月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年10月期

2019年10月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第46回募集、奨励賞1作品・努力賞3作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(10月31日締切分)

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『化生の柱』

『化生の柱』

清村(19)

あらすじ

戦乱後の明治の世。夜な夜な辻斬りが横行する中、異人の風貌をした男が一人――…。

作品講評

演出が見事。キャラも立っていて19歳でここまで作品に色を出せているのは凄い。ただ、しっかりエンタメを意識した構成にはなっているものの、人物の内面を見せるのに動きがとられていて、ストーリー軸が置いてけぼりな印象。作画面もまだ改善の余地があるので、学ぶ必要があるものも多い。突出したセンスがあるので、とにかく今はたくさん描いてブラッシュアップしてほしい。今後の成長が期待できる。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『祈りの花』

『祈りの花』

住岡 律

あらすじ

乾庚国の皇子である藍は、6年前の大洪水で家庭教師の緋奈を失ったことで失意に陥っていた。ある日、事故に巻き込まれ落ちた先で亡くなったはずの緋奈に出会う。しかし、緋奈は記憶喪失で…。

作品講評

魅力のある美麗なタッチで、描線にも丁寧さが伺えて好印象。演出の意識も高く、全編を通して楽しんでもらおうという意識がしっかりと見えた。反して、内容についてはもう一つこだわりが欲しかった。舞台がファンタジーであるが故に作者による明確なビジョンの設定が求められる部分で、曖昧なイメージのまま作品に反映されてしまった印象。次回作では、作品の内容面についてもしっかりとこだわりを持って臨んで欲しい。

『青色の追憶』

『青色の追憶』

志鷹亜耶(32)

あらすじ

夏の暑い日差しのもと、ふと目に止まる自販機のジュース。それは高校生時代に彼が飲んでいたものだった。脳裏によぎるのはひと夏の思い出――。

作品講評

ノスタルジックな夏の一幕を爽やかな色気たっぷりに描いた点が好評価を得た。努力賞止まりなのは、ひとえに8ページという短いページ数で1シーンを描いただけに留まっていることが大きな要因だろう。言ってしまえば物語はなく、あらすじに書いた以上のことは何も起こっていない。線描の綺麗さやカット割りの巧みさは、自分の伝えたい物語を、読者に楽しんでもらうための武器となり得るだろう。次はその武器を活かした物語をぜひ紡いで欲しい。

『お客様、チェックアウトのご予定は…。』

『お客様、チェックアウトのご予定は…。』

富山コメコ(23)

あらすじ

就職が上手くいかず人生に絶望した桜さほりは自殺を図るが、気が付くと立派なホテルに前にいた。流されるままに宿泊するさほりだが、翌日宿泊料金が払えず働くことに。そこは個性豊かなスタッフと人生に絶望した客ばかりの奇妙なホテルで…。

作品講評

前作より画力は向上しているが、一部構図(特にヒキ)やパーツのバランスに崩れが見られる。また、もう少しヒキで描かないと状況が分からない構図があるので、研鑽して欲しい。キャラ立ちの要素はあるが、それを説明するシーンやエピソードが足りないので、全体的に唐突に話が展開している。話をまとめることに注力しているので“このキャラならこうする”という要素をネームに取り入れよう。今後に期待。

最終選考作品

『寄生者』(完成原稿部門)

上野博(18)

『ゴクドー☆プリンセス』(完成原稿部門)

宝乃あいらんど(29)

『諭吉10枚先生』(完成原稿部門)

稲葉一豪(23)

『製造する天体』(完成原稿部門)

摂田鴨(20)

『甘能少年』(完成原稿部門)

みつみ(31)

『ごめんなさいと言って去っていった』(完成原稿部門)

古澤消炭(27)

総評

奨励賞1作品・努力賞3作品選出。
荒削りながら確かなポテンシャルを感じる作品が出揃った。

『化生の柱』はキャラ立ちや演出に長けており作者の強みが光る作品であったため、前回と同様、奨励賞受賞と相成った。一方ストーリー自体は、関係性を魅せるためにしか事件が存在していないため、やや薄い印象を持つ。また、作画面にも課題を残したままと言ってよいだろう。今出来ることの枠に囚われず、新しいことの挑戦を欠かさず、次作にも取り組んで欲しい。

努力賞の『祈りの花』は、華やかで品のある絵柄に多くの読者が引き込まれそうだと編集部から好評価。一方で、舞台設定の作り込みが甘く、ふわふわとしたまま物語が転がっていくので、キャラに感情移入しづらいのが難点。異世界で生きる人々は現実を生きる私達と違う文化や価値観で育っている。著者の中でしっかり世界を作って、その世界に根付いたキャラ作りをして欲しい。
同賞の『青色の追憶』は、セリフであまり語らず、カット選びで物語ってみせたことが受賞の決め手であった。しかし、物語る内容が一瞬の情景や感情でしかなく、読み心地が薄味なのが惜しい。物語の類型は様々であるが、キャラクターがどんな風に感情が変化していくのか、それに伴い、キャラクターが直面した出来事はどのように解決されていくのか。そういった視点から物語を構築していこう。
同賞の『お客様、チェックアウトのご予定は…。』は、絵柄の安定感が増し、描線の丁寧さも前作より上がったものの、課題が多い結果となった。キャラに個性があるもののそれぞれに言動の突飛さがあり、それが楽しめる要素ではなく読者を置いてけぼりにしている。キャラが何を考え、行動しているのか、読者としっかり共有できるように気をつけて次作に取り組んでほしい。

今後も読者を物語に引き込もうとする意欲作をお待ちしております。

11月末〆切の発表は
2019年12月30日!