2020年1月期
第49回募集、佳作1作品・期待賞1作品・奨励賞1作品・努力賞1作品選出！
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…？ (1月31日締切分)
賞金10万円
受賞作掲載
＋編集部特別賞5万円
『不幸にも幸いする』
古烏恵子（37）
あらすじ
整備工場でバイクの整備をする子に一目惚れした天野光海。日々通い続けて面識を得るが、実は一目惚れした相手は男子だった。それでも恋心のような気持ちを募らせていく中、整備工場が廃業になる事になり―…？
作品講評
すっきりと整理された画面や主人公の心情描写の丁寧さが、ストーリーを際立たせ爽やかな没入感を与えた点が高評価に繋がった。反面、全体的に少し長く冗長な箇所もあった。起承転結のリズムをより意識することで、物語の展開にメリハリがつけられるとより良くなる。また、すっきりとした画面ではあるが、やや白さが目立つ。トーンのバリエーションを増やしてみるなど、場の雰囲気や情緒感をより伝える画面構成を試みてほしい。
賞金5万円
受賞作掲載
『room102』
七糖レンジ
あらすじ
「なんで私なの――。」大学でいじめを受けている女の前に現れたのは、“呪われアパート”と呼ばれるアパートに住む不思議な男。その男の目は彼女の全てを見透かすようで――。
作品講評
ダークなネタをブレることなく描き切った点に評価が集まった意欲作。ただし文字量の多さや、主人公の置かれている状況を説明するのにページを割きすぎているので序盤が少々冗長。キーキャラである102の個性が少し薄いので、キャラ説明や魅せゴマの強弱を意識して取り入れよう。後半のスピード感ある展開はかなり惹き付けられたので、その良さは著者自身の武器として大切にして欲しい。次回作に期待。
賞金3万円
『颯』
池田73号
あらすじ
戦時中に作られた超能力を使える人間兵器「颯」。人体実験の生き証人である彼らを狩る「死に損ないの織部」が、最後の狩りで相手をする人物とは…？
作品講評
登場人物の境遇や関係、ラストの結び方など純粋なストーリーの面白さが高評価を得た。加えて、過去描写や「颯」などの設定がしっかりしている点、コマ割りを含む画面構成力が評価を支えている。しかし、文字での情報量が多く詰め込みすぎな印象。表現できる部分はなるべく絵で見せて、見せ場を作るなど緩急を意識した読み心地の良さを追求して欲しい。作画においては背景の少なさ、線の荒さ、キャラクターデザインが気になるため、持ち前のストーリーを活かせるような丁寧さが加わった次回作に期待したい。
賞金1万円
『WHEN YOU WiSH UPON A HEART』
秋月俊貴（17）
あらすじ
リア充のみを襲う《リア獣》。リア獣から民を守る軍の男、非リアのウヴァは中学生のリア充に自分を重ねる――。
作品講評
アイデアの独自性や読者を飽きさせない工夫に将来性と期待感が感じられ、着眼点の良さを支えている。見栄えのするカメラワークを意欲的に取り入れており段違いに熱量と迫力を感じたが、近景での描写が多いため遠景を入れることも心がけてほしい。魅力的な主題になり得る設定が多いが、今作では情報整理がしきれていない印象を受けた。一番伝えたい事柄は何かを絞ることを心がけよう。
『逢原サヤのラジオドットA』（完成原稿部門）
涼木スズ（22）
『STAGE.』（完成原稿部門）
oki（31）
佳作＋編集部特別賞1作品・期待賞1作品・奨励賞1作品・努力賞1作品選出。
著者の個性が光る作品が出揃った。
『不幸にも幸いする』は、感情の機微が繊細に描かれながらも、前作以上にキャラクターの心情に深く入り込め、佳作に加え特別賞を受賞する形と相成った。ただ、前作同様メリハリが弱い点や淡白な印象がやや残る。繊細さを意識することは、ともすれば淡白な印象になりやすいゆえ、ストーリー展開のインパクトで補強するという意識もぜひ持って欲しい。
期待賞『room102』は、追い詰められた時の表情の良さや、人間の黒い部分にしっかり踏み込んだ点が評価された。キーフレーズを使った演出は、読者の印象に残りやすい方法であるものの、本作は、キーフレーズと実際のエピソードのズレがあり、意味の回収に対する痛快感がいま一歩惜しい。普段から言葉遊びに慣れ親しみ、プロットに織り込めると良いだろう。
奨励賞の『颯』は、人間ドラマを描き切る意欲が感じられる作品であった。設定の作り込みがこの作品を支えている一方、設定を作る際に絵で表現することを想定しないで考えていないだろうか。絵から設定を膨らませていくのも一つの手だ。
読者を飽きさせまいという気概は、どんな作品を描くにあたっても必要である。
それが強く感じられた『WHEN YOU WiSH UPON A HEART』は、最終選考から一歩飛び抜け、努力賞受賞と相成った。技術が追いついていないところもまだ多く見受けられるが、読者を楽しませることだけはブレないように、引き続き腕を磨いていって欲しい。
今後も自身の個性を鋭く尖らせた作品をお待ちしております。
