『きつねとたぬきといいなずけ』の完結となる第3巻が遂に6月8日に発売!
西東京を舞台に人間と動物の奇妙な交流を描いた本作は、個人連載から根強いファンに支えられ、マッグガーデン連載時には第25回文化庁メディア芸術祭新人賞受賞や、雑誌などの各種メディアでも話題になりました。本特集ではトキワセイイチ先生に本作を紐解くロングインタビューを行いました。名場面の数々と一緒にお楽しみください!
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『人間の世界』と『動物の世界』異なる二つの世界が並行して展開される物語
――それぞれの世界を描かれる際に気をつけていたことはありますか。
トキワ先生:異なる世界の日常を交互に描くことで、田中とナツネたちが合流したときの非日常にリアリティが生まれると思っています。
作画としては、人間の世界の背景はパースをきっちり取って硬い線で、動物の世界の背景はフリーハンドで柔らかい線で、という具合に描きわけていました。
『動物の世界』のこと
――3巻では動物たちの抱えていた秘密と役割が遂に明らかになりました。
トキワ先生:村に住む動物たちには明確な役割があります。友達や親に始まり、作る者、教える者と役割は様々ですが、それらは全てナツネを中心に形成されています。そんな中で、作品中にその役割を放棄した動物たちが描かれています。彼らは何らかの理由で村の秘密を知った動物たちです。秘密を抱えつつ、役割から離れて行動し、単独、もしくはチームを作っていたかもしれません。
――ナツネにも”いいなずけ”という大きな役割がありましたね。
トキワ先生:楽しいことや悲しいこと、様々なことを経験しながら生きていくのは我々と同じですがナツネたちには大きな制限がありました。その制限を開放したのは田中でしたが、これはいくつもの偶然と勘違いが重なった結果です。
人生においても、偶然と勘違いは運命が大きく変わる要因だと考えています。
――呪われた運命を抱えたナツネにとって、タヌロヲは大きな支えに感じました。
トキワ先生:タヌロヲは人ではなく器であり目でした。そして、ナツネがナツネでいられるようにそばで守護する存在です。ですので、ナツネからタヌロヲを引き離すこと自体あってはならないこと。そんなことをすれば罰が下ります。
――”いいなずけ”という役割を与えた、おばあの存在をどのように捉えていますか。
トキワ先生:可哀想な子。ですが、この世に実際にいることを我々は知っています。
コミックス3巻収録の描き下ろし短篇はそんな子が主人公です。
話は変わって、おばあは許嫁に特殊な力を持った人間を選びます。いわゆる「霊能力」と呼ばれる力を持った人間で、不思議なものが視えたり、力の影響を受けて気分が悪くなったり、そういった感受性が強い人間を選んでいます。同じような能力を持つおばあは、そういった力の影響を受けやすく操りやすい人間を許嫁に選んでいます。
――ナツネがおばあに教えた「ちくわ」を選んだ理由を知りたいです。
トキワ先生:まず、名前の響きといい形といい、おもちゃみたいで面白い要素をたくさん感じました。これで二匹は遊ぶだろうなと単純に思ったのがきっかけです。
また、個人的には好物ではなかったんですが、パートナーが大のちくわ好きで、その影響もあります。
トキワ先生:個人的なエピソードとしては、子供の頃、祖父母のもとへ里帰りするときにフェリーを利用していたのですが、その際、雑魚寝できる広い共同船室で父親がビールのつまみで必ず買っていたのが「ちくわ」でした。細い竹が穴に刺さったままのちくわで、両端に飛び出した竹の先端をつまんで回しながら齧ったものです。子供だったので「そんなに美味しくないけどな…」と思いながらフェリ-での退屈しのぎにぞんざいに食べてました。好きじゃなかったのは、このときのちくわ体験が原因だと思います。
個人誌版では、ナツネの村でちくわにまつわる事件があったのですが、商業版では描けなくて残念でした。
『人間の世界』のこと
――主人公・田中についてお聞かせください。
トキワ先生:田中は挫折して傷を負い逃げ出しはしたものの、新しく生まれ変わろうと進路を変えて一歩踏み出した人間です。ですが、いまだその傷は深く、癒やされるには日がまだ浅い。そこにナツネたちがつけいる隙が生まれました。普通であれば気味悪がって何らかの対処をして相手にしないことも可能だったわけですが、田中はそうしなかった。田中は、孤独で特殊能力もない普通の人間で、無意識にどこかで、誰かに救いを求めていたのかもしれません。。
ちなみに、終盤で誰も動けない場面で田中だけ動けたのは、田中がなんの力も持たない(影響を受けない)普通の人間だったからです。ナツネと関わることで思いもよらない目に遭遇し、自分のあり方も大きく変わりました。その経験は田中がこれから生きていくための大きな礎にもなるでしょう。
――田中の周囲の人々にも沢山の変化が訪れましたが、その後が気になります。
トキワ先生:一本松は独立の際、田中を仲間として自分の会社に誘えなかったことを後悔しています。森見は結婚し子供が生まれ、子が成人するタイミングで離婚します。水川は女子大生と付き合って別れた後、ストーキングされて病み、都会を離れて伝統工芸の道に進みます。美竹は田中と結婚します。社長は田舎暮らしを始めるために会社を根津に譲りました。根津はその後、会社を売却し、社長のもとへ向かいました。
ちなみに集合絵は田中が高尾山近くの古民家に引っ越した際、久しぶりに集まったみんなで写真を撮った、と言う設定で描きました。
――25話で登場した大人版ナツネには驚かされました。
トキワ先生:マミの能力であり、イタズラです。田中に見合った大人の姿であったのもそれ故です。また、田中はナツネに対して恋愛感情を持つことはありません。
――本作で登場した食べ物がとても美味しそうでした!作中の小物はどのように選ばれているのでしょうか。
トキワ先生:そのストーリーの状況に応じて似合う食べ物を選んでいます。食べるものは美味しそうに描きたいと思っていて力を入れて描いてます。あと付け加えるなら、美味しそうな食べ物があるだけで話全体のリアリティーが増す気がしています。
――『田無タワー』をはじめとした西東京の名所が沢山登場しますが、トキワ先生のお気にいりの場所はありますか?
トキワ先生:西東京市周辺も含めていうと小金井公園でしょうか。頻繁に訪れます。気分転換に最適です。広いだけでなく起伏もあって、歩きでも自転車でも楽しめます。平日、人の少ない広大な芝生の上にアウトドア用の椅子と机を置いて、ライフで買ったお得用寿司をつまみながらビールをグビグビやるのは安く済ませられる最高の贅沢でした。
KTIよもやま話
――トキワ先生のお気に入りのキャラクターは?
トキワ先生:人間では一本松でしょうか。自分に無いものをたくさん持ってるし、キャラが強いので勝手に動いてくれる感じがあります。動物ではナツネです。何させても笑ってしまう。自分で描いといて。
――作品誕生のきっかけや制作中の裏話があれば教えてください。
トキワ先生:友人が「◯◯さんが今度漫画デビューするんだけど、そのタイトルはなんでしょう?」ってクイズを出してそれに対する私の答えが「きつねとたぬきといいなずけ」でした。当然間違ってましたが妙に心に引っかかり…。
当時は、その後、自分でそのタイトルの漫画を描き始めるとは夢にも思ってませんでした。作画に関しては、全て自分一人で描くつもりでしたが、一度だけどうにもならず先輩に助けてもらいました。
――独特の作風である7コマと通常のコマ割りはどのように生み出されたのですか。
トキワ先生:7コマの利点はコマ割りをしなくていいこと。当初(個人連載時)は時間も限られた中で毎日描くためにいかに負担なく描いていけるかを模索する中でこの形式に辿りつきました。当初は7コマのみで描くことをルールにしていましたが、「ここは大きく見せたい」「メリハリをつけたい」など、さまざまな理由から個人連載版まとめの二冊目から「7コマ+ストーリー形式」の形としました。こういう異なる読み方が混在した漫画ってほとんど無いと思います。ですので、商業化に踏み切り、なおかつ、このヘンテコな形式で描かせてくれた編集部に深く感謝しています。
――本作の特徴の一つであるコミックスに毎巻収録される冒頭1Pについて教えてください。
トキワ先生:満月が浮かぶ静かな山を背景に「あなたがこれを読むちょっとだけ前のお話」というプロローグがあります。これは、このファンタジー要素のある漫画の世界に入りやすい効果を狙ってのものです。その後、ナツネとタヌロヲが夜道を駆けて森を抜け、遠くに見える街の灯を眺めながら「最初からこうしていればよかった」とつぶやく。
トキワ先生:新しいことを始めるとき、悩んだり障害があったりで踏み出すことに臆病にもなりますが、始めてしまえば事態は否応なく進んでいきます。「さっさとこうしておけばよかった」。そんな風に思った経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。短い冒頭ですが、このマンガで伝えたかったことの重要な要素を込めているつもりです。
おわりに寄せて
――最後に読者さんにメッセージをお願いします!
トキワ先生:この漫画を描き始めた理由はいくつかあるのですが、その中の一つに「自分の身近な人にどんな漫画を描いていたのか残しておこう」という理由がありました。
間違ってることも正しいことも、いろんなことをわちゃわちゃと詰め込んだつもりです。たまにふと、漫画のワンシーンやセリフを思い出してパラパラと読み返してもらえたら嬉しいです。ご感想やご声援、SNSでの反応も嬉しく、本当に励みになりました。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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