月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年12月期

2019年12月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第48回募集、期待賞1作品・奨励賞2作品・努力賞1作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(12月31日締切分)

完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『ち魔っこバールくん』

『ち魔っこバールくん』

ミヤカミヨロズ(29)

あらすじ

魔界からやってきた悪魔バールは、ちま可愛いケモミミ男の子!? お人好しな退魔士とともに、「とある物」を求めて街へ――。

作品講評

デフォルメの強い作風を活かしつつ安定した作画、コメディを小気味よく読ませる画面づくり、そして何よりキュートさが最大限に押し出されたキャラクター描写に評価が集まった。可愛さのみに甘んじることなく、「どう動かし、どう可愛く見せるか」という点で突き詰められており、生き生きとした魅力を感じられた。企画性やサブキャラによって、一本調子になりがちな展開に変化を付ける手技も添えられれば、より可愛さのバリエーションが楽しめるだろう。担当編集者とともにさらなるステージに向けて邁進してほしい。

受賞作品を読む

完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『その他Aですらない』

『その他Aですらない』

幸ユウト(24)

あらすじ

人見知りでなんの取り柄もない、「脇役以下」が似合う"僕"。突如ゾンビ化に見舞われた世界で、ゾンビに噛まれたものの、すぐに発症しないことに気づいた"僕"は、一つの決断をする……。

作品講評

「ゾンビになるまでの間」というキャッチーな着想と、主人公の心情を丁寧に追い安定感のある読み心地が評価を得た。一方で、反復している要素が多く中身に対してページ数が多い印象を受ける。絵柄は多少のクセがあるものの刺さる読者層が確実にいそうなので、基礎的な画力に磨きをかけて欲しい。見てもらいたいところをグッと絞る意識を持って、ぜひ次回作に取り組んで欲しい。

『クラスのあの人』

『クラスのあの人』

坂本成

あらすじ

過去に起こったある出来事から、人との関わりを避けようとする女学生、森田。そんな彼女に対して、クラスの人気者の藤沢龍也がグイグイと迫って来るのだが…。

作品講評

エピソードを重ねることで二人の関係性が進展していくので、揺れ動かされる主人公に感情移入して読み進めることができた。しかしながら、モノローグで主人公の心情を表す手法を多用しているので、もっとキャラクター同士の掛け合いを通して内面を描いていきたい。また事件が起きるまでの尺が長いので、読者が物語に没入することができるような〝つかみ〟が序盤にも欲しかった。作画の面では、キャラクターの喜怒哀楽を読者に感じさせるために、表情の変化をより丁寧に描いてほしい。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『神威美也雄は神様に会えない』

『神威美也雄は神様に会えない』

いくすえ為成

あらすじ

神を信じ探し求める男、神威美也雄が訪れたのはとある伝承がある神社だった。神との出会いを期待していた神威だったが、しかし彼を待ち受けていたのは凄惨な殺人事件だった――…。

作品講評

推理ものというジャンルに挑戦したのは素晴らしい。一方でストーリー展開が話をこなすことに終始してしまっており、キャラクターの魅力が伝わりづらくなってしまっている。情報単位の取捨選択もそうだが、特に出だしが入りづらくそのシーンを描く必要性も考えてもらいたい。絵は綺麗だが、淡白になっているので絵柄を活かす構図や演出などを取り入れてほしい。ネームの運びも単調なのでメリハリほしいところ。課題はあるものの、次回作で乗り越えてほしい。

最終選考作品

『スプーンですくって』(完成原稿部門)

煮鶏(25)

『最後の勇者』(完成原稿部門)

エカキ(25)

総評

期待賞1作品・奨励賞2作品・努力賞1作品選出。
安定感を感じる作品が集まった結果となった。

期待賞の『ち魔っこバールくん』は、前作の選評で指摘された「内容と絵柄のミスマッチ」を改善し、テンポの良いショートコメディを展開できたことが受賞の決め手となった。ただし、絵的な可愛さは高評価なものの、ネタによる後押しがもう一歩足りない。可愛さで愛されるキャラを追求するならば、キャラの喜怒哀楽がたくさん見れるような、多面的なネタ作りを意識できると良いだろう。
『その他Aですらない』は、定番のゾンビネタを定番とは違う側面から描き、読者の共感を得やすそうな主人公像が評価され、奨励賞と相成った。しかし、伏線の貼り方などが説明的になっており、展開に予想がついてしまうため、見せ場のカタルシスが減ってしまっていた。伏線もキャラの見せ場の一つという意識を持って、各シーンの旨味を引き出そう。
同じく奨励賞の『クラスのあの人』は、前作よりもキャラ立ちを意識した会話シーンによって、読み心地が良かったことが評価された。ただし、心情の変化を追っていくのに、変化の旗印となるような見せ場のパワーが弱い。台詞に一工夫加えることや、それが目に飛び込んでくる構成にするなど、演出でどうキャラを魅せるか意識して欲しい。

努力賞の『神威美也雄は神様に会えない』は、プロットが難しい推理ものへの挑戦と、個性的でキャッチーなキャラが評価された。地力を感じるものの、だからこそ「推理モノならば」「このキャラならば」と見たかったシーンが多々あったのが惜しい。課題を乗り越えた次回作を期待している。

今後も安定感の中に自身の個性を加えた作品をお待ちしております。

1月末〆切の発表は
2020年2月29日!