月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年8月期

2019年8月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第44回募集、奨励賞2作品・努力賞1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(8月31日締切分)

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『夢の娘』

『夢の娘』

井村なるみ

あらすじ

男は「現実と違う選択をした自分」の夢を見る。現実と違い、夢の中では成功者になっている自分。だが、不思議なことに“夢の自分”が持っているものを奪えることに気づく。「夢の中だから」とそれを続けた男は、ある日“夢の自分”を殺し、“夢の自分の娘”を持ち帰ってしまい…。

作品講評

複雑な構造をしっかり伝わるように描いているのは高評価。絵柄もかわいらしく、丁寧な画面に仕上がっている。一方でつかみのネタ先行でメッセージ性が足りていないので、キャラクター性とともに深めていって欲しい。特に今作では要素が多くなってしまった為に「何を一番に伝えたいのか」という部分が伝わりづらいので、シンプルを念頭に作った次作に期待したい。

『初空アンバー』

『初空アンバー』

守田うせき(35)

あらすじ

幼くして遊郭に買われ、白髪と虹色の瞳から白虹と名付けられた少女。世話をしてくれた花魁・青天を喪い、再び一人になってしまった彼女が出会ったのは……。

作品講評

芯のあるキャラクター造形や情感たっぷりの画面作りに対する意欲を感じる一作。今後はその意識を持ちつつ、全体の構成のバランスを取ってほしい。お話運びは切なくも読後の爽快感に繋げる作りだったが、各キャラクターのエピソードを大事にするあまり、ときに冗長な印象もあった。また情景や背景小物も重要な作風なので、作画面でも描線のメリハリづけやディティールの強化を。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『真に相違』

『真に相違』

ふじせ(20)

あらすじ

親の期待にストレスを感じていた司は、ある日、自分と似た境遇の圭介と知り合う。自分の事を一切話さない彼に疑問を持ちつつも、一緒にいる居心地の良さから大人になっても親交を深めていた。だが、親の期待通り警官になり関わった事件で、圭介がヤクザの若頭であると知り…。

作品講評

立場の違いをキレのある描写で表現した人間ドラマに評価が集まった本作。主人公の司の心情は十分に伝わるが、圭介が終始何を考えているかわからないので、最後に彼が司を撃ち殺したことへ疑問が残る。本作は司視点だが、圭介の心情を読み手に伝えるための補足があると良かった。前作に比べ作画の強みがなくなったので、作品に合わせたベストの画面作りを模索しよう。

最終選考作品

『夢を描く君へ。』(完成原稿部門)

酉箱(20)

総評

奨励賞2作品・努力賞1作品選出。
荒削りながら光るものを感じる作品が選出された。

奨励賞に輝いた『夢の娘』は癖がない綺麗な絵柄もさることながら、細かい表情の描き分けが今後を期待させる。内容自体は夢と現実の境界を超える少々複雑な設定先行で、キャラクターの感情が追いついていないように感じた。キャラの感情や作品で伝えたいことが増幅して伝えられるかどうかを判断のものさしにして、設定を考えられると良いだろう。
同じく奨励賞を受賞した『初空アンバー』は、キャラの立った物語運びが受賞の決め手となった。一方で、キャラクターにエピソードが引っ張られすぎており、読者の読み心地を脇に置いている傾向が見受けられる。また、読者を物語に誘うような看板キャラを作っていくことも、商業作品において必須の要素といえよう。
あくまでマンガは、キャラクターを通して楽しむもの。自分の手にある武器をどのように磨き、使えばいいか、ぜひとも考えていって欲しい。

前作に引き続き、努力賞を受賞した『真に相違』。キャラ作りが洗練されていることがこの著者の強みであるが、今作もそれが遺憾なく発揮されていただろう。荒削りな作画を伸ばしていくには、数を重ねるのが何よりの近道。もちろんただ数を重ねるのではなく、身近な物事の観察や商業誌の研究を交えることを心がけてみよう。

今後も原石の光を注ぎ込んだ作品をお待ちしております。

9月末〆切の発表は
2019年10月30日!