(26)

あらすじ

主人公は父親の知り合いの所有する孤島で出会った少女と過ごすうちに…?

作品講評

緻密なタッチは選考で高評価だったが、キャラクターが多く今一つ話に集中しづらいとの声も多かった。特にサブのキャラクターにもデザインがあり、作者の中でのバックボーンを感じさせたのも惜しかった点である。投稿者の方には注意してほしいが、やはり短編や読み切りであらわしきれない物語やキャラクター、世界観はどうしても存在するので、短編にそぐわない大きさになってしまったときは、すっぱり諦めて新しく短編の「うまみ」といったものを活かしきれる作品を作っていただきたい。ただ、今回はそういったストーリー面での欠点を補える画力と作風が評価された。ぜひ今後に期待したい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『トリコ×トリコ』

『トリコ×トリコ』

望月カイコ

あらすじ

運動や勉強が苦手で、人ともあまり話せない真倉小雪は、美人で性格もよく、誰からも好かれる水重るりと幼馴染。そんな自分と正反対のるりが小雪の唯一の自慢だった。しかし、ある日小雪が同じ学校の女性の先輩に告白され…。

作品講評

「読者を驚かせよう」とする試みがあり、素直に楽しめる作品。物語中盤までと終盤にかけてにテンションの落差は心地よさすら覚える。絵については画面づくり含めフェチズムを感じ、特にキャラの表情関しては細かいニュアンスをしっかりと表現できており、この物語の質を確実に底上げしている要因かと。今後は自身の得意とする分野・部分以外にも意識を回せられるようになると、作品全体のクオリティが向上すると思われる。苦手意識の克服を目指してもらいたい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『私のアイドル』

『私のアイドル』

池田ルイ(21)

あらすじ

デブス故に虐められてきたタクミは美人なモデルの親友・ハルを誇らしく思う反面、最近彼女にパシリにされ、友情に疑問を感じている。ハルは変わってしまったが、タクミはかつて彼女が才能を認めてくれた、ファッションデザイナーへの夢を捨てられずにいた。ある日、ハルに「洋服ブランドを立ち上げる」という話を聞かされるが…。

作品講評

読者を惹きつける構成力が魅力。ただ、“等身大の人間”を表現しようという気概が見られるものの、人間の陰の部分のみスポットを当てているので葛藤が無く“作られた人間”感が強く出てしまっている。人間は陰陽両方の部分を持つからこそ葛藤をし、それが他者には魅力的でリアルな人間に見えるものなので、研究してみてほしい。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『好きな人』

『好きな人』

桜園のあ(24)

あらすじ

幼い頃、ひとり寂しく帰る女の子・夜空に、唯一声を掛けてくれた男の子・樹。夜空は、彼から貰った髪留めを高校生になっても大切に身に着けていた。しかし突然、樹に彼女が出来できてしまい…。

作品講評

絵柄の可愛さを生かした、キャラの狂気を魅せる物語の構成が面白かった。特にキャラの性格を表す仕草や表情の描写が良い。しかし、全体的に画力不足なのが勿体ない。特に背景描写の描き込みが甘く質感が弱い。また所々パースが狂っているのが気になった。物語の面では、キャラの狂気性を紹介しているだけになりがちなので、クズ男が好きな女の子であれば、そこに読者が共感できるエピソードをいれられると尚良かった。今後の成長に大いに期待している。

最終選考作品

『「パクス・アヴァロニカ」なる道』(完成原稿部門)

菓山(30)

『あのうみも思い出も』(完成原稿部門)

藤堂くれは(14)

『きらきらひかる地の星たちよ』(完成原稿部門)

陽(20)

総評

入選1作品、期待賞以下3作品選出。
将来性が楽しみな作品がいくつも見られた今回。

入選の『悶絶躄地 Stupid Sanction Story』は、そのネーム運び・台詞回しにただならぬこだわりを感じる。画風も相まり、ページをめくらせる事に於いて重要である「雰囲気作り」が抜群に上手かった。とは言え、そのこだわりが万人向けかと言えば否。読者をより広い視野で意識し、構成の分かりやすさを心がければ、即戦力レベルの筆致を生かした秀作を描く事が出来るだろう。期待賞の『トリコ×トリコ』は後半のどんでん返しに息を呑む意欲作。もちろん後半は間違いなく面白いのだが「後半まで読んでくれるだろう」前提で作劇していないだろうか。ストロングポイントのみでなく、それ以外の部分も強引に読ませるような仕掛けも取り入れて欲しい。

期待賞『私のアイドル』、努力賞『好きな人』はまだまだ荒削りで、ワンアイデア一点突破の印象。奇しくも、両作品共に人間の負の一面を描いた作品ではあるが、それだけにとどまっている。アイデアを踏まえた上で広がるドラマを見せて欲しかった。読者が求めているのはその先なのだから。

今後も読者に「魅せる」事を大いに意識した作品の投稿をお待ちしております。

6月末〆切の発表は
2018年7月30日!