【マグコミ漫画研究部】『魔女のマリーは魔女じゃない』で触れられている拷問方法について研究してみた

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お久しぶりです!編集Nです。今回の研究に取り上げるのは……この作品!!

 

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MAGCOMI読者には釈迦に説法かもしれませんが……「この作品を読んだことない」というような方もいらっしゃるかもしれないので、まずはNの独断と偏見による簡単なあらすじを説明します。

※一部作品のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

『魔女のマリーは魔女じゃない』とは!?

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16世紀・神聖ローマ帝国、魔女狩り最盛期である――…。あらゆる厄難は魔女が原因とされ、魔女とみなされた者は事実の如何を問わず拷問の末、処刑された。そんな魔女にとって恐ろしい時代に、ちょっぴり天然ボケでお人好しの魔女のマリーは、“人”と共に生きたい、でも魔女とバレたくないジレンマに苦悩する!? 魔女狩りドタバタコメディ新連載!!

 

あなたは「魔女狩り」という言葉から何を連想するでしょうか。

 

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拷問・尋問、差別・偏見、つるし上げ―――少し歴史を学んだことのある人なら、すぐさまそのような言葉や上記画像のような場面を連想するのではないでしょうか。

一般的には、悲惨なイメージを抱くことの多い言葉です。

 

本作は、その「魔女狩り」がテーマとなる物語であり、いきなり主人公であるマリーが、魔女の疑いをかけられるところから始まります。

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マリーは民衆に追い立てられながら、必死に自分が魔女でないことをアピールするのですが――信じてもらえず、ついには石を投げられてしまいます。

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その結果、マリーがとった行動とは――

 

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ブチ切れて魔法を使うことでした( ゚д゚)

 いや、魔女じゃん。

 

というように、本作はちょっぴり天然ボケでお人好しの魔女のマリーが、魔女と疑われないように四苦八苦するギャグコメディ作品です。

 

ちなみに、マリーはどれだけ不自然でも、自分のことを一切魔女だとは思っていません

 

例えば、なぜか教会に来るたびにじん麻疹ができたり――

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ある時は、魔導書と魔法円を用いた詠唱で悪魔を召喚しようとしたり――

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またまたある時は、箒に乗って空を飛べたりもするのですが――

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それでも彼女は、自分のことを魔女だとは微塵も考えていません。

 どっからどう見ても魔女だろ。

 

とはいえそんな彼女は人と共に生きたいと願い、それが故に魔女とバレないように頑張っていく――というところから物語が始まるのですが。

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そんな中、私の「気になったことは徹底的に調べないと気が済まない」という性分が鎌首をもたげました。

それは―――

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ズバリ!魔女狩りの拷問方法や処刑方法、またそれに使用する道具や器具についてです。

 

魔女狩りには拷問・処刑がつきもののようですが、本編でも語られている通りその方法は多岐に渡ります。

火刑、水審、計量、自白強要……。

この事実を知った途端、私の脳裏に数多の疑問が浮かんできました。

 

即ち、
拷問方法や処刑方法にはどのようなバリエーションがあるのか?
道具や器具は何を使うのか?
魔女狩りの成立した過程は?

拷問器具などは誰が閃いて制作していたのか?
etc.……


一度気になってしまえば、最早それは呪縛のように私の心を蝕んでいく。(妄想)
ということで、前置きが長くなりましたが―――

第9回マグコミ漫画研究部!~MAGCOMI作品のどうでもいいことを真面目に考察してみた~の議題は、こちらになります!!

 

『魔女のマリーは魔女じゃない』で触れられている拷問方法について研究してみた

 

 

 

 

まずは、そもそも「魔女狩り」がいつ頃から行われていたのかについて調べてみました。

 

魔女狩りというと、一般的には中世ヨーロッパ時代を連想しがちですが、古来より超常的な力に対する脅威の気持ちはあったようで、魔術を禁じるということは紀元前、古代ローマの時代からあったようです。

 

ただし、これはあくまで「超常的な力」そのものに対する恐れであり、魔女という呼称が生まれ、その定義が明確になったのはやはり中世以降になります。

 

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これには、キリスト教の分裂が大きく関係していました。

当時のヨーロッパは宗教改革の影響もあり、キリスト教という宗教は、カトリックやプロテスタントの他、○○派と呼ばれる旗頭となる人間が指揮するいくつもの派閥に分裂していました。

結果、枝分かれした宗派は他の派閥を邪教、異端といって弾圧・迫害し始めます。

 

その結果、異端審問という言葉も生まれ、当時最も多くの支持を得ていた宗派以外を信じる者は、悪魔と契約してキリスト教の破壊を企む背教者というレッテルを張られるようになりました。

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そうして、いつしかそれらの人間のことを「魔女」と呼ぶようになったそうです。

つまり、当時は魔女とは女性だけを指す言葉ではなく、老若男女全ての異教徒を指す言葉だったんですね!

 

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やがてその考えはどんどん飛躍し、いつしか大衆は魔女を「天災や飢饉・疫病などの苦しみ全ては魔女がもたらした」「存在しているだけで害をなす存在」などと決めつけ、裁判や処刑を行うようになっていったようです。

 

その過程で様々な拷問方法や処刑方法、それに付随する道具や器具が生まれていったのもある意味必然だったのかもしれません……( ゚д゚;)

 

しかしそうなると、やはり気になるのは魔女狩りに遭った被害者はどんな拷問や処刑方法を課されたのかということ。

気になったからには調べずにはいられない。

そのような性質の私は、仕事中にそれらを無我夢中で調べまくってしまいました。


ここでは、その一部かつ、『魔女のマリーは魔女じゃない』本編でも触れられていたものを紹介していこうと思います! まずは……

 

 

①ユダの揺籠ゆりかご

 ユダの揺り籠とは、台の上にピラミッド状の小型三角錐がついた椅子状の装置を指す拷問です。本編では、マリーの友人リタが5話にて触れていましたね!

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 作中ではマリーは聞こえないフリをして誤魔化していましたが……その詳細を調べてみたところ、中々にエグい拷問でした。

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これは対象者を全裸にして尖った頂点が肛門や陰部に当たるようにし、そこに座らせることで、痛みを味わわせる拷問器具のようです。

 

対象者は自身の体重によって突き刺されるような痛みを感じ、激痛で身をよじったり位置を変えようとしてはまた更に苦しむという痛みのスパイラルに晒され、殺すというよりは痛み・苦しみを与えることに特化した拷問器具と言えるでしょう。

 

これに座らされ、「開放してほしくば仲間の魔女を吐け」と言われた人間は、矢も楯もたまらず思いつくままに関係ない人を挙げてゆき、芋ずる式に無実の民が捕まっては拷問されていったのだとか……((( ;゚Д゚)))

 

想像するだけで身の毛がよだつ、マリーの反応も納得の拷問方法ですね…(;´・ω・)

 

 

 

②異端者のフォーク

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異端者のフォークは、両端がフォーク状になったものをベルトなどに括り付けた拷問器具を指す言葉です。

その名前からして、異端審問に使われたということが嫌でも伝わってきますね…(ll゚Д゚)

作中では、第3話の魔女検査説明時に背景に描かれていました。

 

大きさも実際のフォークと同じくらいで、パッと見何に使うのかわからない拷問器具のように見えますが、こちらも中々酷い拷問器具です。

 

基本的には、首にベルトを巻き付ける形で装着し、対象者を拘束して立ったまま天井に吊るします。こうすることで、「ギリギリ上を向いていれば刺さらない」くらいの体勢を作り上げます。

 

後は何をするのかというと、ひたすら放置です。

 人間は生きていく上で睡眠が必須ですが、この拷問器具をつけた上で眠くなり頭を下げる、喉から胸にかけてこのフォークが突き刺さるので、痛みで目覚め、対象者はうっかり舟を漕ぐことすらできなくなります。

 

人々は何日も眠れないと、意識朦朧で何をしているかもわからず、自白をしやすい状態になるといいます。

 

ある意味、人間の一番の拷問は本能に根差す三大欲求を禁じられることともいいますしね……。

 

こうして何日もの間苦しめ、最後には「お前は魔女か?」と質問し、YESと言わせて処刑する――……というお決まりのコースへ導いていたそうです。

 

見た目からは想像ができないくらいえげつない手法ですね……(´;ω;`)

 

 

 

苦悩くのうなし

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 パッと見からしてもなんだか禍々しさが伝わる拷問器具、苦悩の梨。

鉄製の小型拷問器具の一種であり、その形状が梨の形に似ていることから名付けられたそうです。こちらも作中の第3話の魔女検査説明時に背景に描かれていましたね。

 画像からもわかる通り、この洋ナシの形状は縦に割れて分割・展開することができます。

中に小さな棘や刃物を仕込んでおり、それによって対象者に苦痛を与えることが多いのだとか。

 

使い方についても多岐に渡り、口腔、肛門、鼻、おへそなどあらゆる人体の穴に挿入し、皮膚を通してではなく、直接人体の内部に痛みを与える拷問器具として使われて痛そうです。

 

その痛みの与え方も狡猾極まりなく、ネジなどで開くのをコントロールし、じわじわと動かしていくことで、より対象者の恐怖や想像を刺激していったそうです。

一度に最大の激痛を与えるのではなく、段階を踏んで強くなっていく痛みを与えることで、これ以上の痛みに晒されることに耐え切れず、魔女であるという自白強要にテキメンの効果を持つようになったのだとか……。

 

なんだか人間の「悪意」が凝縮されたような拷問器具ですね……:(;゙゚''ω゚''):

 

 

と、作中で触れられていた拷問器具を紹介してきましたが、ここで更なる疑問が。

それは、いずれこれらの拷問方法が作中に登場するのだろうか?ということです。

 

作中でいかにチートを発揮するマリーとはいえ、このような凄惨な拷問をくらっては魔女と認めざるを得ないかもしれない……( ゚д゚)

 

いや、仮にマリーが捕えられてもそんな拷問をさせまいとナハトや黒ちゃんが助けに来るのか…?

そもそもマリーに拷問は効くのか?

 

そのように次から次へと湧いてくる疑問に答えを見出したいと考えたNは、著者である小林安曇先生にインタビューを試みました。

 

 

f:id:magcomi:20200406213628p:plain かくかくしかじかとそういう訳で、上記拷問を研究する傍ら、様々な疑問が湧いてきたのですが……それらをインタビューさせて頂いてもよろしいでしょうか!

f:id:magcomi:20200312200710p:plain いろいろ調べて頂きありがとうございます。 とても興味深い議題でした。もちろん大丈夫です!

 f:id:magcomi:20200406213628p:plain そういって頂き恐縮です! では、早速――まず記事内で発表した拷問について、小林先生はご存知でしたでしょうか?

f:id:magcomi:20200312200710p:plain ある程度は知っていました。関連書籍などを読み漁ったりしていたので。書籍には紹介して頂いたものを含め、多種多様なバリエーション豊かな拷問方法が記されていましたが、中には拷問に屈せず最期まで潔白を貫いた人もいたというから驚きです。

f:id:magcomi:20200406213628p:plain それは凄い…!("゚д゚) 私があの拷問をされたら一秒で自白しちゃいそうです(笑)

f:id:magcomi:20200312200710p:plain それはそれで逆に凄いような…(笑)。でも、それだけ自らの信じるものに価値を見出していたということですよね。

f:id:magcomi:20200406213628p:plain ですね! ちなみに、こちらで紹介したものも含めて、小林先生が一番えげつないと思う魔女狩りの拷問・処刑方法はあったりするのでしょうか?

 f:id:magcomi:20200312200710p:plain 「吊り落とし」ですね。ロープを使った地面すれすれバンジーのようなものですが、これを行うと四肢の関節はすべて脱臼し、三回繰り返せば失神または絶命するそうです。他の派手で残虐な尋問(拷問)方法と違って効率的かつ低コストで最大限人間を痛めつけるという点が何よりも恐ろしいです。

 f:id:magcomi:20200406213628p:plain 聞くだけで恐怖に震えてしまいそうな拷問ですね……(((;゚;Д;゚;)))

ちなみに、こちらで紹介したものや今仰られた「吊り落とし」も含めて、記事内で発表した拷問方法がいずれ作中に登場する予定などはあったりするのでしょうか? 見たいような見たくないような複雑な気分ですが……!

f:id:magcomi:20200312200710p:plain うーん……ある…かもしれません。笑いに繋がるのであれば色々描いてみたいですが……残虐度合を考えると難しいかもですね。マリーにやらせる訳にはいきませんし(笑)

f:id:magcomi:20200406213628p:plain おぉ…!  というか…そもそもマリーには拷問は効くのでしょうか? なんだか、作中の描写を見るにいろいろと超越した存在に思えまして…!

 f:id:magcomi:20200312200710p:plain 効きます。なんだかんだいって、身体的なスペックな普通の人間なので。

f:id:magcomi:20200406213628p:plain あ、そうだったんですね。100年前のことを回想したりしていたので、てっきりもう不老不死に近い存なのかと考えていました(笑)

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 f:id:magcomi:20200312200710p:plain たしかに100年前を最近呼ばわりしていますし、マリーの年齢は300は超えているかもしれません(笑)。当然、その間に拷問や処刑を踏まえて絶体絶命のピンチも何回かはあったかもしれませんが、知恵や機転を利かせて逃れることもあったでしょうし、そこまで万能な存在ではないようです。

 f:id:magcomi:20200406213628p:plain ふむふむ……ちなみに、またマリーが拷問されるようなことがあれば、相棒(?)である烏のナハトと黒猫の黒ちゃん(※下記参照)は助けに来てくれるのでしょうか?

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  f:id:magcomi:20200312200710p:plain ナハトは必ず行くと思います。黒ちゃんは……行けたら行くと思います。

f:id:magcomi:20200406213628p:plain その言葉は行かないフラグ!(笑)……まぁ、マリーは一人でも魔法を使ってなんとかできるかもしれませんね。ちなみに、マリーは1巻冒頭で木を操作する魔法(?)を使っていましたが、自然現象を操ったり、それぞれの属性魔法のようなものも使えるのでしょうか。

 f:id:magcomi:20200312200710p:plain マリーは古い神と自然に深く愛されている存在なので、仰る通り自然に即したいろんな魔法(本人曰く体質)は使えると思います。ただ、新しい神(キリスト教)との相性が絶望的に悪いんです。

f:id:magcomi:20200406213628p:plain  古来より、人類は大自然や災害などを総称して「神」と言っていたようですが、そういったものではない人為的に敬われるようになった神とは相性が悪い……って感じでしょうか。

f:id:magcomi:20200312200710p:plain はい。そういった相性の悪さを加味して今後は、いろんな魔法を使うマリーを描ければと思いますし、許されるのであればキリスト教の総本家であるカトリック教皇や、史実上の人物なんかも描ければと考えています。是非ご期待ください!

f:id:magcomi:20200406213628p:plain 是非楽しみにしています! それでは小林先生、本日はありがとうございました!

 

 

と、いうことで……

もしかしたら、ここで紹介した拷問方法やその他の魔法が、今後作中で登場するかもしれないということになりました!

是非それを踏まえた上で本作を楽しんで頂けますと幸いです!

 

そして、もしまだ『魔女のマリーは魔女じゃない』を読んだことのないそこのアナタ!!

これを機に是非読んでみてはいかがでしょうか。12月10日に最新第2巻が発売され、徐々に広がっていく『魔女のマリーは魔女じゃない』ワールドを是非ご堪能ください!

 

以後もこのような形で、私Nが独断と偏見で選んだMAGCOMI連載作品の気になった点を考察しては、作者や担当編集者に突撃インタビューをしていこうと思います! 次回もお楽しみに!

©小林安曇 2020/マッグガーデン ©Azumi Kobayashi 2020/MAG Garden

※本ブログへ記載した画像は、株式会社マッグガーデンが刊行した『魔女のマリーは魔女じゃない』①巻より抜粋し、引用させて頂きました。