月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2018年8月期

2018年8月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第32回募集、佳作2作品・期待賞1作品・奨励賞1作品・努力賞3作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(8月31日締切分)

完成原稿部門:佳作賞金10万円
受賞作掲載

『呼ぶ』

+編集長特別賞5万円

『呼ぶ』

あくびえのき

あらすじ

雪深い山を歩く少年。呼び声のような奇妙な「音」を聞いたという彼は、その原因を探そうとするが――。

作品講評

強いコントラストで描かれた銀世界や、まとわりつくような氷雪によるホワイトアウト感など、作者の感性からくる作画・演出表現で編集部を沸かせた力作。作品単体の評価のみならず、将来性を加味したうえで特別賞の追加受賞と相成った。一方で、密度の高い画面やセリフの物足りなさ、行間を読むことを求めるドラマといった面で、現状では読みにくさが先行する。目指すべきは、より多くの読者を楽しませる作品づくりであり、そのための武器は持っているはず。次回作では情報量のコントロールの意識を兼ね備えることを期待する。

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『榊の子』

『榊の子』

日生 陽(19)

あらすじ

妖がはびこる1920年の京。剣豪の魂と人骨から生み出された剣士「榊の子」である柊は、失敗作と呼ばれて戦闘から遠ざけられ……!?

作品講評

前投稿作からの躍進が見られ、改めて伸びしろへの期待が持てる作品。安定感あるストーリーや設定に支えられた舞台の上で、キャラクターの魅力や躍動感ある構図が輝いていた。作画や粗さはまだ随所で目につくので、取り組んで欲しい課題の一つ。また、読み進めるほどに加速度的に面白さが増す内容だったが、それは冒頭の組み立てがゆるやかであることとも表裏一体。読者を序盤から引き込むにはどうすべきか、工夫ができる作家と信じ、次回作を期待する。

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完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『エナドリフレンズ』

『エナドリフレンズ』

章介

あらすじ

就活で100社以上落ちた石原雄大(19歳)。唯一受かった会社に恩を返す意気込みで初出勤をするのだが、そこでは“エナドリ”が必須のブラック企業で――!?

作品講評

先の展開が気になる物語の出だしが気持ち良くできている。ギャグのテンポ感も良くサクサクと読め、可愛らしい絵柄から繰り出される切れのあるギャグに笑いが込み上げる。しかし、まだネタの荒さが目立つ。題材にしたブラック企業の具体的な仕事内容の紹介や、エナドリをもっとネタに絡ませるなど、読者の笑いのツボや、物語の広がりの追求がまだ弱いので、今後の作品作りで極めていって欲しい。これからの活躍に大いに期待している。

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完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『Bacchus』

『Bacchus』

清村(19)

あらすじ

暴力団の頭取にして高校生の刀堂優と、彼に飼われているフウカという少年が織りなすバイオレンスラブストーリー。

作品講評

設定がやや現実離れすぎているきらいがあったが、ドラマ性の高さはそれを感じさせず、若いながら読ませてくる物語は先が楽しみ。選考会でも評価が高かったが、どうしても作画の拙さが前に出てしまった。だが構図などのイメージ力は高く、また話の構成力も抜きん出ているため、単純に背景や人物の描写に力を入れてあげるだけでグッと変わってくるだろう。もし一点申すなら、キャラの造形が甘く感情移入がしづらい点くらいだろうか。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『都合良く居場所にしてみたかっただけ♪』

『都合良く居場所にしてみたかっただけ♪』

菓山(30)

あらすじ

有名冒険者によって踏破された遺跡。栄光を掴み損ねた初級冒険者の少女たちは、人気の無くなった遺跡を自分たちの拠点にしようとするが……?

作品講評

ボスのいなくなったダンジョンを舞台に、三人娘がにぎやかに過ごすという切り口は面白い。ストーリー後半での事件も、序盤からのコメディ色を崩さずに決着させており、まとまりを感じた。ただ、キャッチーな題材にそぐう画面であるかという点で非常に惜しい。軽いテンポや可愛い少女たちのやり取りを楽しませる企画である一方、背景やセリフ分量が重すぎる印象。テーマに対して、どう描くことが求められるかにも客観性が必要。次回作でも意識して、最適な読み心地を追及して欲しい。

『ムラサキマンション』

『ムラサキマンション』

ウチワ

あらすじ

突然ぶつかってきた少年の財布を拾った女子学生。彼女は中身の大金と住所を見るやいなや悪いことを企み、少年の住むマンションへ向かうが…。

作品講評

ストーリーの型が出来ていて「ホラー」だとすぐ分かるしっかりした作りが好印象。また、飽きさせない画面の演出にも魅かれるものがあった。ただ、ところどころ演出過剰な面、シーンにそぐわない描写も見られたため、次回は説得力を持たすためのより的確な演出の選択を心掛けてもらいたい。そして、古典的な印象を持つクセの強い絵柄をどう改良し、キャッチーさを出していくか、が今後の大きな課題。自分の作品を客観的に見る目を養いつつ、課題と向き合い、更なる高みを目指して精進してほしい。

『hozanna』

『hozanna』

助友悠俐

あらすじ

聖職者・アラヤは悪魔だと虐げられる翼竜の獣人・メグと出会う。懐き始めるメグにアラヤは己の信条が揺れ動き…。

作品講評

丁寧なペンの筆致は好感が持てた。一方で、キャラの思考回路に飛躍を感じたり、キャラの気持ちが何がどう変化したのかわかりづらく、やりたいシーンの要素を詰め込んだ印象に繋がり、物語に入っていきづらかった。また、構成・演出面でも起伏が弱く、それを反映したメリハリのある画面とも言い難い。何が主題なのか作者自身が整理して、それを伝えるためにはどんな要素を残し、捨てるのか、しっかりと考えていくことが大切だ。次回作はぜひシンプルかつ深く物語とキャラに向き合ってほしい。

最終選考作品

『供花』(完成原稿部門)

薊(20)

総評

佳作2作品・期待賞以下5作品選出。
多彩な才能が萌芽した、実り多き漫画賞だった。

佳作の2作品は荒削りながらも、今後が非常に楽しみな作品。『呼ぶ』は実際に見えないものを、作家の感性により可視化した筆致に、並々ならぬ情念を感じた。ほぼ白黒のコントラストのみで描かれたその画面が作品にマッチしており、眺めるだけで楽しい作品に仕上がった。描き込み過ぎで分かりにくいきらいもあるが、取捨選択するよりも自分の武器を最大限研ぎ澄ませる方向でこの問題を回避して欲しい。『榊の子』は後半の畳みかける展開が爽快な一作。躍動感と外連味のある戦闘シーンとキャラクターは好印象だったが、惜しむらくは前半からその一端が垣間見えていればさらに良かったと考える。後半の旨みを示唆するツカミ部分としては、タイトルを含め物足りなさを感じたので、5ページ以内で読者を釘づけにする冒頭の展開・演出を心がけてみよう。

期待賞の『エナドリフレンズ』はキャッチーな絵柄で、WEBライクな読みやすいワイド4コマ形式の作品。扉を含む冒頭のスタイリッシュなイメージとツカミで期待度が上がったが、4コマにした事でそれが発揮出来ていないのが残念。ネタ部分の追求も必要だが、まずはキャラに磨きをかける方が先決だ。奨励賞以下の作品はまだまだこれからだが、各々に目を見張る部分があっての受賞である。伸ばすべき部分、足りない部分を理解し、精進して欲しい。

今後も創意工夫を凝らした、幅広いジャンルの作品の投稿をお待ちしております。

9月末〆切の発表は
2018年10月30日!