2018年11月期
第35回募集、期待賞1作品・奨励賞2作品・努力賞2作品選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(11月30日締切分)
賞金5万円
受賞作掲載
『霧隠れのジキルとハイド』
小日向夢二
あらすじ
かの有名なジキル博士とハイド氏は皆さんご存知の通りだろう。これは、そんな彼らがひょんなこと蘇り、そして出会った霧深い街のお話ーー…。
作品講評
美麗な作画は選考会でも評価が高かった。しかし、セリフやページの見せ方やキャラの多さなどの情報の過密さや、シンプルなプロットであるものの回りくどい説明的描写など、ストーリー及び構成の点で点が辛くならざるを得なかった。作者自身の世界観を表現しようとするあまり、受け手との意識差が表れてしまったと言える。他の投稿者の方にも注意してほしいのだが、世界観や雰囲気、テーマなど「作者の描きたいもの」を先行するよりも、まずは「エンターテイメントとしての読み切り」≒「読者が読んで楽しい」ものである方が望ましい。
賞金3万円
+特別掲載
『海賊に真珠』
富山コメコ(22)
あらすじ
人魚が存在し、海賊が蔓延る時代――。海賊船の船長のシーニーは襲った貴族の船で美しい東洋の人魚タマを攫う。宝物庫にタマを幽閉し、コレクションの一部にしようとするが、彼女はとても反抗的。プレゼントで取り入ろうとすると、タマは「これは求婚ですか?」と言う。都合よく流したシーニーだが、宝飾品として貴族に買われた事を知らない彼女は「不義理はできない」と真剣な表情で訴えてきて…。
作品講評
構図や、見せ方が独特でセンスがあり、読み手を物語に引き込む力があります。前作より、話の魅せ方も上達している。一方で描画に荒っぽさがある。ページ数も長く、途中冗長に感じる。次作は話を短くまとめることを意識して頑張って欲しい。
『交易船オリヴィア』
上松蒼(24)
あらすじ
毒ガスに覆われた世界を飛び交う、人と品物と希望を乗せて飛ぶ交易船オリヴィア。新任交易船警察の青年・佐久間が直面する事件とは――。
作品講評
実力以上の題材にチャレンジした作品ではあった。高い作画バランスや構成力、説得力を要求されるテーマであるがゆえに、今作はその水準からいくらか見劣りしてしまった。しかし実力以上とはあくまで「現時点」での話。前作からの進歩ぶり、面白い題材やドラマを紡ぐ発想力、いまの実力で描くべき部分を描き切ったこと、そして今後の更なる成長性。そこから滲む努力と地力にこそ期待を寄せたい。いずれこのレベルの作品を描き上げられるよう、照準は高きにおいたまま研鑽を積んで欲しい。
賞金1万円
『雨のちうさぎ』
森人有(20)
あらすじ
友達と新しいおもちゃで遊びたい「ひな」だったが、家は貧しく母親に断られてしまう。しかし、翌朝母親はひなのために手作りのうさぎのぬいぐるみをプレゼントするが…。
作品講評
丁寧な描線が好感。物語の展開も起承転結がはっきりしていて読みやすかった。しかし、良くも悪くも「教科書通り」という印象。自分ならではの「武器」を見つけることが今後の課題かと思われる。次回作は書き始める前に、今一度「自分は何を描きたいのか」を深く自問することを意識してほしい。
『腐女子高生活動中』
鳩田(19)
あらすじ
女子高生・宮古、矢府、藤沢の3人は、同級生の男子二人組のBL妄想に貴重な青春を捧ぐ “腐女子高生”。推しの為なら盗撮、盗聴、同人活動は当たり前!今日も推しCPに感謝――…。
作品講評
圧倒的スピード感で魅せる女子高生三人のギャグネタが光り、今回の結果に繋がった。だが、前作から画力向上したとはいえ、まだキャラの表情や物の質感が弱いので今後も画力向上に励んで欲しい。また物語作りの今後の課題としては斬新な企画、もしくは既存の企画に一捻りしたアイデアをプラスしていって欲しい。既存の企画だけでは次のステップには上がれない。是非この調子で邁進していって欲しい。今後の活躍に期待している。
『光源』(完成原稿部門)
白道さやか(26)
期待賞1作品・奨励賞以下4作品選出。
投稿者の成長がつぶさに感じられた今回。
期待賞の『霧隠れのジキルとハイド』は何と言っても即戦力レベルの作画と画面構成を誇る作品。キャラクターもいきいきと描かれており、非常に好感を持てた。ただ、著者の中で出来上がっているものを著者の愛情のみをもって表現しているが故に「何を見て欲しいのか」がかなりぼやけてしまっている印象。愛を注ぐ事自体は悪い事ではないのだが、常に読者を喜ばそうとする意識と両輪で創作を続けて欲しい。
奨励賞の2作品は前作からクオリティが飛躍的に上がっており、しっかりと創作に向き合ってきた姿勢が感じられた。特別掲載の『海賊に真珠』は自分の描きたいものと読者が好むであろう題材を、両立してアウトプットを試みている点は評価に値した。突飛な演出に頼らず、丁寧に物語と画面を紡いでいく力はあるので、地道にしっかり画力を下支える土台を作っていこう。『交易船オリヴィア』は、ファンタジーながらも堅実な人間ドラマを描いた意欲作。演出もしっかりメリハリがきいており、構成も及第点ではあるが、題材的に画力が伴わないとどうしても地味に見えてしまう。同じ構成であっても、構図や画面演出を試行錯誤した上で画力も向上すれば、全く別次元の作品になってくるだろう。
今後も、自分の実力の一歩先に挑戦した作品の投稿をお待ちしております。