2018年7月期
第31回募集、佳作1作品・期待賞1作品・奨励賞1作品・努力賞1作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(7月31日締切分)
賞金10万円
受賞作掲載
『歴史庁みんなの歴史課』
二ツ森曜子(26)
あらすじ
人類滅亡まであと5年。思い残すことがないよう終活を終えた新社会人・伊勢宮たま子は、歴史庁みんなの歴史課に配属される。そこで愛らしい大容量記録ロボット・出雲と出会い…。
作品講評
可愛らしい絵柄でキャラクターが生き生きと物語を進め、随所にこだわりがある点が高評価だった。一方、主題が複数あり押し出したいものはなんだったのかぼけてしまったように感じる。それが定まると何を描けばよいのか先鋭化されるだろう。また、設定や画面作りにも少々粗が見られ、詰めが甘く感じられる。そういったマイナス面もあるが、それらのハードルは決して高いことではないはずだ。期待の表れであることを受け止めて、連載に向けてぜひ頑張ってほしい。
賞金5万円
受賞作掲載
『リリーの冠』
舟都あゆみ(24)
あらすじ
中学生のりりとすみれは親友同士。しかし、すみれは心の裡でりりに劣等感を抱えていた。ある日、すみれは同級生の橘に告白される。橘のことを何とも思っていなかったすみれだが付き合うことに…。
作品講評
思春期特有のセンシティブな感情、心の揺れ動きを演出や構図でしっかりと表現されている意欲作。作品全体の空気感の作り込みもよく、映画のような間のとり方と光陰の付け方が印象的だった。一方で、所々荒れている描線が非常に残念。これを作風に昇華させるためにも、今後はより一層丁寧さを意識して作画してほしい。
賞金3万円
『愛しき罪びと』
太福ユトル
あらすじ
姦通罪によって死刑を課せられる時代。女ながら顔色一つ変えずに死刑を執行するブランシュは、隣人にも実の妹にさえも非難を浴びせられ、人知れず苦悩していた。そんな彼女の唯一の理解者である男爵夫人・アドリエンスと逢瀬を重ねるが…。
作品講評
整ったペンタッチ、丁寧にドラマを紡いだ点が評価を得た。一方、印象的なカットを作れているが、構成演出・画面ともにメリハリが薄い印象があり、そのカットが有効に働いていない傾向にある。また、苦悩を表に出しにくいキャラだからこそ、どのように感情を演出するかもう一段階上のレベルを求めていきたいところ。題材選びによって活きてきそうな個性が感じられるので、次回作に期待する。
賞金1万円
『にじいろラブフォーム』
さんぽっぽ(26)
あらすじ
腐女子の虹川さんは、文芸部で男子のかわいい後輩たちに囲まれてイケない妄想がとまらない!だがふとしたことから後輩の一人とカラオケにいくことになって…?
作品講評
テンポのよさとお約束の展開が心地よい。計算された構成部分は好印象だったが、キャラ部分では、セリフの多さが目立ち、作者の用意したプロット通りの動きに終始してしまっていた。また、企画としてのデザイン部分で紋切り型なものが多く、こちらも予想を上回らないという点での低評価が目立った。ネタとしてキャッチーだが、さらに今一歩踏み込んだ企画を考えてみてほしい。
『双子の剣』(完成原稿部門)
森本紫織(24)
『光はさすか』(完成原稿部門)
保科彗
『幼なじみ、素直になれない』(完成原稿部門)
鳩田(19)
『先輩がいつも死んでたまるか』(完成原稿部門)
摂田鴨(19)
『自然な河童の対処法』(完成原稿部門)
さい(22)
『SHADOWS』(完成原稿部門)
マナ(26)
『三つ子の妹は、お兄ちゃん依存症。』(完成原稿部門)
隣の飼いケルベロス(26)
『〇〇なこぐまさん』(完成原稿部門)
豊後友和(18)
『世にも奇妙なマラソン部』(完成原稿部門)
八月康(24)
佳作1作品・期待賞以下3作品選出。
荒削りだが、実力の高さが伺える作品が多かった今回。
総合的にクオリティが高かった『歴史庁みんなの歴史課』が満場一致で佳作受賞と相成った。可愛らしく味のある描線で描かれる絵柄もさることながら、描きたいものを全て詰め込んだにも関わらず、構成として上手く(力技の部分もあるが)まとめた事を評価したい。もちろん、全部入りにした事で「売り」の部分の破壊力が弱まったり、多少の粗や歪が出ていることは否めない。だが、そこも味として昇華出来ると思って執筆に邁進して欲しい。期待賞の『リリーの冠』は思春期特有の連帯感と劣等感が同居する様を抒情的に描いた意欲作。絵柄や画面、演出も相まって非常にノスタルジーを感じる作品に仕上がっていた。表現力に関しては一定の評価をしつつも、画面としての完成度はそれに追いついていない印象。根気のいる作業だが、最後まで気を抜かず描き切ろう。
奨励賞の『愛しき罪びと』、チャレンジ部門努力賞の『にじいろラブフォーム』、企画としても共にそつのない作りではあるが、著者が描きたいもの以上のものは無かったと感じた。自分の武器が何かを客観的に見えている事は良いが、とは言え独りよがりに陥らず、さらに企画を強化していって欲しい。
今後も「自分」と真摯に向き合った作品の投稿をお待ちしております。