2016年10月期
新マンガ賞第10回募集、 佳作1作品、期待賞1作品ほか期待作複数選出!
今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(10月31日締切分)
賞金10万円
受賞作掲載
『ケルビムの塵』
やすなかよ
あらすじ
マフィアのボスから護衛任務に指名されたセシリオ。護衛対象であるミステリアスな美女ルチアーナにはある秘密が……。
作品講評
映画を思わせるような重厚で読み応えあるドラマ性に、審査員一同うならされた。特異な能力を持つルチアーナの造形も白眉ながら、彼女に呑まれないセシリオの存在感も見事。小道具や演出も光っており、最後まで飽きさせずに読ませる引力があった。作画面での荒さは目についてしまうため、その伸び代を強みへと押し上げて、魅力あるストーリーをさらに紡いでいってほしい。
賞金5万円
受賞作掲載
『ウォールフラワーの死神』
アルティータ(16)
あらすじ
街の少年トニョが出会った女の子は、丘に住む「死神」の娘だった。儚い美しさに魅了されゆくトニョに、彼女が見せた光景は――。
作品講評
強い日差しが生む陰影のコントラスト、情緒あふれる街並み、独特の死生観など、異文化の世界に読者をいざなう描写は素晴らしかった。言葉にせずとも心情が伝わってくる表情づくりや、開放感ある見せ場とメリハリに富んだ構成力からも、今後の可能性を感じさせる。ページ全体の画面クオリティがさらに底上げされた次回作を期待したい。
賞金1万円
『カイフミフルコトフミ』
しおめどり(25)
あらすじ
日本神話の神が現実世界に飛び出し、古事記を滅却し続けている―― 最後の古事記を持つ少年に迫られた選択とは?
作品講評
すっきりとした空間構成や、シンボリックな表現技法は目を惹いた。しかし構成面では、古事記設定に引っ張られて説明偏重になっている個所が散見されたのが残念。キャラクター同士のドラマもしっかり組み上げてほしい。描きたいテーマにこだわるだけでなく、読み手に届くよう物語を練る意識を。
『不運送屋さん』
カケミツ(22)
あらすじ
不運にまみれた人生を送ってきた青年ヤマオ。そんな彼の前に、不運を売ってほしいという謎の男ニケが現れ……!?
作品講評
不運を題材にしながらも、センスとコミカルなテンポ感で読ませる作品だった。ただ序盤の勢いに比べて、後半での息切れ感や消化不良感が残ってしまった。また、画面作りとトーン処理が散らかった印象を生んでいたため、読者目線での読みやすさを改めて意識してほしい。
賞金3万円
『山姥』
梅原彩香(34)
あらすじ
幽谷をさまよう旅の僧は、不思議な空気をまとった白拍子と稚児に出会う。互いの身の上を語り合ううちに――。
作品講評
ネーム段階でもぐいぐいと引き込む演出・コマ構成がうまく、場面づくりへの意識の高さがうかがえる。特徴的なセリフ回しも、一見した敷居の高さに反してすらすらと読ませることに驚いた。今作では会話劇が主であったので、動きのあるストーリーでも持ち味を活かせるか、是非読んでみたい。作画面では、色気を帯びた表情に惹かれるものがあったが荒さも目立った。ぜひ次回作は根気よく描きあげてほしい。
『ブリリアント・ティアー』(完成原稿部門)
一条もい(23)
『アンナンジュパッセ』(完成原稿部門)
千市カイエ(33)
『植人-プラント-』(チャレンジ部門)
管野遼(22)
『戦国ウォーロック』(チャレンジ部門)
古河ハリ
『サーカスの檻』(完成原稿部門)
七糖レンジ
引き続き応募数が多く、佳作1作・期待賞1作、チャレンジ部門で入選1作が選出される、有意義な漫画賞となった。
佳作『ケルビムの塵』、期待賞『ウォールフラワーの死神』は、ともに独自の世界観をもった作品であり、今後の可能性を大いに感じさせる作家であった。自身の個性を保ちつつ、今後のさらなる成長を期待したい。
また、チャレンジ部門入選『山姥』は、長いページ数にも関わらず、想いがしっかりと込められたネームを見事に描いており、今後の成長が楽しみな作家である。
次回以降も、幅広いオールジャンルの作品の投稿を、引き続き楽しみにしている。