担当編集に訊く、コミックガーデン作品のウラガワ!MAGCOMI出張編 第3回

 

 

2023年1月号の月刊コミックガーデンで特集した「担当編集に訊く、月刊コミックガーデン作品のウラガワ!」好評につきボリュームアップして、マグコミに出張掲載!
計6回にわたってお届けします!マグコミ連載作品のウラガワ、ぜひご堪能下さい!
第2回の記事はコチラ

第3回目のインタビュー作品は

『王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います』(著:漫画:南乃映月/原作:狭山ひびき/キャラクター原案:硝音あや)
『琥珀の夢で酔いましょう』(原作:村野真朱/作画:依田温/監修:杉村啓(『白熱ビール教室』著者))
『魔法使いの嫁』(著:ヤマザキコレ)
『魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青』(漫画:ツクモイスオ/原作:三田誠/監修:ヤマザキコレ)
『元、落ちこぼれ公爵令嬢です。THE COMIC』(原作:一分咲/漫画:白鳥うしお)
です!

 

『王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います』

Q1.おすすめのコミックスのイラストは何巻ですか?

担当:第1巻です! 少し話がそれますが、この作品は先行して分冊版(1話単位で電子配信する形式)が配信されていまして、表紙はコミックスのものと違って第1話の扉絵を使用しています。
コミックス制作時に「分冊版と混同されない、見分けがつくパッケージにしよう」となったのですが、分冊版表紙があまりにもしっくり来ていたのでどう変化をつけるか……というのが課題でした。
結果として分冊版表紙が持っている良さも内包しつつ、それを昇華させたイラストを南乃先生が仕上げてくださったので、「これは間違いないな」と確信を持ちながらコミックス制作を進めることが出来ました。作家さんの持つパワーをあらためて実感しましたね。

 

Q2.印象に残っているキャッチやセリフ、作品の裏話を教えてください。

担当:この作品は原作の狭山先生の懐の深さもあり、かなり自由に作らせていただいています(狭山先生、本当に本当にありがとうございます!)。特に主人公・オリヴィアに仕えるメイドのテイラーのセリフや振る舞いなどは、南乃先生の言語センスや演出意図がふんだんに盛り込まれていて、ストーリーの流れにあまり影響しない部分ではありますが物語に緩急をつけるのにかなり貢献しているのを感じます。

恋愛関係のイベントではオリヴィアの独特な恋愛観に対してリアクションを取ってくれたりと、他のキャラには出来ない仕事をしっかりやってくれる安定感がありますね。頼もしい……。

 

『琥珀の夢で酔いましょう』

Q1.おすすめのコミックスのイラストは何巻ですか?

担当:第3巻です! 1話で閑古鳥が鳴いていた「白熊」にお客さんがいっぱい来るなんて…!(涙)。イベントを作る側も参加する側もすごく楽しそうなのが良いですよね。コロナ禍が落ち着いたらこんなリアルイベントが出来たらいいのに!と密かに野望を燃やしています(笑)。
3月14日に出る最新第6巻では七菜たちが地域を巻き込んだスタンプラリーイベントを実施しているので、それが七菜たちにどんな影響をもたらすのか楽しみですね~。

 

Q2.印象に残っているキャッチやセリフ、作品の裏話を教えてください。

担当:第2巻の「仕事の苦味もエールに変える」というキャッチコピーから、クラフトビール的キーワードを用いたスタイルに変えました。

漫画の内容と関わりがあるように、それでいてクラフトビールが持つ奥深い魅力も最大限引き出せるように、毎回七菜のような広告代理店勤めのコピーライターになりきる気持ちで考えています。
クラフトビールが人生を豊かにするイメージが伝わっていると嬉しいです!

 

『魔法使いの嫁』

Q1.おすすめのコミックスのイラストは何巻ですか?

担当:常に刺激を受けて変化するタイプの作家さんなので、最新のイラストが常に最良です。ただ、個人的な思い入れでいえば、第2巻でしょうか。
ヤマザキさん本人が「やりたい事を世間に初めて求められた」「認められた」という高揚感や、それをどう出していくかをワクワクしながら描いていたのだろう事が絵に強く見えます。非常に美しい絵だなと感じています。

 

Q2.印象に残っているキャッチやセリフ、作品の裏話を教えてください。

担当:度々いろいろな場所で語っている事なのですが、1話4pは元々他の1話原稿一式が完成した時には存在していませんでした。
今思えばあり得ないのですが、見開きが維持できない状態になっていたんです。なんとか埋めないと! とヤマザキさんが瞬発的に考えてくれたのが、あの「厚いベールの裏 無粋なセメントの壁の向こう 雨に霞む木々の奥 その世界は私たちのすぐそばに息づいている」 というページでした。後になって思えば、このページはヤマザキさんの最も強みである言葉の力やリズムの美しさ、そして画力を見事に提示出来ていて、まるで初めからこうであったようだなと感じます。
実際は、編集者として恥そのものなので、忘れない為に毎回皆さんに語るようにしています。

 

『魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青』

Q1.おすすめのコミックスのイラストは何巻ですか?

担当:第1巻でしょうか。人と人為らざる者というテーマで、今度は少年をメインに据えていることはそこまで表現上難しくなかったのですが、舞台をどう伝えるのかについてはツクモさんもご苦労されたと思います。定番でいけばパリなのでエッフェル塔だと思いますが、連載開始時のティザービジュアルとして世に出してしまっていて。どうしたものかと悩んだことを覚えています。
最終的にはツクモさんに、リュクサンブール公園上空にパトルイユ・ド・フランスがフランス国旗を描く形に納めていただけて大変助かりました。良い表紙だと思います。

 

Q2.印象に残っているキャッチやセリフ、作品の裏話を教えてください。

担当:裏話ですが詩篇シリーズを始めたのは、ふたつ理由がありました。
ひとつは『魔法使いの嫁』の世界が、作中のイギリスだけではないという事をヤマザキさんから聞き、そのワクワクを皆さんにも受け取って頂きたかったから。もうひとつは、同じ世界観に違うクリエイターというプリズムが入る事で新たな煌きが生まれ、それがこの世界観をより靭やかに美しくすると考えたからです。

違う価値観で同じ世界を描く事で、現実同様ここにも“正しさ”が複数あるという事が描かれ、それが『魔法使いの嫁』の世界をより奥深くしてくれるはずと思いました。ただ、違う価値観であれば良いと考えた訳ではありません。根幹を理解しリスペクトした上で筆を取って頂ける方が大事だとも考えていました。そうした際に、『グイン・サーガ』という大作を受け止めている五代ゆうさんと『Fate』シリーズをより豊かにしている三田誠さんにお願いする事が出来たのは僥倖でした。作画のツクモさんもオイカワさんも素晴らしいビジュアライズを行って貰っていて、ヤマザキさんといつもにっこりしています。

ヤマザキさん自身、違うクリエイターを自らの世界に受け容れる事に前向きで、楽しんで頂けているところも素晴らしいなと思います。この、他者を自分の中に受け止める強さを持っている所が『魔法使いの嫁』の根底を作っているのかもしれません。

また、これは与太話ですが、本編・詩篇2作は単行本の囲み罫がそれぞれの舞台を表す意匠にしています。本編はケルト模様をあしらっているのはお分かりかと思いますが、青はアール・ヌーヴォー、稲妻ジャックはアール・デコであしらわれています。正確にはアール・デコもフランスで提唱されたものなのですが、花開いた場所がNYだった為、このような分け方で遊んでいます。お手元にある方は、ご覧になって確認してみてくださいね。

 

『元、落ちこぼれ公爵令嬢です。THE COMIC』

Q1.おすすめのコミックスのイラストは何巻ですか?

担当:Wクレアな第4巻のカバーイラストです。主人公の公爵令嬢クレアが、婚約者のヴィーク王子や騎士のリュイを襲った悲劇的な未来を変えるために、現在をリセットして過去の世界へ戻るという展開の巻ですが、同一人物を二人並べるというアイデアを白鳥先生から聞いた時は驚きました。二人の並び方や絡ませ方について検討を重ねた結果、カバーのイラストのようにクレアが手を合わせながら、正面を見据えている構図に落ち着きました。
クレアの決意が感じられるカバーイラストに仕上がっていてとても印象的だと思っています!

 

Q2.印象に残っているキャッチやセリフ、作品の裏話を教えてください。

担当:第3巻のオビのキャッチコピー「私の妃となっていただけますか?」が印象深いです。主人公の公爵令嬢クレアが過去の様々な苦難を乗り越えて、新天地パフィート国へ辿り着き、ヴィーク王子と愛を育んで、人生最大の告白を受けるという一大イベント話を収録した巻なので、ドストレートでド直球なアオリ文句でしたが悩まず即決しました。
コミックスのオビに入れる文言には、毎回頭を悩ませているのですが、ここまで素直な言葉がコミックス全体を象徴しているという事もなかなか珍しいかもしれません。その後のクレアは再び苦難の連続に巻き込まれてしまった訳ですけども、今後のストーリー展開にもぜひご注目下さい!

 

作品作りのウラガワで活躍する編集者のウラ話はいかがでしたか?

次回は4月10日更新、お楽しみに!


【下記タイトルから 第1話が読めます!】 

『王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います』

『琥珀の夢で酔いましょう』

魔法使いの嫁

魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青

元、落ちこぼれ公爵令嬢です。THE COMIC