月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2018年6月期

2018年6月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第30回募集、佳作1作品・期待賞1作品・奨励賞3作品・努力賞1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(6月30日締切分)

完成原稿部門:佳作賞金10万円
受賞作掲載

『カットスロートストラット』

『カットスロートストラット』

タバタグランドキャニオン

あらすじ

過酷な環境と相次ぐ内戦により無法地帯と化した辺境の町に一人の男が流れ着いた。男の名はリカルド。荒くれ者の大佐率いる盗賊団が暴虐の限りを尽くす中、病気がちのヘレンと幼きアマーリア姉妹のため、リカルドは立ち上がる…!怒涛の新ウエスタンバトル!

作品講評

序盤から引き込む雰囲気づくり、次々と展開するテンポの良さ、溜まったフラストレーションが一気に解放されるバトルの爽快さなど、高水準でまとまっていたことから、高評価に結びついた。ただ、全体のバランスが取れているだけにキャラクターの魅力や題材・モチーフの掘り下げ、セリフの選定には物足りなさを感じた。今作の勢いは維持しつつ、次回はさらに振り切った魅力を追求してほしい。

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完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『お嬢サマは奮闘スル!』

『お嬢サマは奮闘スル!』

カコベン

あらすじ

相手の心が視えてしまう高宮セリナ。普段は優等生を演じていたが、不思議な住人の集う下宿寮に入ったことで調子が狂い始め……!?

作品講評

黒髪も艶やかな美少女造形や賑やかに立ち回る登場人物など、キャラクター描写において評価を集めた作品。一方ストーリーやテーマといった面では、奇を衒わず丁寧に王道を踏みしめている一方、ページ分量の多さやテンポ感は発展途上という印象が拭えない。キャラクターが中心となって注目を集める作品なので、ドラマは組み立てつつも軽快な読み味は求めていきたいところ。即戦力級のキャラクター描写を、テーマや企画性でラッピングして押し出すことで、最も魅せたい要素を活かす構成を見出して欲しい。

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完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『LAST STAND ACTION』

+特別掲載

『LAST STAND ACTION』

谷州ケンイチ(29)

あらすじ

ここは生と死の間。役者になるという夢があったが志半ば病死した主人公は未練を流している最中、そこに迷い込んだ妹・ルシラを見つける。主人公は別人に化け、兄に会いたがるルシラを現世に帰そうとするが…。

作品講評

コマ割、シーンの重み付け、構図などの演出が考えてなされており、会話劇になりがちな構成に動きを持たせられている。序盤、分かりづらいシーンなどが所々あるのと、内容に対してページ数や展開などが冗長に感じられてしまうのでそこもブラッシュアップしていってもらいたい。場所の設定上、シンプルな背景が続いてしまうため絵面的なメリハリも弱いので一考の余地がある。今後の題材次第ではあるものの、セリフ回しは年齢的な意味で少年向けの雰囲気が抜けきっていないので、読者に合わせて引き上げてほしい。

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『エヴェリの種』

+特別掲載

『エヴェリの種』

鐘田ハルアキ

あらすじ

自身の生命力を分け与えることができる「エヴェリ」の一族は、その特異な力のために襲撃される。一族唯一の生き残り・ギンカは、世を忍びつつ、離散した妹・ハクを捜して旅をしていた。ギンカは、道中立ち寄ったとある街でスラムの少女・ネリと出会い、妹の目撃情報を得るが…?

作品講評

作画に関してはまだバラツキがあり、後半は息切れを感じるものの、魅力的なカットも散見しており、伸び代込みで良い方向性なので期待したい。描写が細かすぎるところがあり、全体の情報量に対してやや冗長な印象を受けるので、次回はもっと大胆に削ってネームの切り方にメリハリをつけるとともに、画面映えする演出の向上を目指してほしい。

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『しろつめくさ』

『しろつめくさ』

樋田よしなり

あらすじ

祖国の復讐のため、敵国にて身分を欺く舞妓・櫻。ある日、仇を討つ機会が訪れたが、その為には恩人である葵を殺さなければならなかった。惑う櫻、彼女が選んだ道と迎えた結末とは…。

作品講評

絵柄や作画の雰囲気などがしっかりしており良かった。細かいところでは不安定に感じるところもあったので、そこは更に磨きをかけてほしい。シーンを見せる意識は感じたので、その演出を物語に丁寧に落とし込んでみてもらいたい。オリエンタルな作風なので背景などの画面描写は情報多めのものが欲しい一方で、仕上げがやや淡白に感じられるので、そのあたりも意識してほしい。内容としてはオチがバッドエンドなので、であればそこに意義を作れるかが本作における課題であり、翻ってハッピーエンドにおいても、何故そうなったのか・そう作ったのかを提示できると良い。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『Give me Smile!!』

『Give me Smile!!』

枝村美珠希(19)

あらすじ

真之輔の幼馴染の花恵は、交通事故で片脚を失い、同時に笑うことを忘れてしまった。真之輔は、花恵がかつて大好きだった「よさこいソーラン」を自ら踊ることで、彼女の輝く笑顔を取り戻そうと奮闘する。若さと情熱溢れる青春ラブストーリー!!

作品講評

「よさこいソーラン」というフレッシュな題材選びと爽やかな青春ドラマに好感が持てる内容だった。19歳という若さにも関わらず、全体をまとめあげる構成の妙があり、確かな才能を感じる。一方で、題材を活かしたダイナミズムは今一つものたりない印象。次回はぜひ画力と演出力を磨いて再挑戦してほしい。

最終選考作品

『義足の花火師』(完成原稿部門)

はらまこ(21)

『ヒーローパレット』(完成原稿部門)

雅(21)

『ようこそ!天国へ』(完成原稿部門)

石原遊(29)

総評

佳作1作品、期待賞以下5作品選出。
投稿を重ねる実力派の作品に新星が食い込んできた今回。

佳作の『カットスロートストラット』。その筆致やネーム運びに於いて高い実力を伺わせ、今回の受賞と相成った。面白ければ細かい事はどうでもいいんだよ、と言わんばかりの勢いある展開は清々しささえ感じられ、非常に好感を持った。反面「何故ウエスタンなのか」と、企画自体に疑問が残る。表現したい事と題材・ギミックがもっと高い水準で融合する作品を是非読んでみたい。期待賞の『お嬢サマは奮闘スル!』は非常に初々しい作品。足りない部分は多々あるが、キャラクターの造形や展開の丁寧さは初投稿ながらも奮闘しており、高評価に値した。次は短いページ数で読者の気を惹くようなテンポの良い作品に期待したい。

奨励賞の2作品『LAST STAND ACTION』『エヴェリの種』。作画にはムラがあるものの、掲載の許容範囲であったため特別掲載とした。『LAST STAND ACTION』は挑戦的な題材を演出の力でねじ伏せようとしたが、もう一歩足りなかった印象。もっとシンプルな題材を選んでも良いのでは。『エヴェリの種』は丁寧で良いのだが、<起こった事を全て描く>という新人が陥りがちな、ページ数が無駄に多いネーム。展開の取捨選択をし、テンポを上げれば、目を引く演出に割けるページも増えるだろう。

今後も読者目線を忘れない作品の投稿をお待ちしております。

7月末〆切の発表は
2018年8月30日!