お久しぶりです!編集Nです。今回の研究に取り上げるのは……この作品!!
MAGCOMI読者には釈迦に説法かもしれませんが……「この作品を読んだことない」というような方もいらっしゃるかもしれないので、まずはNの独断と偏見による簡単なあらすじを説明します。
※一部作品のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。
『タイトルが決まらない(仮)』とは!?
謎の部活動・総合メディア文化研究部。その活動内容とは作品の「タイトル」を語り合うこと。田口・石神・近西の三人はマンガも映画も小説も垣根なく、あらゆるメディアのタイトルを駄弁り倒す!新機軸オタクコメディスタートです!
総合メディア文化研究会。
この字面だけみて、活動内容を予想できる読者はいないのではないでしょうか。
あまりにわかり辛かったのか、本作の主役・田口さんに第一話にしてこのように言われるくらいです。
では、はたしてこの研究会は何をする会なのか?
それはズバリ! タイトルについてその素晴らしさを語り合う会でした。
映画、アニメ、小説、ドラマ、漫画、ゲーム……。
この世には数多の作品と、その作品を発信する媒体が存在します。
そんな中、その一つである小説についてはこんな名言が生まれました。
これはドイツの哲学者、ショーペンハウエルの言葉です。
何を当たり前のことを……と言いたくなりそうですが、この言葉には下記のような続きがあります。
人生は短く、時間と力には限りがあるからである。
つまり悪書を読むなと言っている訳ではなく、限りのある人生においては、良書と言われている作品だけを読んだ方がより勉強になるということを説いた言葉であると私は解釈しています。
これは、具体的な数字に表してみるとより顕著です。
例えば人生を80年と区切った際、時間で換算すると24×365×80=約70万時間しかないということになります。
人生の3分の1は睡眠、3分の1は仕事や学校などの生活に必要な時間に割かれると言いますから、余暇として使える時間は実質その3分の1、約23万時間しかないと言えるでしょう。
そして、1冊の本を読み終えるのにかかる時間は人それぞれですが、平均して3時間くらいと言われています。
これを先ほどの余暇時間で割ると……約8万ほど。
ただこれは、余暇時間に全て読書をすることを想定した数字です。
当然人間であればそれ以外の趣味もできるでしょうし、時には何もせずダラダラすることも考えると、実際はその10分の1程度まで減るとみて間違いないでしょう。
とすると、実質人ひとりの一生で読める本の冊数は約8千冊程度しかないのです。
これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは人によりますが、そう考えると悪書を読んで時間を無駄にしたくないというショーペンハウエルの気持ちも少しはわかります。
では、問題はいかにしてその良書と悪書を見分けるのか?
「そんなことできれば苦労しねーよ」と思わず言いたくなりそうですが、それは作中の登場人物も同様だったようで、きちんとツッコんでいました。
更に続けて、中々興味深いことを言っています。
人間が作品を選ぶとき、まず何を見ているのか?
元々好きな作者であれば著者名を、
好きなジャンルがあればジャンル分類を、
メディア化した作品なら、まずは好きな声優や俳優が出ているかを――。
人によって注目するところはそれぞれですが、「まず」という枕詞がついたときに見る箇所と言えば、ただ一つでしょう。
全ての人が共通して絶対に目にし、参考にするモノ。
それこそが――
タイトルになります。
タイトルなくして作品なく、作品なくしてタイトルなし。
思わずそんな言葉が出てきてしまうほど、作品にとって重要な要素がタイトルなのです。
その考えは作中の登場人物も同様だったようで、こうして古今東西のあらゆるタイトルを研究する研究会が立ち上がり、そこに所属する美少女・田口さんとどこかアンニュイな雰囲気を持つ石神くん、やや天然(?)のチカちゃんの3人が織り成すタイトル研究活動が始まる――というところから物語がスタートするのですが。
ここで私の「気になったことは徹底的に調べないと気が済まない」という性分が鎌首をもたげました。
それは――……
田口さんたちそれぞれが、一番好きなタイトルは何なのだろう? ということです。
作中でも事あるごとに数多のタイトルを羅列している3人組ですが、「好き」が高じればどうしても序列が生まれるものです。
マイベストランキングというような言葉もある通り、そのジャンルのオタク・研究家と呼ばれる人こそそれは顕著で、「好き」の中でより明確にその程度を決めたがるものではないでしょうか。
そして実は、こう見えて私Nも中々タイトルにはうるさい男です(自称)
書店でバイトをしていたこともあるせいか、ユニークなタイトルもそこそこ知っているという自負があります。
そんな私が、彼女たちにピッタリのタイトルを当ててみたい!
また、数多のタイトルを見てきた彼女たちも思わず唸らざるを得ないようなタイトルを紹介して悔しがらせたい!
というかそもそも、趣味嗜好も違うはずだから、そんな彼女たち一人一人の好きなジャンルやタイトルを分析してみたい!
そしてアッと驚くその顔が見たい!
また、彼女たちの好きなタイトルベスト10が知りたい!
あわよくば原作者や担当編集者が一番気に入っているタイトルも知りたい!
etc.……
一度そう思ってしまえば、最早それは呪縛のように私の心を蝕んでいく。(妄想)
ということで、前置きが長くなりましたが―――
第13回マグコミ漫画研究部!~MAGCOMI作品のどうでもいいことを真面目に考察してみた~の議題は、こちらになります!!
『タイトルが決まらない(仮)』の登場人物が気に入りそうなタイトルについて研究してみた
まずは、敵を知り、己を知れば百戦危うからずという孫子の言葉通り、作中に描かれた描写から彼女たちの趣味嗜好を調べることにしました。
好きなジャンルがわかれば、それだけで相応しいタイトルについても絞り込めると考えたためです。
まずは作中一(?)の美少女・田口さんから。
田口さんはジャンルをまたいで様々なタイトルを口にしていますが――
1話の注釈に、見過ごせない文章を発見しました。
「田口はキューブリックタイトルが大好きなのだ!」……との一文。
キューブリックとは、アメリカ出身の映画監督、スタンリー・キューブリックのことです。
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』など数々の名画を生み出した監督であり、映画史における最も偉大で影響力のある映画製作者の一人とも言われています。
キューブリックの作品は、これだ!というように定義し辛いです。ジャンルもSFからホラー、ノンフィクションまで多岐に渡り、タイトルも短いモノから長いモノまで多種多様です。
そんなキューブリック作品群のタイトルが好きな田口に似合いそうなタイトル……
中々難しい問いかけですが、キューブリック関連で挙げるなら
『Kubrick by Kubrick』…でしょうか。
タイトルを直訳するなら、「キューブリックによるキューブリック」という言葉になります。その名の通りキューブリックが何十年にもわたって受けたインタビューをまとめたもので、キューブリックの素顔に迫るドキュメンタリー映画として高い評価を得ているのだとか。
タイトルのユニークさもさることながら、語感も良く、なんだか不思議と発言したくなるような魅力がありますね!
そもそも、「キューブリック」という名前からしてカッコいいと私は考えています。
なんだかルービックキューブのような知的なゲームや、某名作映画・某ゲーム機・某車種なども連想できて、様々なイメージが頭の中に広まります。
そんな名称が二回も繰り返されるタイトル……!
これならば、キューブリックタイトル好きの田口さんに相応しいといえるのではないでしょうか。
また、田口さんといえばこんな描写もありました。
「ミステリーのタイトルは漢字やカタカナの羅列に緩急がついているのが美しい」…という台詞には、一理あると言わざるを得ません。
カタカナや和製英語と日本語が組み合わさり、絶妙な緩急をつけて調和したタイトルはそれだけでどこか美しく感じるものです。
ちなみに、Nがこの組み合わせでカッコいいと思うミステリタイトルベスト3は
『セピア色の凄惨』
『アマテラスの暗号』
『ティンカー・ベル殺し』
になります。気になられた方は是非調べてみてください!
閑話休題、そんな田口さんに相応しいタイトルのミステリ作品と言えば――。
前述した3つでもいいのですが、カッコよさよりはユニークさを重視した方が喜ぶかなと考えた結果、下記タイトルが頭の中に閃きました。
『チンプン館の殺人』
作家・山田風太郎先生の短編集『十三角関係』(このタイトルだけでも読んでみたい気にさせられるからすごい)に収録されている短編ミステリです。
その名の通り、よくわからない館、チンプン館で起きた殺人事件の話なのですが……とにかくタイトルが秀逸で、思わずクスリと来る魅力があります。
おまけにミステリとして定番の「館」モノ、「●●の殺人」というタイトルの基礎も押さえている。
これなら田口さんも満足してくれるタイトルに仕上がっているのではないでしょうか。
次に、田口さんの良きツッコミ役(?)石神くんについて。
彼については、作中にこんな記述があります。
明智という言葉の注釈にある「俺は神津恭介が好きだよ」 という台詞。
この神津恭介というのは、作家である高木彬光先生が執筆されたシリーズに登場する名探偵の名前になります。
頭脳明晰・冷静沈着・容姿端麗であり、そのあまりのチートっぷりに「神津の前に神津なく、神津の後に神津なし」と謳われたこともある天才探偵です。
日本三大探偵の一人とも言われており、
(ちなみに残る二人は明智小五郎・金田一耕助という誰しも一度はその名を聞いたことのある名探偵です)
ミステリ好きの中ではかなりの知名度を誇るこの神津恭介が好きとなれば、彼にオススメするタイトルは決まったようなものでした。
その名も――……
『人形はなぜ殺される』
神津恭介シリーズの代表作であり、傑作と名高いミステリです。
内容もさることながら、タイトルが非常にカッコよく際立っている作品でもあるかと思います。
ちなみにどうでもいいですが、この「なぜ」をタイトルに入れて疑問形にすると、どんなタイトルでも二割増しくらい読んでみたい気にさせられる気がします。
その中でも私が特に好きなのは、
『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』
の3つです。どれもタイトルだけでも「おっ!」と思い、思わず手にとってしまう魔力を秘めているかと思います(`・ω・´)
これならば、石神くんも興味を惹かれるタイトルに仕上がっているのではないでしょうか。
最後に、謎多き天然(?)キャラ・チカちゃんについて。
彼については趣味嗜好がよくわからず、かなり悩んだのですが……
2話の注釈にこんな記述がありました。
「春雨が好き」……というチカちゃんの紹介文。
この段階では特に気にならない情報なのですが、5話にて新キャラに田口さんを取られる(?)と考え発言したチカちゃんを見て、点と点が繋がり線になりました。
とにかく思いつくがままに悲恋タイトルを呟き続けるチカちゃん。
田口さんをよほど取られたくなかったのでしょうか……?
そんな彼を見て、彼にうってつけのタイトルが私の頭に浮かびました。
その名も……
『春雨物語』
作家・上田秋成先生の著作。
失恋からくる悲劇や奇談を教訓を交えて記した物語で、食材の春雨とは全く関係がありません(笑)
とはいえ悲恋譚を纏めた傑作として名高く、このときのチカの心情にピッタリに加え、好きな物がタイトルに入っているだけでチカちゃんは喜んでくれるのではないかと思いこちらを選びました。
こういう、ギャグセンスという訳ではないですが、意図的・不可抗力によらず何らかのダブルミーニングになっているタイトルもいいですよね!
ちなみにその系統だと、
『夢・出逢い・魔性 You May Die in My Show』
『封印再度 WHO INSIDE』
(両タイトルともサブタイの英語と日本語読みが掛かっている)
『定年退食』(藤子・F・不二雄先生のSF短編漫画。過度の少子高齢化社会によって、老人の食料が配給制になった未来と定年退職という言葉を掛けている)
『推しの子』(あえてノーコメント。読めばわかる)
なんかのタイトルが私は好きです。
ひとまず、3人に勧めたいタイトルはこれくらいでしょうか。
……と、そうして結論付けようとした矢先――
私は、ある意味(?)田口さんたち全員、いや『タイトルが決まらない(仮)』という作品自体に最も相応しいのではないかと思うタイトルを見つけました。
なので、是非そちらも紹介させてください!
その名も――
『(Untitled) 』
1971年にリリースされた、イギリスのロックバンド・レッド・ツェッペリンの第4作目のアルバムになります。
この作品の何が凄いかというと、見ればわかる通り正式名称(タイトル)が一切ない無題の作品というところです。
タイトルとして呼称されている「Untitled」は、タイトルがないので「無題」の意味でそう名付けられているだけであり、通称として言われている『レッド・ツェッペリン IV』の呼称も、レッド・ツェペリンというアーティストの4枚目のアルバムなのでそう呼ばれているだけで、正式名称ではありません。
それどころか、本作はジャケットにも一切のクレジット情報が記載されず、曲名やなどの最低限の情報すらレコードの内袋にのみ記載されていたというから驚きです。
ではなぜそのような「タイトルがない」作品を作ったのか?
本バンドのリーダーにして、アルバムのプロデューサー、ジミー・ペイジ氏はこう語ってます。
「僕等は純粋に音楽だけを評価の基準にして欲しかったんだ」
「所詮バンド名なんて何の意味がある? レッド・ツェッペリンって何? 大事なのは僕等の音楽なんだ」
――そう。
レッド・ツェペリンの名前が売れていくにつれ、メディアやファンに形作られるアーティストとしてのイメージに縛られたくないという想いから、純粋に音楽だけを評価してもらうべく、確固たる意志でもって「無題」に行き着いたのです。
「作品を理解させる」ものであるタイトルをあえてつけずに、「不必要な情報は全て削ぎ落し、ただありのままの作品のみを評価してほしい」との想いでつけられた無題というタイトル。
作品を理解させるために、あえて「タイトルを付けない」という選択も創作者の中にはあるのだと思うと、タイトルを決めるということは本当に奥が深いモノだと痛感させられますね……!
これこそ、まさにタイトルを名付ける意義が問われる、ある意味で本作に最も相応しい作品なのではないかと強く感じました。
……と、いうことで結論。
編集Nによる『タイトルが決まらない(仮)』の登場人物が気に入りそうなタイトルは、
田口さん:『Kubrick by Kubrick』・『チンプン館の殺人』
石神くん:『人形はなぜ殺される』
チカちゃん:『春雨物語』
であり、ある意味で本作に最も相応しいタイトルの作品はレッド・ツェッペリンの4枚目のアルバム 『(Untitled) 』である!!
この結論をぜひとも立証したい、そしてあわよくば田口さんたちのリアクションが知りたいと考えたNは、編集部のコネを利用して『タイトルが決まらない(仮)』の担当編集者あさんと、原作者であるウエハラシホ先生に突撃インタビューを敢行しました!
……かくかくしかじかとそういうわけで、田口さんたちや本作に相応しいタイトルを決めてみました! いかがでしょうか!
いや~なかなか面白い結論でした!
ですね! いろんなタイトルが知られて面白かったです。常に「へぇ~~!」って思って読んでましたね(笑)
楽しんでいただけてなによりです(*'ω'*)
じゃあ、改めてこの結論についてみていきましょうか。
お願いします! 最初は『Kubrick by Kubrick』ですが、いかがでしょう? ちなみに、田口さんはキューブリック作品自体が好きな訳じゃなくて、キューブリック作品のタイトルが好きなんですよね。
そうです。サイコホラーにつきそうなタイトルが好きなだけで、サイコホラーというジャンル自体はそこまで好きでもないです。怖いので(笑)
作中で触れてた『隣の家の少女』も実は見てないようですもんね。
でもタイトルは気に入ってるという(笑)。邪道なオタクですよね、田口は。『Kubrick by Kubrick』は、語感というか……この文字並びがいいですよね。韻というか。キューブリックっていう単語がいいのかな?
あ、その気持ち凄くわかります。
CじゃなくてKだからいい気もします。
それですね!(笑)。Cから始まるキューブだと、いろんな場所でみますし……たぶん、田口もそこに賛同してくれるんじゃないかと思います!
よかった! では次の、『チンプン館の殺人』についてはどうでしょう? ちなみに、作中で田口さんがミステリータイトルについて持論を語っていましたが、これはウエハラ先生の持論でもあるんでしょうか?
それもありますし、皆そう思うだろうな、というのを代弁しているというか…(笑)
ちなみに、この作品は短編集『十三角関係』に収録されているようですが、『チンプン館の殺人』と『十三角関係』だったら、田口はどっちが好きそうですかね?
好きそうは『十三角関係』の方でしょうね! 田口は『チンプン館の殺人』はひょっとすると「あざとい」と言うかもしれません(笑)
あ~~わかる!! 狙いすぎてるって言いそうですね(笑)
そうなんですよ! 逆に、この手のタイトルは石神の方が好きかもしれません。
なるほど~~。たしかにそう言いそうな気がしてきました(笑) ちなみに、それ以外のタイトルだと気になったものはありましたか?
『ティンカー・ベル殺し』ですかね!
『アリス殺し』のシリーズですよね?
そうです。『アリス殺し』はご存知ですか? ほかには『クララ殺し』や『ドロシィ殺し』がありますね。
田口が好きそうなのも断然『ティンカー・ベル殺し』ですね。何より中黒があるのがいいんですよ。アクセントとして好きそうだな、と…(笑)
中黒に注目するんですね…(笑)
そういうところに拘りがあるのが田口なので…(笑)
フムフム……なるほど、ありがとうございました! じゃあ、その次を。石神に向いている作品として『人形はなぜ殺される』を挙げましたが、こちらはいかがでしょうか!
うぅ~~~~~~~~~~ん……実は、あさんには何回も言ってるんですけど、石神ってスタバでMacBook開いているのがカッコイイと思ってるような男なんですよ。
ちょっとスカしているというか、カッコつけているって感じですよね(笑)
はい。根本的にちょっとイタイんですよ(笑)。だから、本作よりもうちょっとキザっぽいタイトルの方が好きかな、と思います(笑)
例えばNくんが挙げてくれた「なぜ~~」のタイトルだと、『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』とかは好きそうですね!
あ、そうですね。たしかに好きそうです。『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』はめちゃくちゃ田口が好きそう(笑)。田口が好きなのって、めっちゃ引っ掛かりのある……なんていうか、メールのタイトルで全部すんでるじゃん!! 的な、そんなのが好きなんですよ(笑)
なるほど…すごく勉強になります(笑)
石神は『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』は好きだと思いますが……好きな理由の一つに、古典だからというのもあると思います。たぶんこれ、2018年刊とかだったら絶対好きになってないですね(笑)
「古いもの知ってる俺カッコいい」みたいな?
ですね。「古典作品だからこれはイイものに決まってる」みたいな固定概念がありそうです(笑)
なんだか石神くんがそう言っている姿が脳裏に光景が想像できるようです(笑)。じゃあ、最後にチカちゃんを。チカちゃんは本当に難しかったんですが……『春雨物語』を選んでみました! いかがでしょうか(`・ω・´)
もう、チカは『春雨物語』というタイトルが読めたら100点なので…(笑)
流石に春雨が入ってるから、読めるんじゃないですか(笑)
どうだろう…。チカって、タイトルが好きっていうか石神と田口が好きなんですよ。覚えようとしてるわけじゃなく、2人の影響を受けて知らず知らずの内に覚えていってるので。私の中でチカちゃんのイメージは「5歳児以上、超能力者以下」みたいな感じです(笑)
そういう塩梅だったんですか。じゃあ今度から「3歳児だな」と思ったら没にしますね。
えーーー!!
バッサリいってる…(笑) でも、こういうダブルミーニングになっているタイトルとかもいいですよね。例えば例にも挙げた、森博嗣先生の作品タイトル『夢・出逢い・魔性 You May Die in My Show』『封印再度 WHO INSIDE』とかはどうでしょうか。
やっぱりいいですよね、ダブルミーニング。それに実は……一回コレ、本編で使おうと思ったことがあります。1話のときに…(`・ω・´)
え、そうなんですか!?
はい。でも、なんだか上手く纏まらなそうだったので、没にしました。なんというか……あまりに上手いタイトル過ぎて、田口は一周回って失礼な感想を抱くかもしれないと思い…(笑)
そんなことが……( ゚д゚) それはそれで、見たかった気もします。では最後に『タイトルが決まらない(仮)』という作品に、ある意味で相反するこの『(Untitled) 』についてはどうでしょうか。
アンタイトルド……カタカナだったらなんかいいなーと思ったんですけど。アン・タイトルドみたいに中黒が入っていても良さそう。英語だと、うーーーん……どうだろう。あの3人のリアクションが読めないですね。でも、無題ネタは面白いので本編でもいつかやりたいネタの一つです。とはいえたぶん田口は、媒体によっては「しゃらくせぇ!」っていうと思います(笑)
あー、言いそうですね(笑)
だから、石神:あり 田口:ものによってなし チカちゃんは…話聞いてないかなって感じです(笑)。石神はありなのは、キザだからですね。無題という概念自体にときめきを覚えるというか…
無題っていうその心意気の方を尊重するタイプですよね。
はい。石神は過程を大事にして、田口は結論を大事にしてるんですよ(笑)
でも、田口さんは血液型をB型っぽいねというと「私を定義するな」と返したと1話の注釈にありましたよね! 無題っていうのも、ある意味先入観で定義されることを嫌ってつけたと思うんです。そう考えると、似た思想ということで田口さんは気に入ってくれるのかなとも思ったんですが…
あ~~! アレに関しては、実は……定義がどうとかじゃなくて、「私の」定義を決めるなと田口は言ってるんですよ(笑)。「私」が主語で、定義ということはどうでもいい。「私をわかったつもりになるな、私を決めるな」って意味で田口は言ってるんです(笑)
唯我独尊ですね(笑)
流石田口さん、自我が強い!(`・ω・´)。いや、いろいろ勉強になりました。ありがとうございます! ちなみに……余談ですが、お二人が一番好きなタイトルというのは、何になるんでしょうか?
う~~ん……一番と言うと、決め難いんですが…氷菓の中にある短編、『連邦は晴れているか』でしょうか。物語含めて大好きですね。
おぉ、なんだかカッコ良さげなタイトルですね! そこはかとなく戦記モノのニオイがする……! 今度是非読んでみます! 続いて……あさんは?
一番っていうと難しいな…。あ、最近だと『あの子は貴族』が好きですね。こういうタイトルを聞くと「あ、これはもしかして百合では…?」と感じて食指が動き、実際百合みを感じたときの喜びが半端ないので(笑)。このような百合アンテナに引っかかるタイトル全般が大好きです。『ナイルパーチの女子会』とかも好きかな。
ちなみに、百合みってどういうところで感じ取るんでしょう?
………女の女に対する眼差し、感じませんか?
……え?
まず「あの子」って二人称を使うってことは話者と対象の関係が、年上・年下(大人・子供)か、女子と女子なんですよ。加えて「貴族」という単語。「貴族」って本来自分より社会の上層にいる相手に使う言葉じゃないですか。だけれども「あの子」という対等かちょっと下に見て愛でる感じの言葉と合わさるとあら不思議。そこに女と女の上下があるとも対等さがあるとも言い難い関係性が浮き彫りになるわけですよ。『ナイルパーチの女子会』もナイルパーチという凶暴性を感じるワードチョイスに女子会の組み合わせ! これはもう女と女で何か起こるわけですよ! 何かが起こらないわけがない! 女が女に特別な感情を抱いて連帯したり激しく分離していったりするのってもう百合じゃないですか! 今日日的にはシスターフッドって言うじゃないですか! っていうかそもそも論として、私の定義する百合というのは「女と女の特別な感情の総称」なんですよ。それは恋愛的な意味での好意だけでなく、不思議な連帯感であったり激しい嫌悪感だったり、勝手に抱いた憧れとその裏切り……そういう女と女の間に起きる、全く合理的ではない、強い感情の噴出を私は百合だと思うんですっっっ………!!
……………(すごい熱量だ……)
……………。
(コソコソ)打ち合わせでもこんな感じなんですか?
(コソコソ)たまにありますよ…
しかし、改めてなんだかすごい熱量ですね、百合に対して(笑)。もう百合タイトル鑑定士じゃないですか。
百合タイトル鑑定士・あさん。
いいネーミングですね、コレ。よし、決めた。これを今回の結論として発表しましょう!
わかりました!(`・ω・´)
……………………………………………………。
……………………………。
…………。
…ということで、インタビューを試みた結果……田口さん・石神くん・チカちゃん3人はそれぞれ紹介した作品タイトルの内、いくつかはそこそこ気に入りそうであり、また
本作の担当編集あさんは、タイトルで百合か否かを考察することに長けた「百合タイトル鑑定士」ということが『タイトルが決まらない(仮)』の公式設定になりました!←
今後、本編で百合系のタイトルが取り上げられた際は、担当あさんの名鑑定士っぷりがいかんなく発揮されているのかもしれません(笑)
そして、もしまだ『タイトルが決まらない(仮)』を読んだことのないそこのアナタ!!
これを機に、読んでみてはいかがでしょうか。
現在、下記にて第一話が無料で読めますので、少しでも興味を抱かれましたら是非お読みください!
また、4月14日(水)より待望の『タイトルが決まらない(仮)』の第1巻が発売されております♪ よければ是非ご購入ください!
以後もこのような形で、私Nが独断と偏見で選んだMAGCOMI連載作品の気になった点を考察・研究していこうと思います! 次回もお楽しみに!
©ウエハラシホ・藤野ハルマ/マッグガーデン ©SHIHO UEHARA・HARUMA FUZINO/MAG Garden
※本ブログへ記載した画像は、『タイトルが決まらない(仮)』1巻より抜粋し、引用させて頂きました。