月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年2月期

2019年2月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第38回募集、入選1作品・佳作2作品・奨励賞1作品・努力賞3作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(2月28日締切分)

完成原稿部門:入選賞金30万円
受賞作掲載 + 読切1作分の掲載確約

『煙は異なもの』

『煙は異なもの』

ツカサ

あらすじ

職質されるほど怪しげな風貌で、煙草の代わりに線香を食べる奇妙な男、煙羅。彼は夜の公園で、家に帰ろうとしない少女、千夏と知り合う。最近殺人事件が起きたその近辺で、犯人は未だ捕まっていない。早く帰るよう告げる煙羅に彼女の反応は…?

作品講評

ストーリーに対する評価が非常に高かった本作。前投稿作に続き題材が良く、伏線の貼りも良い意味で素直で読みやすい作りになっており、終始面白く読めた。反面、煙羅の仕事内容は分かるが、具体的な職業が明確ではないのが勿体ない。また、背景に少し硬さがあり、トーンが荒削りな印象なので改善が課題か。商業掲載を目標にさらに磨きをかけていってほしい。

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完成原稿部門:佳作賞金10万円
受賞作掲載

『stardust bloom』

『stardust bloom』

日生陽(20)

あらすじ

自身の演劇の才能に失望していた高校生・土方蓮は、ある日、クラスメイトの天才高校生役者・織田煌介に推薦され、学祭演劇「シンデレラ(灰かぶり王子)」の主人公役に抜擢される。しかし、台本すら覚えられない蓮は、かつて独り善がりの演技で学芸会を台無しにしてしまった苦い過去を思い出してしまい…?

作品講評

後半にかけて畳みかけるような展開とエンタメを意識したストーリーに引き込まれた。一方で、「演劇」というテーマを扱う以上は、キャラクターの凄味を魅せるに足る説得力と演出力がもう一歩ほしかった。地力は感じるので、あとは外連味のあるセリフの言いまわしや画面づくりを磨いていこう。

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『あなたの薬』

『あなたの薬』

富山コメコ(22)

あらすじ

悩みを抱える人が迷い込む薬屋。店主の環は“対価”と引き換えに、客の願いを叶える薬をくれる。“副作用”に気を付けて服用すれば、幸せな薬だが……。

作品講評

ブラックユーモアを取り入れた意欲作。前投稿作に続き、洋風の衣装に和風の建物を組み合わせるなど、良い意味で独特のセンスがある。作画・構成において格段に向上が感じられた。人物の横顔など特定の構図で作画の崩れがあるので、研鑽してほしい。メインキャラである店主が、ストーリーの重要な場面にしか出てこないので、キャラとして弱く感じる。ゲストキャラの葛藤にスパイスを加えられるようなアクションを起こすなど、どうしたらキャラが立つかを考えて今後の作品作りに活かしてほしい。

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完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『ひみつの悪魔とセーラー服』

『ひみつの悪魔とセーラー服』

稲乃芽子

あらすじ

ある日、女子高生・椿原伊吹は美青年の夢魔・アダムに襲われる…かと思いきや、触れる直前に急にアダムは少年姿になってしまい…!?

作品講評

キャラクターそれぞれが可愛く描かれており、丁寧な描線と目力を感じさせる描き込みが好印象。一方で、キャラコメディものとしては話を盛り込みすぎており、テンポの悪さやメリハリのなさに繋がってしまった印象がある。お色気要素の有無に関わらず、自身の恥じらいを捨て、もっとキャラを振り切らせて物語を転がしてほしい。キャラを振り切らせるには、企画段階から自分の好きを詰め込み、ためらいなくさらけ出すのも手。世間の好きと自分の好きを掛け合わせて、読者を掴む作品作りを目指して欲しい。

完成原稿部門:努力賞賞金1万円

『ギフト』

『ギフト』

ふじせ(19)

あらすじ

体から有毒ガスが出る殺人犯・洋介。突然彼の前に現れた死にたがりの不死身な男・リサは、洋介に殺してもらいたくて何年も共に過ごすが…。

作品講評

読者を引き込む力があり読みやすい構成。絵はまだ粗削りだが、内容が斬新で面白い。ただ、今回の作品は読者を選ぶ題材で後味は悪いものだった。読者あっての漫画なので、よりキャッチーな題材選びが必要か。また絵の見せ方、特にグロ描写には、ただ気持ち悪いだけのモノにならないよう細心の注意を。そして、キャラ立てはできているものの、キャラの思考が理解できない部分が散見された。異常者キャラだとしても異常者なりのロジックはほしいところ。総合的な漫画力は高いので今後も伸びが期待できる。

『cor』

『cor』

森人有(20)

あらすじ

記憶を失った少女・コルは、街で茫然自失としている折に一人の名前のない少年と出会う。コルと少年は成り行きで共に過ごすことに…。

作品講評

作品としての安定感が非常に高く、作画、ネーム共に安心して読める。しかし、そのソツのなさが災いして記憶には残りづらい作品になってしまっているのも確か。今後は自分の殻を壊せるかどうかが課題。自分の武器を見つけてほしい。

『眩く廻る』

『眩く廻る』

はやむらころも(23)

あらすじ

騎士として死んだ前世の記憶を持ちながら現代に生きる少女・野宮琴子は、前世で守れなかった女王の生まれ変わりと偶然の再会を果たす。しかし面影こそ残すものの、前世とは打って変わって苛烈な性格になった女王に琴子は戸惑い…。

作品講評

前世の記憶を持つことによる苦悩を描く、という切り口は良かった。そのことを読者に共感してもらう為の描写が不足気味だったので、丁寧に拾ってもらえれば更に良かった。作画に関して、目に強い力を感じ、良い顔の絵を描いている一方で、他の顔パーツが不安定なところもありバランスが気になってしまう。自分の良いところ・描けているところを伸ばしつつ、次作では興味が薄いところも頑張ってもらいたい。

最終選考作品

『ヒーローの条件』(完成原稿部門)

アキナ

『こちら買い取らせていただきます』(完成原稿部門)

笹林

『パンドーラーの陰謀』(完成原稿部門)

秋月俊貴(16)

総評

入選1作品・佳作2作品、奨励賞以下4作品選出。
伸び代が豊かで、先が楽しみな投稿者の多い今回。

入選の『煙は異なもの』。著者は前回からさほど間をあけずの投稿にもかかわらず、一定のクオリティが担保された作画とストーリーが評価され、満場一致で受賞となった。設定が評価された前作とのつながりを匂わせる仕掛けも、「この題材で世に打って出よう」という気概が感じられ、非常に好印象だった。惜しむらくは情報詰め込み型の画面にしている分、伝えたい・魅せたい情報にアクセスしにくい構成・構図になっている事。武器である部分が足かせになるのはもったいないので、試行錯誤で乗り越えて欲しい。

佳作の『stardust bloom』。前回投稿と同賞ではあるが、着実に実力を底上げしている印象。後半からの盛り上げ具合は、もう著者の十八番と言っていいだろう。後半までの誘導も、扱う題材やキャラクターによってクリア出来ている。ただ、キャラ性に説得力を付与する設定には少し無理があったように感じた。題材に関してのもう一段階深い理解を求めたいところ。同賞の『あなたの薬』も前作から短期間での投稿。味のあるタッチで描かれる作画と構成の向上もさることながら、より多数の読者を意識した作りになっていた事が評価につながった。とはいえ、ストーリーに関しては特に目新しいものではなく、著者の独自性も感じる事は出来なかった。自身の武器を最大限に生かす事が出来る題材選びを心がけてみよう。

奨励賞以下の作品はどれも「描きたいものはコレ!」というリビドーを感じるものばかりだった。それ自体はとても良い事なので、その初期衝動を忘れる事なく、プラスアルファで商業を意識した作品作りに邁進しよう。

今後も自身の作家性を遺憾なく発揮した作品の投稿をお待ちしております。

3月末〆切の発表は
2019年4月30日!