月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年7月期

2019年7月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第43回募集、期待賞2作品・奨励賞2作品・努力賞3作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(7月31日締切分)

完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『エレガにも事情がある』

『エレガにも事情がある』

寺田寛子(33)

あらすじ

老舗百貨店エレベーターガールのノリコ。風情あるこのエレベーター、利用客はどうやら“人間”だけではないようで…?

作品講評

自身の持ち味を残したまま、万人が読みやすいコメディタッチが好評で受賞につながった本作。ノリコを中心に周囲のキャラの味わい深さが丁寧に表現できていた。一方で、作品の広がりを想像させるための深みが弱く感じられた。読み切りなら十分な構成だが、続きを読みたいと思わせる要素を取り入れていくことも念頭に置いて欲しい。作画面は、背景の画力不足や人物の線の硬さが散見される。個性と構成力はしっかりあるので、その魅力を存分に伝えるための技術の向上を意識して今後の作品作りに期待したい。

受賞作品を読む

『ヒューマロイド』

『ヒューマロイド』

kana(22)

あらすじ

第三次世界大戦が終わって一年。終戦に大きく貢献した「ヒューマロイド」。特殊な方法で生み出された彼らには「生」の期限が迫っていた。

作品講評

前作よりエンタメに振られている作品。作品に合わせてタッチも丸くなっているなど、読みやすさに気が配られていた。総合力が非常に高いものの、今後の課題は如何に時代性を取り入れていけるか。キャラデザ、ストーリー、設定など、読めば面白いにとどまらず、読む前から興味を引けるように市場研究などの努力も惜しまないで欲しい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『討伐隊日誌』

『討伐隊日誌』

殿(25)

あらすじ

頻繁に出没するモンスターの討伐に出向いた隊長と騎士のアンリ。しかし、二人ともそれぞれ別の目的があるようで……?

作品講評

作画ディティールからファンタジー世界観や牧歌的な空気感が伝わってきており、昨今の時流を汲めている。軽快なキャラクターのやり取りも、迫力ある戦闘構図もこなせており期待度は高い。ただ今作では特にオチでの唐突さが目立ち、またキャラデザインやモンスターデザインもやや古さがあった。とは言え非常に伸び代を感じるので、担当編集者とともに継続的な作品づくりを行ってほしい。

『Necropolis』

『Necropolis』

たまき

あらすじ

魔法と精霊が息づく世界で奴隷として生きていたナシームは、ある夜に謎の生き物に襲われたところを一人の青年に助けれられるが…。

作品講評

キレイな線が好印象。画面のコントラストが丁度良く、読みやすさにしっかりと貢献している。反面、内容に関してはもう一歩。「作者の好きな設定」は描かれているものの「作者の好き」が見えてこず、オリジナリティに欠ける。物語としてもどこかで見たことあるから読むことができるものになってしまっているので、まずは「自分の好き」をしっかりと見つけ、伝える術を磨いて欲しい。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『朝には君がいる』

『朝には君がいる』

藤堂くれは(16)

あらすじ

少女まなかには気になる男の子がいる。近所の森にある石の上、そこにいる自称幽霊の男の子。そんな彼が学校に現れたものだから!?

作品講評

早朝のような透明で清々しい空気感や光彩表現、思春期少女の振り回され感が楽しめた作品。過去作同様にセンスの光る箇所が散見され、審査員からも将来性への期待が集まっていた。ただ現時点では、まだ描線やトーン仕上げ、キャラクターデザインといった面で粗さや課題が見える。それらを伸び代に変えるためにも、アウトプットの継続はもちろん、インプットの積み重ねも貪欲に行ってほしい。

『襲雨』

『襲雨』

上野博(17)

あらすじ

ひきこもりの女子高生・キッカの前に突然現れた青年、それは愛用のケトルだった!自分を慕うケトルに冷たく接してしまい自己嫌悪に陥ったキッカは、置手紙を残していなくなったケトルを捜して街に飛び出す。そこに人の心の闇を喰らう「闇喰い」が現れ…?

作品講評

ケトルという誰にでも身近なものから想像を膨らませて漫画としてまとめられていたことに好感。また、丁寧な心理描写、独特な抽象演出は、今後伸ばしていけば武器になりそう。だが、キャラクターの背景の掘り下げ・説明の不足や、ストーリー展開の大味さ、そして画力不足は課題。フィクションだとしても、読み手にそれを感じさせないリアリティと説得力を身につけよう。今後に期待したい。

『いきるのへたくそぐみ』

『いきるのへたくそぐみ』

三機(31)

あらすじ

自分の感性やペースを他人に合わせるのが苦手なまま大人になった信太郎。甥っ子の恵太も同じ悩みを抱えていると知った彼は……。

作品講評

読みやすく優しいつくりの内容で好感の持てる作品。ただし、その読みやすさはドラマやエンタメ性の「物足りなさ」とも表裏一体だったことに注意して欲しい。「読んだ人が元気になるような作品」を目指すこと自体は大切だが、作品としての盛り上げどころや惹き付けどころに注力したうえで、テーマを引き立てることにも挑戦して欲しい。前作含め、物語の切り口は面白いと感じるので、そこからもう一歩背伸びを。

最終選考作品

『ヴァンパイアドクター』(完成原稿部門)

なかみてる(30)

『DEFECTUS BIBLIOTHECA』(完成原稿部門)

ミワ子(38)

『月の宮』(完成原稿部門)

ミワ子(38)

『悪魔のいる校舎』(完成原稿部門)

菊野のの(24)

総評

期待賞2作品・奨励賞2作品・努力賞3作品選出。
確かな実力とフレッシュな才能が入り乱れた結果となった。

『エレガにも事情がある』は前作と同様、期待賞の受賞ではあるが、今までで一番ヒキのあるキャラクターを生み出せたことが編集部でも評価された。自身の持ち味を生かしたまま、課題を着々とクリアしていると感じるので、最大の課題である画力面もぜひ洗練されていって欲しい。
『ヒューマロイド』は見るものを引き込む確かな画力を発揮して、前作同様の期待賞受賞と相成った。実力はあれど前回から頭一つ抜けていないのは、漫画を描く前の仕込み不足にあるだろう。技術だけでなく、読者に面白がって読んでもらいたいという目論見をもってアイデアを練ることも必要だ。

奨励賞2作品はどちらも月例マグコミマンガ大賞への投稿は初。
『討伐隊日誌』は12ページという短い中で、時流に乗れそうだと期待できたことが受賞に繋がった。ストーリー構成やキャラデザなどはまだまだ未知数であるが、確かな地力を感じるので、時代の波を逃さずに作品を生み出していって欲しい。
『Necropolis』は均整の取れた絵が印象的で、絵で引き込んでいく伸び代を感じさせた。しかし、どういった世界を舞台にしてるのかなどの情報が読者に十分に伝わっておらず、物語への吸引力は今ひとつ。自身の中でしっかりと作品の設定を構築・整理して、物語の構成・演出に活かしてほしい。

努力賞以下の作品は荒削りであるものの、作家の将来性に期待を込めた評価である。技術の向上だけでなく、意識して世の中を観察し、インプットの幅を広げていって欲しい。

今後も「読者にどう届けるか」考え抜いた作品の投稿をお待ちしております。

8月末〆切の発表は
2019年9月30日!