月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年6月期

2019年6月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第42回募集、期待賞3作品・奨励賞2作品・努力賞1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(6月30日締切分)

完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『神継ぎ』

『神継ぎ』

ミヤカミヨロズ(29)

あらすじ

「神継ぎ」とは、神を継いだ人間のこと。神の派遣社員みたいなもので、今では「神継ぎ」がなりたい職業ナンバーワン!のご時世。そんなある日、この世の全てを聞く神・地獄耳が高校生・猪井ミコトを「神継ぎ」に任命しようとするが、ミコトは筋金入りの神様嫌いで…!?

作品講評

分かりやすく安定感のあるストーリーとキャラが評価を得た。構成・演出面もおさえるべき点はおさえてあるが、少し冗長に感じられる部分や物足りない部分もあったので、テンポやメリハリを意識してもう一段階レベルアップしてほしいところ。内容と絵柄がややミスマッチな点は、読者ターゲットを考えて調整していく必要があるだろう。今後に期待したい。

受賞作品を読む

『クリアランス』

『クリアランス』

星埜かなた(22)

あらすじ

高跳びで「運動部の星」と期待されている飛鳥は、周囲のプレッシャーから競技と距離を置いていた。そんなある日、「文化部の星」と呼ばれている女子に絵の題材にするから跳べと付きまとわれる―。

作品講評

特徴のあるタッチと作品内容の爽やかさが印象的な作品。全体的にまだ発展途上ではあるものの、自身の演出技法を確立しており向かうべき道筋が意識できているように思える。今後の課題としてまずは自身の物語を客観的に見る意識を持ち、情報の過不足を把握できるようになるとより作品が読者に届くように思える。次回作では自身の強みを伸ばしつつ、課題を克服して頂きたい。

受賞作品を読む

『貴方の本と黒猫』

『貴方の本と黒猫』

坂本成(22)

あらすじ

売れない小説家・菱川久幸。書きたいものも浮かばず喫茶店で途方に暮れていると、一匹の黒猫と、飼い主である可愛らしいお嬢さんと偶然出会う。今までに感じた事のない感情を覚える菱川。しかも彼女は、菱川先生のファンだと言い…。

作品講評

奇抜な題材ではないものの、魅力ある絵柄と、可愛らしいキャラ達に好感が持てた。特に女の子の描写が良く、彼女に惚れこむ男性キャラの初々しさも魅力的に描けており今回の受賞に至った。物語の面でも、テンポ良く読めたのは高評価。しかし、主人公達が結ばれるまでの障害が弱かったので、いま一つ盛り上がりに欠けてしまった。またキャラの心情を伝える表現が顔の描写が多いので、今後の課題として欲しい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『三姉妹の主張』

+編集長特別賞2万円

『三姉妹の主張』

伊東(17)

あらすじ

三姉妹の一菜、二朱、三希は家に帰る道中、お腹が空いた三希のためにたい焼きを食べることになるが、その食べ方で一菜と二朱が争いを始める。

作品講評

17歳という若さながらしっかりと狙いを持って作られた作品。画力も粗はまだあるものの、今後の伸び代を考慮すると確実に及第点は超えている。内容も今作は8Pと短めなストーリーではあったものの、作者のやりたいことが十二分に伝わる出来。今後については、まずは「描き続ける」ということが肝要。多くのインプットとアウトプットをして研鑽を積んでいって欲しい。

『七煌童子』

『七煌童子』

日生陽(20)

あらすじ

法改正により人の陰で暮らしていた妖に戸籍と妖権(じんけん)が与えられた。人と妖が共存する新たな社会。その秩序を保つべく陰陽省の安倍晴明は七煌童子と呼ばれる七つの命を生み出した――。ある日、人狼組という妖集団が牛耳る街に現れた少年・楸。彼は七煌童子の兄を捜しているというのだが…

作品講評

要所で熱のこもった魅力あるカットを描けており画力の向上も窺える。ただ前回までの投稿作のクオリティが高かった分、今回は全体的に小さくまとまり拙い印象を受けてしまった。連載で必要な生産性を掴む為、コンスタントに創作に向き合う姿勢は評価できるが、企画力を強めた題材を選定し、何でどう楽しませるのか狙いを定めた作品生み出してほしい。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『琴座のベガの糸紡ぎ』

『琴座のベガの糸紡ぎ』

守田うせき(35)

あらすじ

ここは天宮、天の河原の傍、琴座。織姫と黒曜によって記憶は糸になって紡がれゆく…

作品講評

前作と比べ、小粒ながらよくまとまっていると感じたが、どうしてもストーリーの部分でもう一歩欲しかった。作画の部分では丁寧になってはいるが、勢いが削がれてしまっており、やはりこちらも改善の余地があるだろう。たとえば顔のアオリや俯瞰、背景のパースといった部分でまだまだ「描きなれなさ」が目立つ。デザイン面でももっとキャッチーなデザインがあったように感じられた。今後とも着実な一歩を期待したい。

最終選考作品

『出会うものに向い風』(完成原稿部門)

猫太マナ(23)

『後輩は般若さん』(完成原稿部門)

宇賀ありよし(34)

総評

期待賞3作品・奨励賞2作品・努力賞1作品選出。
ポテンシャルが感じられる、粒ぞろいの作品が多かった今回。

期待賞3作品に共通するのは、いずれも作家それぞれに強みを感じることだ。そして、超えなければいけない課題も共通している。それは、読者に寄り添った作品作りである。『神継ぎ』は、初投稿ながらキャラクターの魅力が光り、今後に期待できる作品に仕上がっていた。反面、キャラクターや絵柄とは少々外れた、シリアスな物語運びが気になるところ。作品をまとめあげることに引っ張られず、”どんな読者が読む漫画なのだろうか?”、”このキャラクターを好きになった読者はどんなことを期待するのだろうか?”と読者に対して想像の枠を広げていって欲しい。
『クリアランス』は、個性的ながら水準の高い絵力が、今回の中では頭一つ抜けていた。しかし、人物を中心とした構図のコマ割りは状況がわかりにくく、キャラの境遇や心情描写が今一歩足りないため、読者が物語に入っていきにくいものとなっていた。『貴方の本と黒猫』は前回受賞作ほど演出で魅せる作りではなかったが、持ち前のセンチメンタルな絵柄と作風がマッチしていた。ただし、変わらずドラマの深堀りが惜しく、読者が楽しみたい”ここぞ”という部分が抜け落ちている。この2作品も共通して、読者に寄り添って物語を紡いでいくことが課題である。さらなる精進を期待している。

奨励賞と編集長特別賞を同時受賞した『三姉妹の主張』は、上記3作品に比べるとまだまだ荒削りな作品ではあるが、読者の好むポイントを抑えようとしている点が高評価に繋がった。年齢からも伸び代の大きさを感じるので、根気をもって今後もぜひ描き続けていってほしい。
他、奨励賞以下の作品は、一定の水準を超えた作品であるが、自分の持ち味を伸ばしきれておらず、足りない部分の方が目立ってしまっていた。目標を据えて作品作りに取り組んで欲しい。

今後も読者目線を忘れない作品の投稿をお待ちしております。

7月末〆切の発表は
2019年8月30日!