月例マグコミマンガ大賞・結果発表 2019年3月期

2019年3月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第39回募集、佳作1作品・期待賞3作品・奨励賞2作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…?(3月31日締切分)

完成原稿部門:佳作賞金10万円
受賞作掲載

『シャクハチ!』

『シャクハチ!』

モリ マイコ

あらすじ

中学生の頃、特技の尺八を使って好きな女の子に告白し玉砕した篁颯人は、必死の努力の甲斐あって高校ではモテるようになっていた。だが、ある日、かつて自分を振った女の子にそっくりの後輩・若竹いぶきと出会い、邦楽同好会に入らないかと勧められる。しかも、いぶきは選りに選って颯人のトラウマである尺八を吹こうとしており…?

作品講評

真摯に題材に向き合う姿勢や、丁寧な描線、可愛らしい女の子に好感が持てた。楽しんで読む分には及第点に達しているものの、読み味がアッサリしてしまったのが惜しい。同好会の設立とトラウマの克服をリンクさせるなどしても良かったのでは。もう一歩突き抜けた展開の妙でカタルシスを感じさせる作品を期待したい。

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完成原稿部門:期待賞賞金5万円
受賞作掲載

『なくし物係へようこそ』

『なくし物係へようこそ』

寺田寛子(34)

あらすじ

ここは某駅のなくし物係。人によって様々な落とし物があるようで…。そんな閑職で引き起こるドタバタ人情劇!

作品講評

鉄道員の失せ物係という職業+制服×和ファンタジーと、ネタとして華やいでいた。以前よりもキャラが立ち、飽きさせずテンポよく読めたのも好印象。また物語の作りとしてもそつなく作られているのもよかったが、逆に毒やフックといったものが薄くなってしまったり、サスペンスかと思いきや、結局ミスリードさせたのが残念だった。もう少し、サスペンスの要素を加えた上で、ちゃぶ台を返したほうがよいと感じた。絵も丁寧だが、加えてもう今一歩磨きをかけて寄せていく必要があるだろう。

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『シュールストレスおさかなライフ』

『シュールストレスおさかなライフ』

みやまけい(22)

あらすじ

湊航平はどこにでもいそうな高校2年生――…と思いきや、彼には「ストレス」が「サカナ」(?)のように視えるっぽい? ユル~いテンションで繰り広げられるほっこりコメディ。

作品講評

独特でクセになりそうなユルい世界観が評価され、今回の結果に繋がった。アイデア面でも面白みのある作品だが、ワイド4コマなのに全体が比較的連続していて、中途半端なストーリー漫画となっている点は要検討。もう少し面白いところだけを抽出して4コマに振り切った作りにしても良かったと思う。また作画や演出面は、少々控えめな印象。魅力的なキャラの表情や画面を模索し、読者をさらに惹きつける演出を目指してほしい。ぜひ今後に期待したい。

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『冥官の嘲笑』

『冥官の嘲笑』

樋田よしなり(27)

あらすじ

京都の町が平安京と呼ばれていた時代、そこに小野篁という弾正がいた。篁は昼は官人を裁く仕事をしていたが、夜はなにやら妙な事をしていると噂が立っていた。そんな折に京の町で怪事件が起き、人々はそれを怨霊の仕業だと騒ぐが…。

作品講評

キャラクターの表情と後半の展開に見える勢いが受賞に繋がった。キャラクターは一定の読者層に好かれるデザインだが、もう少し遊びがあればより良かった。作画は全体的に丁寧な一方、画面のディティールの掘り下げは更に欲しい。作風と現在の絵柄を見ると、描き込みを増やすよりはトーンをもっと使用した質感の演出が良さそうに思う(特に空など)。“読み手が期待している画面”を意識して取り組んでもらいたい。

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完成原稿部門:奨励賞賞金3万円

『B→WORLD』

『B→WORLD』

モテキリュウ(30)

あらすじ

音原は受験で筆記用具を貸してくれた好青年、神山と入学式で再会し友達になる。ある日、神山がどう見ても不良に見える男たちに路地裏の地下室へ連れ込まれていくのを目撃する。心配し後を追いかける音原だが…。

作品講評

作者の題材への熱は伝わるが、本題(ブレイクダンス)に入るまでの導入部分が長く、何を描きたいのかが伝わりづらい。また、主人公の家庭崩壊の設定は、不良が家を荒らすこと以外に、活かされていないので、前半半分ほどのページを使う設定ではなかったように思う。読みやすいコマ割りで魅せ方も良いが、ストーリー全体の構成を見つめるために、プロットをしっかりと作ることを課題に置いて、研鑽して欲しい。

『剛田君と秀夫君』

『剛田君と秀夫君』

石原遊(30)

あらすじ

不良集団の番を張る漢・剛田とそのライバル・秀夫には、誰にも打ち明けていない秘密があった。実はこの二人、女児アニメが好きな大きなお友達だったのだ…! 偶然互いの秘密を知ってしまう二人だったが、それが舎弟たちにバレそうになってしまい…!?

作品講評

顔芸やネタ選びが良く、ギャグ・コメディに欲しいくだらなさがあった。ただネタは多すぎて、どれを一番主張したいのかが見えづらくなってしまっている。詰め込んでしまう気質を感じるので、柱となるものを更に意識してもらいたい。ストーリーに対してページ数やセリフも多いので、もっと絵で見せてほしい。

最終選考作品

『やさしい魔王と休憩所』(完成原稿部門)

戸木瀬シュウ(25)

『お願い』(完成原稿部門)

あくびえのき(24)

『傀儡師-カイライシ-』(完成原稿部門)

繋(24)

『危篤岐路』(完成原稿部門)

風間閉(22)

総評

佳作1作品・期待賞3作品、奨励賞2作品選出。
題材・テーマの意識がはっきりとした投稿作品が多く見られた。

佳作の『シャクハチ!』は、マイナーな題材でありながら普遍性の高いストーリーが評価された作品。丁寧なプロットと作画もさることながら、ネーム面でも随所に作家性が垣間見えるテンポの作り方が好印象だった。しかし、「マイナージャンル」の「普遍性が高いストーリー」というのは、言い換えれば題材としての掴みは弱く、展開自体も先が読みやすいものとも言える。次へのステップアップのためにも、読者の想像を超えるものを追求してほしい。

期待賞の『なくし物係へようこそ』は前回投稿と同様の企画力に加え、読者への間口がより広い作風になったことで読みやすくなった。惜しむらくは所々分かりづらいシーンがあったので、読者へ伝えることを念頭においてほしい。
同賞の『シュールストレスおさかなライフ』は独特な世界観を小気味よく描けており、今回の投稿作品の中でも異彩を放っていた。そのユルさとシュールさが作風でもあるが、ともするとダレているようにも感じられてしまうので、メリハリを意識した作品作りを。
『冥官の嘲笑』は前回投稿から作画・ネーム面共にレベルアップが著しく見られた作品。演出力の弱さや質感などのディティールに粗さは見えるが、強みを自覚してより一層の研鑽を積んでほしい。

奨励賞以下の作品は突き抜けたものを感じる一方で、それをコントロールする術をまだ知らない印象。基礎力を身につけて、自身が描きたいものを読者へしっかり届けられるよう作品作りをしていってほしい。

今後も自分にしか描けない作品をお待ちしております。

4月末〆切の発表は
2019年5月30日!