お久しぶりです!元ドレッドの編集Nです。
先月、変な告知とともに始まった本企画。
記念すべき第一回目に取り上げるのは……この作品!!
MAGCOMI読者には釈迦に説法かもしれませんが……「この作品を読んだことない」というような方もいらっしゃるかもしれないので、まずはNの独断と偏見による簡単なあらすじを説明します。
※一部作品のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。
『リィンカーネーションの花弁』とは!?
自らの肉体を切り裂き、前世から才能を掘り起こす刃“輪廻の枝”。偉大な天才達のみならず恐怖の殺人鬼も蘇る世界で、強く才能に飢えた高校生・東耶がその刃を手にする…。
他を圧倒するほどの特別な「才能」を渇望する主人公、
彼は優秀な兄への劣等感を払拭する為に、幼少の頃からあらゆる習い事に手を出します。
この「あらゆること」の程度がどれくらいかというと、これくらいです。
だが、彼は才能を感じられる事柄に出会うことはついぞなかった。
そんな彼はある日、クラスメイトである
彼女は前世の才能を引き出す道具、
「才能がないなら、前世のものを使えばいいじゃない」というどこかの王妃も真っ青な発想を受け入れ、自身の才能を探ろうとする東耶。
そんな彼の前世に存在した才能は――「盗み」。
安土桃山時代に盗賊として名を馳せた
そうして前世の才能を得た東耶は、その才能を悪用する者を討伐するべく、多種多様な偉人の才能を持つ集団「偉人の
ここで私の「気になったことは徹底的に調べないと気が済まない」という性分が鎌首をもたげました。
この「偉人の杜」のメンバーをご覧ください。
ニュートン、アインシュタイン、ノーベル、ピカソ、ナイチンゲール……。
誰しも一度は聞いたことがあるような
しかし―――。
ぶっちゃけ、
私が無知なだけかもしれませんが、この人物についての知識が私には皆無でした。
おまけにこの舩坂という男、所有している能力はチート極まりないです。
それは――どんな攻撃を受けても死なず、たちどころに身体が再生する「不死の
この事実を知った途端、私の頭には次から次へと疑問が湧きでてきました。
すなわち、
舩坂弘とは何者なのか?
名前から日本人のようだが、いつの時代の人間なのか?
そもそも、どんな経験をすれば「不死」などという能力を連想されるのか?
「再生」というからには、その言葉に相応しいエピソードがあるのか?
etc.……
一度気になってしまえば、最早それは呪縛のように私の心を蝕んでいく。(妄想)
ということで、前置きが長くなりましたが―――
記念すべき第一回マグコミ漫画研究部!~MAGCOMI作品のどうでもいいことを真面目に考察してみた~の議題は、こちらになります!!
『リィンカーネーションの花弁』の偉人の一人、舩坂弘について研究してみた
まずは、手っ取り早く舩坂弘という存在を調べてみたところ……。
彼は1920年(大正9年)10月30日栃木県に生まれ、剣道教士六段・居合道錬士・銃剣道錬士などの肩書を持ち、あらゆる戦闘技能に習熟し存命中は「生きている英霊」と呼ばれていたのだとか。
当時の日本軍には射撃のみに優れる者や剣術のみに優れる者は多数いたものの、そのどちらにも優れる万能の才の持ち主は舩坂以外に皆無であり、上官に「お前の銃剣術は腰だけでも3段に匹敵する」と保証されるほどに優れた武人だったようです。
では、彼がいかにしてそのように呼ばれるようになったのか?
それは第二次世界大戦、アンガウルの戦いの武功によるものでした。
「アンガウルの戦い」とは!?
1944年、東南アジアのパラオ共和国アンガウル島で行われたアメリカ軍と日本軍による戦争を指す言葉で、舩坂弘という名を大いに知らしめることになる戦いです。
当時、舩坂は24歳で、肉体的にも精神的にも全盛期を迎えており、戦場にて活躍しようと大いに意気込んでいました。
しかし、彼我の戦力差は絶望的でアメリカ軍22,000人に対し、日本軍はわずか1,200人程度。兵力にして約18倍もの差がありました。
おまけに、アメリカ軍は戦車50両、戦艦10隻以上、空母1隻、航空機100機以上を持ち、島全土いたるところに爆撃可能だったが、日本軍は孤立して、まともな兵器も援軍もないような状況だったと言われています。
……え、これ詰んでね?
思わずそう思ってしまう絶望的な状況にも関わらず、舩坂は諦めることなく獅子奮迅の活躍をしたそうです。
曰く、
・筒身が真っ赤になるまで
・交戦中に敵の弾に被弾し左足の太ももが抉れ、さらに迫撃の破片が左腕数ヶ所に穴をあけるも、何食わぬ顔で戦闘を続行した。
・片手片足の痛みにより擲弾筒が撃てなくなれば、唯一使える右手で直接砲弾を投げ戦った。しかし、重い砲弾を自ら投擲したせいで今度は右腕まで捻挫してしまう。
・その後、激痛でもはや歩く事すら出来ない状態にも関わらず、負傷した部下を担ぎ陣地まで這って帰還する。
・帰還の途中で敵兵3人を見つけると、負傷した身でありながら逆に奇襲をかける。瞬く間に2人を倒し、残った最後の一人が銃底で舩坂の頭を殴打するも、気を失う前にとっさに銃剣を投げて相討ちに持ち込む。
・その後、陣地にて軍医が診療しようとするも、一瞥しただけで何も言わずそっと自決用の手榴弾を手渡されるほどの重傷と判断される。
・それでも気力だけは失われておらず、死なば諸共と言わんばかりに最後に手榴弾6発を身体にくくりつけ敵軍基地に自爆特攻しようとする……。
…………………。
ター●ネーターかな?
文章だけでもわかる凄まじさ。まさに、一騎当千の猛者とはこういう人のことを指すのでしょう。
しかし、結果的にその特攻は成立しませんでした。
手榴弾の信管を抜こうとする前に、敵兵に左頸部(首)を狙撃されて流石の舩坂も地面に倒れ伏してしまいます。
そのあまりの凄まじさに、敵兵は言葉を忘れてしばし絶句し、駆けつけた軍医は手榴弾と拳銃を握り締めたままの舩坂の指を一本一本解きほぐしながら、「これがハラキリだ。日本のサムライだけができる勇敢な死に方だ」と語ったのだとか……。
……と、ここまで調べた段階で、既に舩坂が「不死身」と呼ばれるにふさわしい存在であることは一目瞭然というか、さもありなんという感じだったので、納得していたのですが……。
彼の伝説はこれだけに止まりませんでした。
この時舩坂が負っていた傷は、主要なものだけでも左大腿部裂傷、左上膊部貫通銃創二箇所、頭部打撲傷、右肩捻挫、左腹部盲貫銃創、右足首脱臼、左頚部盲貫銃創と言われています。
常人ならばどれか一つだけでも死に至りそうな傷を多数抱えています。
というか、普通の人間ならば首を撃ち抜かれた時点で即死です。
ましてや、当時は戦時中。
満足な治療環境も用意できず、手当ての質も現代とは比べものにならない状況です。
にもかかわらず……
なんと、米軍捕虜収容所にて舩坂は3日後に蘇生します。
医者も匙を投げるほどの瀕死の重傷だったにも関わらず、そのまま驚異的な治癒力で回復していき、数日後には五体満足の健康体に戻ったのだとか……。
このことについて、後年彼は「自分は元々、傷が治りやすい体だった」と証言しています。
治りやすいってレベルじゃねーぞ。
……ともあれこうして彼は歴史に名を刻み、「不死身の舩坂」「鬼の分隊長」「生きている英霊」と呼ばれるに至ったのです。
『リィンカーネーションの花弁』の著者、小西幹久先生も、そのような彼のエピソードを見て「不死の兵」という能力を考案したのだと思います。
…………。
このような突出した人間は、偉人と呼ばれてしかるべきだ!!
……と。
最初に「舩坂弘って誰よ?」と言っていた事実を無視し、調子のいいことを考えて研究を結論付けようとしていた矢先。
私は衝撃の事実を目の当りにしてしまいました。
改めて、「舩坂弘」という人物をネットで検索したところ……
( ´-_・)ン?
(;゚д゚)……
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
(;゚д゚)……!?
舩坂弘は、2006年まで生きていた……だと……!?
ほんの十数年前のことじゃねーか!!!
あれほどの激戦を潜り抜けながら、85歳までご壮健でおられたという事実にも驚きましたが、それ以上に驚いたのは『リィンカーネーションの花弁』の設定についてでした。
冒頭で説明した通り、本作は前世の才能を引き出す道具、輪廻の枝を使ってなんらかの特殊能力を得ることが肝となっています。
そして、作中の「舩坂弘」は、2014年11月25日に初版発行された単行本第1巻にて初登場しています。
と、いうことは…………
結論。
作中の舩坂弘は、最高でも8歳だった……!?
この結論をぜひとも立証したいと考えたNは、編集部のコネを利用して『リィンカーネーションの花弁』の担当編集者Iさんから、著者である小西幹久先生に突撃インタビューを敢行してもらうことにしました!
ちなみにこの担当、打ち合わせのほとんどがガンダムの話という噂があり、正直不安いっぱいです。
かくかくしかじかとそういうわけで、舩坂が8歳らしいですよ?(まったく知らんかった…)
なるほど。今日はガンダムの話じゃないんですね。
もちろんですよ。いやだなぁ、いつもそんな話してないじゃないですか(;^ω^)
舩坂8歳、なかなか愉快な考察ですねー。
では「舩坂8歳」を公式設定としときましょうか。(話終わっちゃったよ。もう少し何か訊いておかんとなー)……あ、そういえば先生の好きなモビルスーツはなんですか?
ちょっと待ってください、結論づけるのは早計ですよ。まず第一に考えなくてはいけないのは、“東耶が生きている時間が我々が生きている時間と同じとは限らない”ということです。
!?(話終わってなかった!)
もっと未来かもしれないし過去かもしれない。
ああなるほど! 『リィンカーネーションの花弁』は現代の物語ではなかった! これはこれでインパクトある結論ですね! ではこちらを公式設定に……
次に。
次に!?
時間軸が異なる可能性があります。
…??(なんか難しいことになってきた。それより好きなモビルスーツは……)
その世界では廻り者が存在し、すでに結構な時間が流れていることになりますよね。これがどこかで史実から分岐した場合、われわれの世界と同じ時期に人が亡くなるとは限らないのでは?
えーと、つまり…(わからん)……舩坂さんがもっと長生きされたかもしれないし、逆かもしれない?
そうです。例えばその世界では廻り者の存在が舩坂さんの死期を早めてしまったかもしれない。
なるほど!(あってた!) ということはあれだ! 『リィンカーネーションの花弁』は平行世界の物語だった! これもインパクトありますね! ではこちらを公式設定に……
そして一方。
一方!!?(まだ続くのか…!)
廻り者になれる条件について作中では明かしていませんが、幼少期の人間でも十分条件を満たす可能性があるんです。
ふむふむ(…此方としては
そして完全な廻り者は、廻り者になる以前の体と精神を継承するとは限らないということ。
あーどう見ても人間体じゃない廻り者とか、幼いのに大人びてる廻り者とかいますね。彼らはそういう存在ということですか。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。いずれにしても結論はこうです。
「廻り者の舩坂が8歳であるとは限らず、例え8歳であっても活躍できる」ということです。
なるほど。(なんかまとまってないけど難しい話は終わったようだ……)
そもそも「才能」で割り切れない「能力」を持っているのが廻り者です。彼らは本当に「歴史的な才能」を継承する者達なのでしょうか。
え? それは……って先生、なんだか顔にモザイクが……!
うそつきは誰だろうね? 我々かもしれないし、歴史かもしれない。もしかしたら神様かもしれないね。
!?
そして次の瞬間、そこにはもう誰もいなかった……。
…ということでN君。今回の結論はこうだ。「舩坂は8歳だったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。『リィンカーネーションの花弁』は未来の話かもしれないし、そうじゃないかもしれない。平行世界の話かもしれないし、そうじゃないかもしれない。そして、あの小西先生は途中からアラン=スミシーがすり替わっていたのかもしれないし、そもそも最初からアランだったのかもしれない……」
結局何も分かってないじゃないですか!
ちなみに小西先生の好きなモビルスーツの内の一つはウイングガンダムゼロカスタムだそうだ。
…??
知らんのか。三冠王にして名監督、かの落合博満氏が好きなガンダムだ。つまりだな、何もわからなかったような気もするが、今回分かった明白な事実はこれだ。「小西幹久先生と落合博満氏はモビルスーツの趣味が合う」ということ。
いや、今回の研究と全く関係ないじゃないですか!!
なにを言う。モビルスーツの趣味が合うということはそれ即ち、価値観が等しいということ。これは非常に重要なことだぞ。作中でも、自分たちの価値観が似てると思ったからこそ灰都は東耶を『偉人の杜』に誘ったんだしな。
な、なるほど……?……わかったような、わからないような……。
…ということで突撃インタビューを試みた結果……
「小西幹久先生と落合博満氏はモビルスーツの趣味が合う」ということが『リィンカーネーションの花弁』公式設定となりました。←!?
ウイングガンダムゼロカスタムが好きな著者が描く『リィンカーネーションの花弁』を、今後とも楽しんで頂けますと幸いです!
そして、もしまだ『リィンカーネーションの花弁』を読んだことのない落合博満ファンのそこのアナタ!!
これを機に、読んでみてはいかがでしょうか。
現在、下記にて第一話が無料で読めますので、少しでも興味を抱かれましたら、是非お読みください!
私イチオシの偉人、舩坂弘が大活躍している様をご確認頂けます!
それでは、今回の研究はこのあたりで失礼します!
以後も毎月このような形で、私Nが独断と偏見で選んだMAGCOMI連載作品の気になった点を考察しては、作者や担当編集者に突撃インタビューをしていこうと思います!
次回もお楽しみに!
©小西幹久 2020/マッグガーデン ©Mikihisa konishi 2020/MAG Garden.
※本ブログへ記載した画像は、株式会社マッグガーデンが刊行した『リィンカーネーションの花弁』①~⑤巻より抜粋し、引用させて頂きました。